2005年 12月8日
コメント・超巨大廃工場「日本加工製紙 高萩工場」怒涛の探索の余韻も冷め止む間も無く、数日経ってからM氏からメールが送られてきた。
「例の煉瓦工場でスチールの撮影がありますから、一緒に行きませんか?」というお誘いだった。
その煉瓦工場は、M氏が運営するmixiの廃墟版「haikyo.jp」のトップページに掲載されている場所そのものである。
これまで見た煉瓦建造物の中でも飛びぬけて熟成度が程よく、保存状態が素晴らしくそしてなんといっても、そして特筆すべきはこの物件は現役であるいう事だった。
何故に現役であるこの工場が廃墟のコンテンツとして取り上げられたのか、その理由だが実際に稼動している施設が同じ敷地内にあり、機械警備も設置されている。正門を挟んですぐ隣には工場所有者の自宅がデンと構えていて、警報がなると同時に現場に駆けつけるという体制がとられている。
管理は万全で不審者が入り込むという事は一切出来ない。しかし今回自分が探索し撮影した施設の幾つかの中には紛れも無い廃墟である建物が混在しており、取り壊されること無くそのままに放置されている。
しかし放置されているとは言っても、DQNの驚異に晒されるという心配からは皆無、だから無慈悲な破壊活動に晒されるという事もない。
自分はM氏からこの工場を教えてもらうまでその存在を知らなかった。
なにぶん、現役工場の敷地内にある廃墟なので、一般の廃墟マニアは入り込むことが不可能だからこれまで紹介されるという事は無かったのだろう。煉瓦建築や近代建築マニアがこの工場の写真を自分のサイトにて公開しているのを以前散見したことがあるが、そのどれもが全て敷地外からの撮影に留まっており、その点数も非常に少なく、見ごたえという物に欠ける。塀の外からの撮影ではそれが限界という物だ。
ところがこの工場、実はテレビや雑誌のロケとしてその業界では非常に名が知られているという事が分かったのである。
Cはその代表的な窓口となっており、自分はそのスチール撮影に同行するCのスタッフとして参加させていただくことになったというのが今回の探索のいきさつである。当日の朝7時。某所にてM氏をマイカーでピックアップ。そのまま東名高速にて一路現地へ。途中で休憩を挟みながら現地へと急いだ。
10時頃、工場に到着。
正門に入ってからのその眺めは正に「煉瓦萌え」である。
その素晴らしさは写真では伝えることに限界がある、やはりこういう物は実際に自分の目で見ることで初めてその素晴らしさを体感することが出来るはずだ。
あの赤レンガの建物が木立の中に佇んでいる風景はまさにレトロである。
こんな素晴らしい場所がこんな所にあるなんて、俄かに信じられない気持ちであった。
撮影クルー達は先に到着しており既に準備を始めている。さすがに前回のNKの時のような大掛かりな機材や人数ではない。M氏は前回ここで撮影が行われた際に「当日は東名が集中工事で渋滞するだろうから、早めに上がった方が良いですよ」などと先方スタッフ達に囁いていたらしく、今日の上がりは昼過ぎになるだろうと言われた。
クルマを降りて、まずはスタッフと軽く挨拶を交わす。そして、趣出しまくりの事務棟から出てきた小柄な女性がM氏に声をかけてきた。
この人が現在の工場の管理を任されている人であり、責任者である。要はこの人の裁量次第でここの施設の使用が出来るかそうでなくなるかが決まる訳だ。粗相の無いように気をつけねば。
そして、機材をクルマから下ろして撮影開始。今スライドショーの画像を見直しているが、改めてこの建物の美しさにため息が出る。
北河製品所スライドショー |
スライドショーは如何だっただろうか?後半において、煉瓦の一部に緑色の塗装が残っている箇所があるところに気が付いた方もおられると思うが、あれは太平洋戦争当時、米空軍からの空爆を受けないように、迷彩色の塗装が施されていたその名残なのだそうだ。
戦争の影が残るこの煉瓦工場。冬の陽光を受けて静かに佇んでいるが古い歴史ある建造物には一方でそういった、ぬぐい切れない過去を今に伝えているという事も忘れてはいけない。
そして、重ねてここで念を押しておくが、この工場はれっきとした現役工場である。
これまでの閉鎖された工場とは全く違うものだという事を頭に置いて頂きたい。うかつに侵入しようとすれば即刻通報され、社会的地位を失い結果にもなるという事を肝に銘じてもらいたい。
もし「どうしても見たい撮影したい」という方がおられるのであれば、こいった手段で堂々と施設の中を歩き回ることが出来るという可能性があるという事を知っておいて貰えればと思う。
但し、こういう業界に限らず何にでも言えることだが、相手に情報の提供を求めたりする場合は自分の持っている取っておきの情報を相手に提供するのが常識である。クレクレ君が通用しないのは廃墟界でも同じ事だ。あくまでもM氏の信用を得られるまではそれなりの時間と労力が少なからず必要になるという事だ。ただし、こういった力を持っている人と関係を持つようになれば、廃墟探索の可能性は格段に広がるという結果が、NKしかりここの煉瓦工場しかりなのだ。