「kenさん合羽いいの?」
さっき着てみたんですけど暑そうで。
カッパを着ると作業が1秒か2秒遅れる。
その積み重ねは今日の俺の評価になる。
今日組む職員さん(管理職以外でいっちゃん偉い人)が着てないのに俺が着られるわけがない。別に何も言われないだろけど、それじゃあ筋が通らない。
作業開始5分で夏用作業服のズボンびしっしょり。透けてうっすら太もも。
ちとセクシー?
なわけない。
こんな日は雨で濡れるか汗で濡れるか。ですよね。
「その通り」
「でもkenさんこれ多分雨」
戻ったら着替えればいいだけ。
冷蔵庫に入れて来たコーラ、ラッパ飲みしながら。作業服は6着貸与してもらってるから充分。言えばいくらでも貸してもらえそうなんだよねこの職場。仲間同士の連帯がほんと強い。
とは言ったものの、
この間、組んだ職員さんに、
「kenさんいつまで?」
は?
「いつまで居られるんですか?」
え?
実はこれ。
数日前、他の職員さんにも言われた。
(まじか)
え。どうしてですか?
「いや、kenさんが居なくなるって話をちょっと聞いたから・・」
(まじでか)
(え。俺、雇い止め?契約更新不可?戦力外通告?)
退社前に事務所のイッチバン偉い管理職様のとこ。
「なんだそれ?!」
「誰が言ってるの?」
「ないよそんな話、俺聞いてないよ」
「俺はね、上から「kenさんは辞めたいと言わない限り、体が動く限り、働いてもらってくれ」て言われてる」
「二つの部署からそう言われてる」
おおおおお。そ、そうですか。ぁありがとございます。
「誰が言ってんの?」
「全体集めて周知させようか?」
あ、いえ大丈夫です。ここだけの話にしてくださいいやほんとありがとございます骨を埋める覚悟で作業中に死ねたら本望です。
「それ。」
「労災出るかな?」
(そーれを狙ってるんですよー)
これが今の俺の評価で。
それより下は無いほどの嫌なヤツだった俺が、改めて改めてここまで来れた。
何ひとつ残らなかったけど、最低限の暮らしが出来る仕事に就けた満足だ。あれ以来、女の人とは関わってない。
強くなった雨の中、体から湯気を上げながら全開ダッシュ
きっつい。
けど楽しい。
俺まだ走れるじゃん
ちょっと車行ってくる。
半袖で宿を出た途端「あ。俺って馬鹿なんだな」「だってここ標高1500超えてるもんな」3mでUターン。Tシャツで出たら死ぬ。
「さっき8℃だったから今もっと低いんじゃない?」
と宿のおばはん。
翌朝の山頂は濃い霧と雨混じりの強い風、指がかじかむキンキン冷たい。
ここでおれになにをしろと?
こーれは無理ですよ写真撮れません。いやまぁとりあえずやってみますけど。
ディスプレイが白のグラデーションなのは霧が写ってるのか?Canon壊れたか?
あ。これ壊れてら。
この霧雨と前回の台風真っ最中登山(だからさー)で壊れちゃった。
いやまぁもう1台持って来てるけど。
どちらにせよ無理っすね。
びしょ濡れになりながら小川と化した登山道を降りる。ぬかるみに足を取られズルズル滑りながら。
雲の流れがもの凄く早く、一瞬出た晴れ間の陽射しが暑い。
なんだこりゃ?
(また)台風だもんな。
麓に降りて冷え切った体に自販機のあったかい缶コーヒー
自販機が『あたたかい』ってことは、この辺はもう晩秋?初冬か? くたびれてだらしなく座り込んで缶コーヒーを飲み終わる頃、
雲どこ行った?
上手くならないギターと、
復帰した筋トレと翌日の仕事(撮影含む)だけを考える。恋慕以外の考えること。
ふと、
トイレに座ってる時、
早く死なないとな。
明るい未来は無いしな。
ずっとこうでは居られないだろしな。