それ以降、数々のブリーダーたちの手によって、さらに辛いトウガラシが開発されている。ナガ・バイパーは、134万9000SHU、トリニダード・モルガ・スコーピオンは200万9231SHU、現在のチャンピオンはキャロライナ・リーパーで、220万SHUを記録した。
トウガラシを食べたときに感じる熱さは、感覚細胞の表面に存在するTRPV1受容体と呼ばれるたんぱく質の働きによる。TRPV1は、私たちを火傷から守る機能を司っていて、通常は43℃を超えると活性化し、熱すぎることを脳に伝える。しかしながら、カプサイシンはこのTRPV1をだまし、体温でも活性化させる作用を持つ。言い換えると、カプサイシンを食べると、脳は火傷をしているように感じてしまうのである。
No Pain, No Gain
こんな焼夷弾のような食べ物を私たちが欲するのはなぜなのか。
トウガラシを食べると気持ちがよくなるから、とする説もある。その説によると、カプサイシンが口内にある熱と痛みの受容体を活性化し、その後、モルヒネによく似た内因性のエンドルフィンが放出されるため、ストレス解消や高揚感をもたらすと言われている。つまり、ソファに座ってトウガラシを食べているだけで、ランナーズハイのような高揚感が得られるということだ。
ペンシルベニア大学の心理学者、ポール・ロジンは、別の説を唱えている。私たちがトウガラシを求めるのは、「制約されたリスク」の一例だというのだ。つまり、怖い映画を見たい、バンジージャンプをしてみたい、ジェットコースターに乗りたいという欲求と同じ。これらの行為は、実際には何の危険も伴わないにもかかわらず、アドレナリンによるスリルが得られるものである。
いずれにしても、トウガラシへの情熱は、われわれ人類に特有のものらしい。心理学者ポール・ブルームは言う。「タバスコを好んで食べる動物は、人間ぐらいだ」と。
(文:Rebecca Rupp/訳:堀込泰三)
新説“禁を犯したカエサルの決断” に続く・・・
⨂⨁ 参考資料: 辛料貿易=中世から大航海時代= (3/3) ⨂⨁
最初に、アフリカ周航を試みた国はポルトガルであった。15世紀前半以降、ポルトガルはエンリケ航海王子の下、北アフリカの探検を始めた。 1488年、ポルトガルのバルトロメウ・ディアスが初めて喜望峰に到達したことや、インドへの航路開拓による貿易独占の目論みから海洋進出は勢いづいていった。
それから9年後の1497年、マヌエル1世に命じられ、4隻の船団を率いて出航したヴァスコ・ダ・ガマは、喜望峰を一周し、アフリカ東海岸、マリンディ、そしてインド洋を横切ってインド南部のケララ州の都市・カリカット(現在のコーリコード)に到達した。 インドの富を得るため、ヨーロッパ人は調査を行い始めた。 ポルトガル帝国はヨーロッパの国で最も早く香辛料貿易によって海洋帝国を築きあげた。
この間に、スペインやポルトガル王家の依頼を受けた探険家達は新世界を発見していた。 最も早かったクリストファー・コロンブスは、1492年に西回りインド航路を開拓しようとし、現在のバハマにあたる島に到達した。インドでは無かったが、彼はインドに到達したと信じており、先住民に「インディアン」と名付けた。
そのちょうど8年後の1500年、ポルトガルの海洋探検家であるペドロ・アルヴァレス・カブラルは、ヴァスコ・ダ・ガマのインド航路を辿ってインドへ向かおうとしたが、西に流され、現在のブラジルに漂着した。 新天地の領有権を宣言した後、カブラルはインドへの旅を再開し、9月にインドへ到達して、1501年までにポルトガルに帰港した。
この頃、アフリカを周る海路はポルトガルの完全な支配下にあった。だから、もしスペインが貿易でポルトガルに対抗するつもりであるならば、代替航路を見つける必要があった。その最も早い試みがコロンブスによる西回り航路の開拓であったが、そのかわり彼はヨーロッパとアジアの間に未知の大陸を発見することができた。
これらスペインの試みが最終的に成功するのはフェルディナンド・マゼランによってである。 1520年10月21日、彼の探検隊は、現在マゼラン海峡として知られる海域を横断し、アメリカ太平洋沿岸を探検し、1521年3月16日にはフィリピンに到達する。
この地でマゼランは原住民に殺害されるが探検隊はその後もモルッカ諸島を目指し、同年11月8日、テルナテ島に到達する。 これは事実上、最初の西回り香辛料通商航路を確立したということであった。 1522年、生き残った船はスペインに帰還し、その生存者達は世界初の世界一周を成し遂げた人間となった。
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