「実はね…」
レイナは事の顛末を、義妹に話した。
きっと、私の気持ちを理解してくれる…そう期待しながら、話を聞き終わった義妹が口を開くのを待った。
「お兄ちゃんは浮気、絶対にしますよ!」
義妹の口から出てきたのは、衝撃の一言だった。
「え…なんで???」
義妹は、レイナと全く逆のタイプだった。
そのせいか、普段から、彼女の発言や行動は、レイナの常識からかけ離れていることも多く、逆に目から鱗の考え方をすることがあったので、良くも悪くも、強い刺激を受けていた。
「お兄ちゃんみたいに、格好良くて、頭良くて、お金持ってて、スタイル良かったら、周りの女が放っておきませんよ!少なくとも飲み屋の女は寄ってきますねー」
うーん…
レイナは考え込んでしまった。
確かに、夫は、義妹の言う通り、見た目も悪くないし、お金もあるし、喋りも立つし、モテない要素は無い…。
有名大学も出てるし、海外留学経験もあり、英語もペラペラだった。
運動神経も抜群で、昔はスポーツのインストラクターをしていたと聞いたことがある。
レイナも、そんな知的でスポーツマンの彼を好きになり、大恋愛の末、結婚したのだった。
「男は、絶対に浮気します!まして、お兄ちゃんみたいなタイプは、相手を勘違いさせてモノにしちゃうタイプだと思うから、そんな事で、いちいち気にして落ち込んでるだけ無駄ですよー!」
義妹から言われた、その言葉は、今でもずっとレイナの耳に残っている。
「不倫は文化だ!」
まるで、昔、テレビに出ている俳優が、自身の浮気が発覚したときに、開き直って発言した言葉のようだ…と、レイナは思った。
「男は浮気する生き物だ」
「男の浮気は認めてあげて」
「浮気ぐらいで大騒ぎするな」
そう言われているようで、あまり良い気持ちはしなかったし、それを受け入れるだけのキャパシティは、当時のレイナは、持ち合わせていなかった。