万里の長城、近道のために重機で破壊 文化遺産を守るには何が必要か

中国・山西省で、世界遺産に登録されている万里の長城の一部が、建設作業員によって重機で破壊されるという事件が発生しました。警察は、工事現場への近道を作るために壁を壊したとして、男女2人を拘束しました。この事件は、中国の文化遺産保護の現状や課題を浮き彫りにするものです。



<文化遺産保護制度の歴史>

中国で最初の近代的な文化遺産保護制度は、1930年に南京国民政府が制定した古物保存法でした。この法律は、文化遺産の登録制度や国外移転の制限、埋蔵文化遺産の保護などを定めていました。しかし、日中戦争や国共内戦などの混乱期には、多くの文化遺産が破壊や略奪に遭いました。

中華人民共和国成立後は、国家文物局が文化遺産保護行政を所管するようになりました。1961年からは、全国重点文物保護単位という名称で国家級の文化遺産を指定する制度が始まりました。万里の長城もその一つです。1987年にはユネスコの世界遺産に登録されました。



<文化遺産保護の現状と課題>

中国政府は近年、文化遺産保護に力を入れていますが、その効果は限定的です。万里の長城は、その範囲が広大で管理が困難なことや、自然災害や人為的な損傷によって荒廃していることが問題となっています。ナショナルジオグラフィックは、「元からあった古代の建造物の約50%がすでに消失し、残りの30%も崩れている」と伝えています。

今回の事件では、建設作業員が近道を作るために重機で壁を壊したということですが、これは地元住民や観光客による落書きや盗掘などと同じく、文化遺産への無関心や無理解が原因と考えられます。以下は、このニュースに対するネット上のコメントです。

「今に始まった事じゃないんですよね。
昔調べた事あります。万里と言いつつ繋がった壁ではなく、所々無い。
超が付く程古いせいか、地元民は文化財とかの認識無く、家や塀を作るのに万里の長城からブロック抜いたりして破壊が横行。
他にも砂漠化の影響で潰れたり、自然の浸食でも崩れたり。
範囲が広過ぎて管理出来ないのか、する気が無いのか、といった印象です。
今回は重機使って目立ったからでは?と思います。」

このコメントは、万里の長城の破壊が古くから続いていることや、その原因が文化遺産の価値を認めない地元民や環境の変化にあることを指摘しています。しかし、これは文化遺産保護を諦める理由にはなりません。むしろ、文化遺産の歴史や意義を広く教育し、地元民や観光客に文化遺産を大切にする意識を持たせることが必要です。また、文化遺産の管理や修復には専門的な技術や資金が必要ですが、中国政府だけでなく、国際社会や民間団体との協力も重要です。



<文化遺産保護の意義>

私はかつて、万里の長城を訪れたことがあります。その時に感じたのは、万里の長城がただ古い壁ではなく、中国の歴史や文化を象徴する建造物であるということでした。万里の長城は、紀元前から17世紀までに建設されたもので、中国の農耕文明と遊牧民族との衝突や交流を物語っています。また、万里の長城は、中国の政治的・軍事的・技術的・芸術的な偉業を示すものでもあります。万里の長城は、中国だけでなく、世界の共通の財産です。

しかし、万里の長城は単一の建造物ではありません。その一部は土壁であり、一部はレンガや石で作られています。その一部は監視塔や城門がありますが、一部は平坦な壁です。その一部は人里に近く観光客で賑わいますが、一部は荒野にひっそりと佇んでいます。その一部は保存状態が良く美しく見えますが、一部は崩れて荒れ果てています。万里の長城は、その多様性と複雑性が魅力でもあります。

だからこそ、万里の長城を守るには、単純な方法では不十分です。万里の長城を守るには、その歴史や文化を理解し、その価値を尊重し、その多様性と複雑性を認めることが必要です。万里の長城を守るには、法律や制度だけでなく、教育や啓発も必要です。万里の長城を守るには、国内だけでなく国際的な協力も必要です。
<まとめ>

今回の事件は、万里の長城に対する無関心や無理解がもたらす悲劇です。しかし、これを機に、万里の長城を守るために何が必要かを考え直すきっかけにもなります。私たちは、万里の長城だけでなく、世界中の文化遺産を大切にしなければなりません。それは私たち自身の歴史や文化を大切にすることでもあります。