幼稚園頃から中学まである楽器を習っていた。

別にわたし自身がやりたいと言ったわけでもなく、親戚に勧められて始めたんだと思う。


先生の自宅でレッスンがあり、毎週1回、トコトコ歩いて通っていた。

先生は当時30代後半?かな。独身。化粧っ気もなく、常に短髪。服装も地味。

お化粧とかオシャレに憧れていた私にとって「なんでこんなに地味なの?大人なんだから沢山オシャレ出来るのに」と不思議に映った。


冗談もほとんど言わず、雑談もなし。

全く社交的な感じもない。

先生の両親もその楽器の先生だったのでファミリーで自宅レッスンをしていた。

ご両親は明るく社交的なタイプだったので、「わたしもお母さん先生が良かったなぁ」とか思っていた。

特に怒ることはないから怖くもないけど、今思えばものすごく苦手なタイプだったんだと思う。

子供心にも、「この先生はお外に出て人と会ったりするのかな」とか思っていた。


その後わたしも社会人となり、久しぶりに教室のあったお家の前を通りがかると教室の看板が外されていた。

ご両親も高齢だったし、先生もおひとりで暮らす日がくるよなぁ。と思った。

そしてその後、また何年かしてだと思うけど、最寄りの駅で先生とすれ違った。

髪の毛は短髪以上に短髪。もちろん化粧っ気もない。アースカラーの服装。そしてなんだか虚ろな目。

一瞬、男性かと思うくらいに短髪だった。

でも間違いないと思った。

声をかけることはできなかった。

なんだかショックだし、悲しい気持ちになった。

服装が、とか、短髪が、とか、ノーメイクが、とかそんなことじゃなく、その表情が辛かった。

きっとあの自宅でおひとりで暮らしていたんだと思うけど。きっと孤独なんだろうな。と感じるくらいだった。辛かった。


それからまた長い時が経っている。

いまはどうされているのかな。

猫たちと静かに穏やかに過ごされていることを願う。