本日ご紹介するのは長編ファンタジーだ。
- メメント・モーリ/理論社
- ¥1,944
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文/おのりえん
絵/平出衛
このままこの家にいたら、「おしいれのがいこつ」になってしまう――
自分に失望し、家を出たいと望んでいる主人公「ほほ」。
風の鬼ヨロイと出会い、鬼の国へ導かれていく。
鬼の国では長きにわたり、同じ一日を繰り返していた――
心理描写の優れた、心が晴れ渡るファンタジーだ。
おすすめ度★★★★★
―――――以下感想(感想にはネタバレを含む)―――――
子どものころこの本を読み、ずっと心に引っかかっていた。
その時も、とても良い本だと思ったのだ。
しかし、あの時は最後まで読めなかった。フロー・ヒールが痛めつけられる場面に感情移入しすぎてしまった。ほほも、フロー・ヒールも、自分とそっくりだと思った。
著者は大学院で心理学を勉強していたらしい。
それが関係しているのかはわからないが、この物語は大変心理描写に優れていると感じる。
誰もが持っている「引け目」を、ここまで露わに、目立たせ、克服させている物語はそうないのではないだろうか。
主題はそれだけではない。
さまざまな人物の心理が織り交ざり、解決の糸口を見つけてゆく。
そして、織り交ざった人物たちの心理の向かうところが、最後の詩でひとつになっている。
見えるものだけが、すべてではなく、
見えるものだけが、真実ではない。
いいものがすべて、いいわけでなく、
悪いものがすべて、悪いわけではない。
強いものが、弱いときがあり、
弱いものが、強い時がある。
生まれた場所が、永遠の場所ではない。
生まれついたものが、永遠のものではない。
変わらないものも、変えられないものもない。
得るものもあれば、失うものもある。
ただ、誰の上にも等しく訪れる死のとき、
先に行く者に、恥ずかしくないように、
生き残った私は、前に進もう。
メメント・モーリ、
死を想え。
メメント・モーリ、
死に立ち向かえ。
メメント・モーリ、
死を想えば、生が見え、
生を想えば、死が見える。
メメント・モーリ、
死を想えば、
誰のせいでも、誰のものでもない、
自分の生がそこにある。
メメント・モーリ、
振り返ることより、今を生き残ろう。
また出会うときのために。
この詩が、余韻を強固なものにしていると感じる。
著者は長編はこの一冊のみ。あとは絵本をかいている。
また長編を書いてほしいものだと思う。