3/2(木) 
「曇り→晴れ」

フエの朝は曇り空が続く。朝9時頃起き出して、さて今日は何しようという感じでとりあえず洗濯を済ませようと思い、温水のありがたみを感じながらする。腹が減ってきたので外に出ることにし10時半頃出る。

まずは昨日のブンブォーフエ(フエ風PHO)の店に入る。おばちゃんとねえちゃんはちゃんと覚えていて案内してくれた。ブンボーフエとフランスパンで4,500ドン。

次に市場を通り抜けて橋を渡って王宮の方へ。王宮に近づくと早速おじさんがこっちこっちと呼び止める。ここにチャリを止めたらタダだと言う。その代わり、チケットをあとでくれと言うではないか、入場チケットを今度は別の人に売るんだろうと思われる。よくわからないこのシステム。とにかくそこに置かせてもらって5$でチケットを買って中に入る。

(写真: 王宮に入ったところ。奥に太和殿が見える)

王宮内は結構広い、まず大きな門があってそれを抜けると太和殿が見える。ゆっくりそこに近づいて建物の中へ。中は中国の故宮を思い出させる。ほーとは思うけどそれ程すごいとも思わない。太和殿を抜けて裏側に出るともう何もない。後ろはだだっ広いけど野原と遺跡のような草が生え放題の建物の跡がある。そっちの方が何だか心が和んでそこをふらふらと歩き回る。チョウがヒラヒラと戯れ、朝露に蜘蛛の巣が浮かび上がり、ボロボロの建物の跡には雑草がそこかしこに顔を出している。そこに腰掛けてぼーっと景色を眺めていた。

(写真: 太和殿の裏、奥に広大な敷地跡がある)

曇り空もいつの間にか 晴れてきて私はすっかりうれしくなってしまいました。フエはいいところだ。いいよ、いいよ、と何度も口ずさんでしまいました。静かで何も無い。見るべき物は別に無いけど、この中に在る静けさ、この外の世界とのギャップが私には嬉しかった。意味も無くあちこちを歩き回り、上に登ったり、座って景色を眺めたりした。それから顕臨閣という歴代の王様を祀ったところに入った。 寂れ方が何とも言えない。2〜3時間はゆっくりして、あとは王宮門の上に登ってフラッグタワーを眺めたりして、下に降りた。

(写真: 王宮門からフラッグタワーを望む)

外に出るとすぐに絵葉書を買ってくれと女の子にせがまれ8,000ドンと結構安めだったので買ってしまう。1~2$する絵葉書のはずが、8,000でも儲けがあるんや。戻ってくるとチャリンコのおっちゃんが、ここだよここ、と言わんばかりに手招きの合図して、まあ座ってコーラでも飲んでくれと頼みもしないのに勝手にコーラのフタを開ける。値段を聞いてもまあいいから、という感じだ。そしてチケットをオレから取り上げて、これで仕事は完了したという感じで上機嫌になっている。ティエンムー寺はタダだから行ってみたらいいと教えてくれた。まあ特に行くとこも無いし、行ってみるかと思って話を聞いていたら、さっきの絵ハガキの女の子がやってきて、私のお父さんですと言う。きみらはグルか?! 
それから今度は英語が喋れる兄ちゃんが登場し親しげに話しかけてくる。ちょっと話したあと今晩一緒にお茶でも飲みながら話をしましょうということになった。別に暇だからいいかと安請け合いし、泊まっているホテルを教えようとしたけどあれ?そういえば名前も知らなかったんだと気付き、分からないと答える。地図まで書いてあげたのだが彼も知らない様子で、このホテルだろう?と言ったホテルは私の知ってるホテルではなかった。まあいいかと7:00にホテルのレセプションで、と約束してあっさり別れてしまったが、あとから思い直してみて彼はどういう意図があってこう仕掛けてきたのか考えた。疑いたくは無いがもしかしたら結構ヤバイかもしれない。ホテルも教えてしまったし、それでちょっと後悔していた。まあ、どうにかなるかと思い返し、ティエンムーに向かう。

これが3kmと言う割りにはかなり遠かった。まだか?もういつの間にか過ぎたんちゃうか?とか考えながら、途中川沿いを走っていると、とてもいい景色のところがあった。とうもろこし畑と椰子の木とフォン川と船。これが一体となってすごく絵になっている。ああ、これこそベトナム! と言わんばかりの景色に目がうるうるしてしまった。

(写真: フォン川沿いの眺め)

そしてやっとティエンムーに到着。チャリは適当にそこらに停めて 急な階段を登ると、正面に建つ八角の塔はなかなか綺麗だった。

(写真: ティエンムー寺。八角堂が見える)

そこから振り返って見えるフォン川沿いの景色は思わず「おー」と言ってしまう程だった。その八角堂の後ろには社があって、黄金のニターっと笑った坊主頭のおっちゃんの像が座っていた。その後ろ側は普通の民家か何かで中に入れず、その奥にまた少し小さめの八角の塔があった。ここで終わりなんだけど、そこに塀があって向こう側がひらけてみえるので何か眺めが良さそうだと近寄ってみるとそれが何と墓場ではないか。そこから見える一面のセメタリーは何と言うか、その土地と自然の中にうまく溶け込んでいて何とも言えない良さがあった。そこでまた座ってぼーっとしてると何人もの西洋人が私と同じように何があるんだろう?と近づいてきた。墓を見て ふーんという感じで引き上げている様子だった。オレも程なく引き上げてチャリに戻る。

(写真: 八角堂の裏、高台の上から墓地を望む)

それから王宮のほうへ戻って、もう3時頃になっていて腹が減りまくりだったのでマーケット近くのすごく人で賑わっている店に入った。ロンリープラネットに載っていると宣伝しているこの店は客が西洋人半分、ベトナム人半分という感じだった。入るとすぐに日本人が1人いることに気付き、挨拶してそこに同席する。同じように卒業旅行で来ているとのこと、名前は聞かなかったけど、旅慣れた人だった。物乞いに対するきつい態度にはどうだろう?と思ってしまったけど、しっかりした人だと思う。そこで、ここの名物っぽいパンケーキというのかクレープというのか、さくさくの玉子焼きにブタ肉ともやしが入っていて、それにレタスとミントと何かきゅうりみたいなのを乗せて、そこにピーナッツ風のタレをかけて食べるのを頼んだ(注:バインセオという)。これはうまかった。そこでしばらく彼と話をした。

その後彼とは別れて、彼は王宮へ、私はマーケットへ今晩のフルーツを買いに行く。マーケットでは昨日フルーツを買ったところでまた物乞いのおばさんがやってくる。昨日もいたけど、赤ちゃんを抱いてその人は すごく元気なんだ。自分が働けばいいのにと、言いたくなる。また今日も待っている。こういうところは嫌なところだ。フルーツは昨日買った、柿やざくろのようなでも中に白くて甘い果実が入っているの(注:マンゴスチンという)を買った。昨日3つ6,000ドンしたけど今日は別のところで5つ7,500ドン で買えた。やはりボラれている…。

それから橋の近くの昨日と同じパン屋でパンを買う。そしてまた昨日と同様に橋をわたって川沿いを走る。途中揚げたパンの様なものを買う、1,000ドン。そして河川敷のトイレの傍にある、川まで降りて水に触られるようになった階段のところで腰を下ろし、暖かい日差しの中で日記帳を取り出し書くことにした。時間は4時頃、溜まった2日分を書いてしまう。

いい天気で太陽も段々西に傾きかけている。ぼーっとしながら何げなく日記を書いていると1人の少女がやってきて横を通リ過ぎ、階段を降りて下の水場になっているところ、そこで腰を下ろしたかと思うと靴を脱いで、足を水に浸けて涼んでいる。かわいい! カバンの中からノートなのか本なのかを取り出して熱心に読み始めた。その様子を横目でみながら私も自分の日記を書く。約1時間、日記も昨日のところまで書き終わり日も西に沈み出して日の光がオレンジ色に染まり、すごくいい感じになった。

(写真: 昨日と同じ場所、フォン川から夕日を望む)

昨日の夕日よりもずっと綺麗、日輪がはっきり見えて、何とも言えない気分になる。ふと私は立ち上がり水場に向かって階段を降りていき、川を眺めた後、彼女の方へ振り向くと彼女もこちらを見ている。「Hello! What are you doing? 」と言いながら近づいて、彼女の持っている本を覗こうとすると三角座りをしていた彼女はそれを胸の中へ隠そうとする。そのしぐさがまた、かわいい! 彼女は大学生で今勉強しているんだと言う。そこでしばらく拙い英語での会話が始まる。彼女は大学の先輩のYさんとEさんを足して2で割ったような感じで、スマートで素直そうな人だ。そして笑顔がむちゃくちゃかわいい。久しぶりに同じ年ごろの女の人と話をしたというのもあるがこの娘はすごくかわいい。それはいいとして、沈む夕日を眺めながら、自分のことを話したり彼女のことを聞いたりして時間を過ごした。気付けば、もうすっかり暗くなって、彼女は「明日もまたここに日記を書きに来ますか?」と聞いた。writeがよく聴き取れなく fryと聞き間違ったりして彼女が紙に書いたりして、また笑顔がこぼれて、「もちろん明日も来ます。」と言い、暗くなったから帰りましょうということで別れた。別れ際に彼女の名前を聞くと、照れながら「ハンといいます。」と言った。「Good by ハン!」 と言ってチャリに乗って私は颯爽と別れていった。そういえば、年を聞いた時も照れながら 20才だと言っていた。その仕草がむちゃくちゃかわいかった。 明日かー、楽しみだと思いながら、夢うつつのまま帰り道についた。

今は6:30、そう言えば7:00に待ち合わせていたので、 というより、ちょっとヤバいかもと思っていたので、 来なければいいなあと思いつつ帰り道にメシ屋を見付けて、そこで rice noodle with beefというのを頼んだ。こいつが曲者で、noodleというから汁に入って出てくるのかと思ったら逆。タレとつゆみたいなのが付いていて、冷たい...。お椀にまず、野菜、その上にそうめんのようなライスヌードル、その上に牛肉これはカルビだろう。そして、あのナッツ風タレがかかっている。それとは別にすっぱいつゆが付いていて、これをかけて混ぜて食べた。味はまあまあだった。これで3,000ドン。 侘びしい夕食である。その店には、お客がいっぱい入っていて、そこでひとりこんな冷たいのを食べていると本当に侘びしくなってくる。ああ、オレはひとりなんだ...。と急に現実に戻された気分になった。

そして家路に向かう。7時ぴったしに帰り、 来るかとレセプションで待っていたけど来なかった。やはりホテルを勘違いしていると思う。それで、部屋に戻りフルーツを食べて、絵はがきを書く。大学の友人5人に書いてあとは明日にしようと思ってシャワーを浴びて寝た。