2/22(水)
 晴れ

この日の朝からなぜかすっかりお腹の調子が悪くなって一時はアンコールの日の出を見るのを諦めようかとも考えてみた。それでも一生に一度を諦めるか、この痛みに耐えるのかという選択を迫られた時、やはりアンコール・ワットを選んでしまった。調子は最悪のまま朝5時を迎え起床。シノダくんと一緒に出る。5時半に迎えのバイタクの兄ちゃんがやってきた。彼の後ろに乗って寒くて真っ暗い林の中を走る、途中の検門で引っ掛かりそうになったのを振り切って行く(注:観光できる時間外のため本当は入れない)とまだ真暗なアンコール・ワットに着いた。

怖いくらい静かな夜。アンコール・ワットはその輪郭だけをこちらに現し佇んでいた。腹の痛みはその時にはすっかりなくなっていた。一歩一歩近づいて行くと、少しずつ空が白みはじめ、段々アンコール・ワットの全容が分かり始めた。 階段を登り、中を覗き見ると真っ暗、それでも階段を登ったり回廊を進んだりして一番高い真ん中の塔へ、そこでぐるっと回って反対側にやってきた時、太陽が姿を現した。何とも言えない感動的な時間だった。ここだけ時間が止まっているような朝のゆったりとした雰囲気。


(アンコールワット中央の塔から正面入口方向を望む)

(アンコールワットにて)

また正面に戻ってそこでのんびりしていると、日本人が何人かやってきた。朝は日本人バックパッカーが多い、そして実際のアンコール・ワットに重なる日の出を見ようと建物から離れる。ちょうど背を振り返ると太陽が建物越しに姿を現していた。アンコール・ワットを見たいという夢は今日叶った。心の奥の方からぶるっと震えるような感動だった。 


(アンコールワット入口付近)

(アンコールワット正面)

ふっと気が抜けたのか腹が痛い。 そこでトイレはどこかと係の人がいたので聞いてみると、「ない」という、遺跡だから作らないというが、今ちょうど作っているのが1つあるが2〜3km離れないとないと言うのである。ということは、残された道は青空の下でやれということ、寺院の外、道路を挟んだ向こうの雑木林を指差してあっちでやってこいと言う。ここはアンコール・ワット、こんなところで野○○ができるなんて逆にラッキーかもと考え、というより有無を言わさずにするしかなかった。木陰に隠れて座っていると前方の藪の中から何やらごそごそ音がする。うわっ、先客がいたのかと思って焦っていると、なんと牛が出てきた。それもでかい。それがこっちに近づいてくるのでびっくりである。ここでひるんだらヤツの思うつぼ、知らんぷりしていると目の前をゆっくり横切ってどこかへ行ってしまった。これはなんともいえない経験になった。ことを終えて木の幹の側に置いていたカメラとカバンを取るとカメラに何やらモノがついてる、ゲッ、先客の分がそこにあったらしい。オレも自分のモノを落ち葉で隠して帰ったので、また別の人が同じような目に遭うかもしれない...

 戻ってシノダくんとアンコール・ワット入口の外にある屋台で朝食を食べる。(もちろん牛肉は食べなかったけど)そのあとアンコール・トムへ。バイクに乗って昨日登った丘の側を過ぎると、アンコール・トムの入り口(南門)が見えてくる。塔の四面に顔がついた門とそこに架かる橋の両側には多頭ヘビを抱えた男たちの像。すごい迫力である。そこで小さな子供が遊んでいる。一緒に写真を撮る。

(アンコールトム南門)


そこからさらにバイクに乗ってアンコール・トムの本殿(バイヨン)へ。ここはすごい。顔、顔、顔、クメールの微笑というのか、すべてが神秘的でなんとも言えないいい顔をしている。アンコール・ワットは崩れつつあるものの、すごく綺麗に残されている感じだったが、こちらはもっと古いのか、かなり遺跡らしさがある。すっかり気に入ってしまって、座ってぼっーと笑顔の石像達に見入ってしまった。

(アンコールトム本殿近景)

(クメールの微笑と言われる顔像)

(アンコールトム本殿遠景)

外に出て、一旦G.Hに戻ることにした。下痢が本格化してきたのと、シノダくんが帰りの飛行機の予約を変更するというので、3時までは自由に時間を過ごすことに。軽く飯を食べて寝てそのあと近くの川のベンチで子供たちやおじさんの行水風景を見ながら、こんな汚い川でよく水浴びができるなあと思いつつ、友人3人に絵ハガキを書く。バイタクのお兄ちゃんとも話をした。彼の名はVi Sotくん。確か23才か24才だった。このタケオG.H.のおばちゃんとは親戚関係にあたるらしい。 あと、この子供(本当はここではなく、近所の子供だった)と一緒に遊んだり、BANKでお金をexchengeしたり郵便局に絵ハガキを出しに行ったりしているうちに3時に。 シノダくんはチケットのほうからまだ帰ってきてないようなので、先に出発する。

朝の続きからで、さらに崩れた廃墟という感じの所を見てまわった。崩れ方がすごかった。次に水車を見て、次にタケオというゲストハウスと同じ名前の遺跡に登った。これがきつかった。頂上までいくと一人のおじさんが仏像の近くにいた。彼にあいさつして、仏様に手を合わせて、そこは涼しい風が来るのでぼっーと涼んでいた。それからしばらくしてから、降りていくとシノダくんに会った。ちょうどこっちにやってきたところで子供に捕まっていた。こっちの子供達はかわいい。絵はがきも持っているのに勧めてくる。more 1 とか not same とか言って。

次に行ったのは名前は忘れたけど廃墟の中の廃墟という感じのところだった。(注:タ・プロームという遺跡だった。) 入り口から遺跡までかなり歩いて行くと、アンコール・ワットの小さい版みたいな作りになっている。石の門が傾きかけて、それを木のつっかい棒で適当に止めたりなんかしている。その大雑把な感じを見てシノダくんが言った「UNTAC(注:国連カンボジア暫定機構、カンボジアに入ったPKOの名称)がしたことというのはこの程度のことかもしれない。」という一言はなかなか的を得ていて、シブイこと言うなあと思った。中に入ると大木が石壁に溶け込んでいるところがいくつもあり、思わずホーッと言ってしまう。この写真だけでも5枚は撮ってしまう。あとでちょっと後悔。でもボロボロの石たちが木に溶け込んで、それがまたすごいいい雰囲気を醸し出している。中年のおばさん外人旅行者がいなければもっとよくなるんだけど…。(注:あくまで個人的な見解です) あと2人の絵書きが、この廃墟で絵を書いていた。 実に様になっている。こんな所でボーっとできる贅沢を味わいながら、しばらくそこで過ごして戻る。

(タ・プローム遺跡)

次に別の同じような遺跡へ。もうここまでくるとどれも同じに見えてくる。オレは入口を入って少し歩いたところで見ていて、シノダくんは中に入っていった。そこに3人の子供たちが近づいてきて、コーラを買えとか絵ハガキを買えとか言う、そのうち買わないとみて今度はペンをくれとか。ワイヤーキーをくれとか、ボンボン(チューインガム) をくれとか言ってくる。それで関空で買ったBlack Blackガムを思い出して彼らにプレゼントした。かなりきつかったらしく、 オレがシーハーしだすと彼らもまねしてシーハーやっていた。かわいい子供たちで12才、10才、7才だという。一緒に写真も撮って、次に向かいにある湖を見た。彼らは swiming poolと言っていたが、オレ達には泳げそうになかった。

時間は5時、ここがラストだというので、再び、 日の入りを見に行くことに。バイクを飛ばしてアンコールワットを過ぎ、例の丘が見えてくる。またここをのぼるのか。と思いつつものぼる。途中で、ツクイくんという、G.H.も一緒でプノンペンのナショナル・ミュージアムで会った日本人の学生に会い、彼はちょうど降りてきたんだけど、これから夕日がきれいなんだと教えるとまた一緒に登る。まだ日の入りまでに時間があり、ボーっと過ごす。そのうち何人かの日本人が集まり、みんなで太陽が沈むのをじーっと眺めていた。昨日のTさん似のジュース売りの女の子達もまた集まってきて、値切り合戦が始まる。今日はすごく綺麗に日輪が見えた。一回雲に消えたかと思うと切れ目からまた姿を現した。 なんとも言えない。こんな風景はもう見れないかもしれない。広大などこまでも続く草原、湖があって、野原にはカンボジア特有の背の高い上の方だけ緑がある木々、赤い夕日、それがゆっくりゆっくり空をオレンジ色に染めながら沈んでいく。 そしてビールを一缶5人で回し飲みした。幸せの一言では言い尽くせない嬉しさと感動があった。



暗くなる前に山を降りないと足場が悪いので危険だ。さっさと山を降りて、下のところで一枚2$のTシャツを買い、G.Hに戻る。

オカモトさんその他合わせ4人の日本人達と夕食を囲み、途中TVの話になって(注:私はほとんどテレビを見ないので)話題についていけなくなったので、その場を退散。疲れたのと朝が早かったので速攻寝た。 最近毎日朝が早く疲れが溜まってきてるようだ。