2/15(木)
 晴れ 

朝荷支度してチェックアウト。といっても返すカギもないので特にホテルに何も言わずに出て、そのままカオサン通り(注:安宿街がある通りで旅行会社、レストラン、商店など旅で必要な物が手に入る街)を目指す。

バス停の前で地図を開いて見ているとおじさんが颯爽と現れて何番のバスや、と教えてくれて、また颯爽と道を渡って行ってしまった。
もう現地人みたい! だがバスには乗ったはいいが、どこで降りるか分からなくて早く降りすぎて、1時間ほど歩く羽目に。

途中朝食をワット・プラケオの近くで食べる。
カーオ(ごはん)の上にこれとこれという感じで、あぶら身だらけのカツと野菜煮のようなものをかけてもらい、それを食べた。味はまあいける。
人はみんな親切。
そしてカオサンに着いた。

ツーリスト(旅行会社)を見ていて、オレはN.H.くん(注:大学の友人で一月前に東南アジア一人旅をしていた)の教えてくれたミニ・ツアーへ。
(そこのおばちゃんとこのあと仲良くなれたのは良かった) 
そこでカンボジア行きのチケットを3,150バーツで購入。12,600円の国際便の飛行機だから安いんとちゃう? 
2人のツレは トレッキングツアーをそこで申し込み、夕方まで荷を置いてもらう。

オレは隣のゲストハウス(名前はNa G.H.? 忘れた)にチェックイン。1泊120B、安いよ。
そこの女の子が部屋に案内してくれた。かわいい。
とりあえず荷をおいて、ちょうど昼前だけど、観光へ行くことに。
3人揃って行ったのがそもそも間違いのはじまりか?

王宮(ワット・プラケオ)に行く途中、向こうに王宮がチラッと見える辺りでお兄さんが呼びとめてくる。
あそこがなんたらUniversityであっちがワット・プラケオだ!というふうに、ああやさしい人だと思っていたら、自分はこっちに遊びに来てる学生で、26歳だったかな。プーケットに家があるとか言って、メモ帳に住所を書いてくれた。
そしてこれから寺院を回るならやめたほうがいいと言う。今日は休みだ…とか言って、観光は明日にして、今日は特別なイベントがあると言いだした。
君らはタイ・プロモーションを知っているか? ときた。
 もちろん知らない。
それは何かのイベントで1年のうち3日間しかないらしい。今日は、その日だし行ってみたらどうだろうか?と言う。
オレ達もそれなら行ってみようかと思う。

彼がバス停から 1つ目だというので、バス停で彼と別れた。彼は日本に彼女がいて、名前がユミだという。明日、日本に行くという。プーケットに住んでて、今はバンコク、そして明日は日本とはいい身分だなとは思ったね。彼と別れてバスに乗りワンストップでまたバスを降りる。

 そこに座っていた兄ちゃんに声をかけるとその人は(部外者なのか)知らない、と言う。
そこを通りかかった別の気の良さそうな兄ちゃんが「どうしたん?」という感じで現れた。これがあまりにも自然過ぎた。彼に聞くと、知っているし、自分の働く銀行のすぐ近くだという。 
連れていってもらうことになり、日本の話、地震の話、テレビアニメの話など日本びいきの人ですっかり打ち解けてしまう。

彼にタイについて知っているか? と聞かれ、こっちは全然知らないので恥ずかしくなってしまった。
オレらが今いるのがトンブリー地区、ここはバンコクじゃないよ、という話やタイの市の数が78(?)あるということや人口が何人だ、とかいう話になって時計を見るとちょうど12:30、「今はどこも昼休み中だから一緒に日本やタイについて話しながらお茶でもしよう」と言う。
オレ達もいい人に会ったものだと思いすっかり信じこんで、一緒に話が盛り上がった。

小汚ない大衆食堂に入ってヌードルを食べおわった頃、話は Thai Promotion (CHANTABOON)の話になった。
ここまでのところ、それがいったい何の事なのかさっぱり分かっていなかったオレらにとって、紙に書きながらの説明はとても分かりやすかった。
まず「Thai Promotion とはタイの国が自分の国を宣伝する日だ」という。「これは1年に3日間あって、先日からTVでもコマーシャルをやっている。タイ人はみんな知っているよ。」というのである。
「自分らはこのことをどうして知ったのか?」と逆に聞かれてさっきのメモ帳を見せてこの人に聞いたと教えてあげる。
「自分らは本当に運がいい。これを見れるなんて、幸せだ。」というふうに言ってくる。
それでこれは何なのかというと、タイ全国には宝石店が山とある。これらの店は毎日やっている。というのも彼らはビジネスでやっているからである。それと違って、これは政府が儲けを度外視して、タイの宣伝のためにやっている。だから毎日営業する必要はなく年に3日だけでいいのだそうだ。
 さていったい何をしているのか?
 「タイの特産物は何かご存知ですか?シルク、レザー、とがあるが一番はサファイア、それもブルーサファイア、これが1番なんです。ナンバーワン。これを作って全国の宝石店に卸すのが国の機関であるチャンタブーン(CHANTABOON)なんです。」
そこは工場で、その3日間ツーリストは宝石のカッティングとかが見れるという。
「あとからそれが見れるから待っていて下さい。
 ところで、タイ人は “Free Holiday” ができるというのを知っていますか? 
つまり僕は明日からオーストラリアに行く。それもただで行けるんです。
多くのタイ人はこのThai Promotionの時にFree Holidayをするんです。だからこの時期たくさんのタイ人は休みをとって海外に出かけます。
なぜそんなことができるのか? 
I'll tell you why, タイ政府はこの3日間に CHANTABOONから買った宝石にはタイ政府が品質を保証するという保証書を付けてくれる。これは他の宝石店で買ったものには付いていない。
そしてこれを国外に持っていくのに285%のTAXがかかるんだけど、普通ならね。
でもこの保証書があれば、NO TAX。
そして、これを国外で売れば2倍から3倍の値がつく。1,000$分持っていって向こうで3,000$で売れれば、2,000$の儲けですわ。
タイ人はみんなクレジットカードを持っているんです。なぜだかわかりますか? 
初めクレジットカードで宝石を買って国外へ持っていく。その時お金が無くても売れたあとその宝石代を返済に回せば残りのお金で旅行ができるんです。
これが Free Holidayの仕組みです。」
要約するとこんな感じ。

政府は儲けを度外視して、こんなことをするとはなかなかイキなヤツやなあと思いつつ。そんなに宝石なんていくらでもある訳ではない。
「これはセットになっていて1人3つまでが上限なんです。」
ナットク。
「だからリッチな人もプアーな人もみんな Holidayを楽しめる。」
(これは初め学生に与えられたことだと言っていたような?) 
(タイ人全員知っている事?)
(彼は銀行員じゃなかった?) 
今から思えば疑問点はあった訳だけど、ツタない英語と、話の巧みさで、ほーお、そんな日があるのかと思い。いい勉強になったと思った。

ここで人間の欲というものが出てくるねんなあ。タイ人だけというのは羨ましい。オレらもできたらいいのに・・・。
 そう思っていると、彼の友達のオーストラリア人も実は今Free Holiday をやっているんだ、と言う。よくわからん。彼が言うにはその友達は、“メンバー”に入っているんだという。
「詳しい事は僕にもよく分からないけど実際に行って聞いてみたらいい。」と言われ、ちらっと時計を見た彼は1時を過ぎているのにビックリして、「休み時間が終わっている、行かなきゃ!」と爽やかに言いだした。
 それで食堂を出る。
(つづく)