他抜 | 逢えるじゃないか また明日 PartⅡ

逢えるじゃないか また明日 PartⅡ

ボスザウルスの隠れ家から「逢えるじゃないか また明日 PartⅡ」に変更しました。yahoo!ブログの閉鎖に伴い、アメブロに移動し、合体させました。引き続き宜しくお願いします。

ただ今編集中に付きしばらくは不完全ですので宜しく。

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父と親交のあった人間国宝柳家小さん師匠。
剣道生活70余年の父の残した遺品の中には、剣道で使う手拭いが山のようにあった。全国各地で行われる大会のもの、昇段記念や周年記念で配られたものなど、その数は300も400もあった。中には、父自身が書いた書を手拭いにしたものもある。そんな中に、柳家小さんと書かれた帯付のついた手拭いが何枚かある。
 
小さん師匠は剣道七段範士。
「落語と剣道とどっちを取る。と聞かれたら剣道と答えるね」
ある雑誌のインタビューの中で答えている。師匠のところに入門して、落語だけでなく剣道の師として仰ぐお弟子さんたちも多い。
 
剣道には段位の他に「錬士」「教士」「範士」という称号がある。その昔は段位は五段までしかなく、その上にこの称号が有り、最高峰が「範士」だった。
十段位まで存在し、過去に五人の大先生方がなられたが、今では九段位十段位は廃止になり、現在では「八段範士」が剣道界での最高峰である。
剣道八段試験は、司法試験より難しい難関として、NHKで伝えられたことがあるが、まさにその通りで、
 
初段剣道の基本を修習し、技倆良なる者一級受有者満13歳以上
二段剣道の基本を修得し、技倆良好なる者初段受有後1年以上修業
三段剣道の基本を修錬し、技倆優なる者二段受有後2年以上修業
四段剣道の基本と応用を修熟し、技倆優良なる者三段受有後3年以上修業
五段剣道の基本と応用に錬熟し、技倆秀なる者四段受有後4年以上修業
六段剣道の精義に錬達し、技倆優秀なる者五段受有後5年以上修業
七段剣道の精義に熟達し、技倆秀逸なる者六段受有後6年以上修業
八段剣道の奥義に通暁、成熟し、技倆円熟なる者七段受有後10年以上修業46歳以上
 
最短でも33年以上の修行が必要なほか、合格率1%の難関が待っている。
2013年の合格数を見ると、受験者1792人合格者16人で合格率0.9%なのだ。
しかしこれは、受験資格を持って、受験したすべての剣道家達ではなく、受験資格者が増え始めた数十年前からは、各都道府県での受験への予備審査会が行われるようになり、これを通過しなければ、年二回京都と東京で行われる剣道八段の審査会への受験は出来ない。従って実際の受験者の合格率は、さらに低くなるのが現実なのである。昔と変わっていなければ、受験内容は一次試験での立会で、合格者は40人程度になり、二次審査で数人に絞られる。現在は二次審査の合格者はその後の日本剣道形での審査があるようだが、父が受験していた頃は、二次試験合格者は論文の試験があった。
 
称号 付与基準 受審資格 受審条件
錬士剣理に錬達し、識見優良なる者五段受有者五段受有後、10年以上を経過し、かつ年齢60歳以上の者で、加盟団体の選考を経て、特に加盟団体会長より推薦された者。
六段受有者六段受有後1年を経過し、加盟団体の選考を経て、加盟団体会長より推薦された者。
教士剣理に熟達し、識見優秀なる者錬士七段受有者七段受有後2年を経過し、加盟団体の選考を経て、加盟団体会長より推薦された者。
範士剣理に通暁、成熟し、識見卓越、かつ、人格徳操高潔なる者教士八段受有者八段受有後8年以上経過し、加盟団体の選考を経て、加盟団体会長より推薦された者、および全剣連会長が適格と認めた者。
 
 
柳家小さん師匠は、範士になることを夢見ていた。
そのためには八段受験が必須だから、頑張っておられたようだが、私は師匠の受験シーンは見た事はないし、受験されたという話も聞いたことはない。
だが多くの推薦、剣道界への功績から、範士号を授与される事になる。
この時の小さん師匠のお喜びは相当なもので、人間国宝になられた時以上、87年間の生涯の最良の日だったと思うと、記事に書かれているのを読んだ事がある。
 
小さん師匠の書かれる色紙には、必ず他抜き(タヌキ)の画が書かれていて、他抜の文字も見える。タヌキは小さん師匠の風貌からも来ているのだろうが、ある人が他抜に付いて聞いてみた。師匠ニヤリと笑って、
 
「他人を追い抜くくらいの気概を持てということだ」
 
私が思うに、剣道も居合道もたしなんだ師匠の事だから、「抜く」は刀を抜くに通じているのではないかと思う。
居合は時の如く「居ながらに合わせる」で、対面した相手を、その場で斬りつけて倒す技だ。「他抜」の文字を見ると私には、刀を抜かずに相手を倒すと見て取れる。それが師匠の持つ話芸であり、落語なのではないかと思ったりもする。
 
 
昔こんな記事も書いたので、読んでみてください。