ボーカルのレコーディングが終わりました。

私とメストリ 、ブラジル人プロデューサー兼ディレクターは、実に夕方6時からスタートして家に戻ったのが、なんと朝の6時・・・。

でも不思議と疲れたという気がしなかった。やり遂げた充実感で一杯でした。


1曲パンデイロの入ったサンバな曲があるのですが、実はこれが私の鬼門でして(苦笑)メストリのこの曲への入れ込みようがものすごいので、ずーーーーーっと前から発音とか歌い方とか色々と注文が来ていて、実はレコーディングが心配だったのです。

メストリが

「スタジオの外のコンビニに行くけど何か買ってきて欲しいものある?」

というので

「チョコレート♪」

と買い物を頼み、メストリのいない間にレコーディングエンジニアさんに頼んで、この曲を練習することにしました。

何回か練習していたら、すごい勢いでメストリがやってきました。

コントロールルームの中から

「今何やっているの?!」

とトークバック。

「えー、もう帰って来たの?!ちょっと練習してただけだよ!」

というと、メストリがレコーディングエンジニアさんに

「今のレコーディングしてた?」

と確認。エンジニアさんは試し録りのつもりでレコーディングをしてたようだ。

「信じられない、ユキコ、よくやった。今のはものすごい良い。インクレディブル!」

と言われた。

メストリがいなかったので、プレッシャーを感じずに歌えたのが良かったのか。

ブラジル人プロデューサーさんも

「信じられないくらい良いテイク。発音もホントのカリオカみたい」

と、べた褒めだったので、この練習のつもりで歌ったボーカルが、結局OKテイクとなったのでした。


歌詞の発音は、結構直されました。

ポル語のできる方、下記を発音してみてください。

「O Luar」

「Alem」

「Verao」

カタカナで書けるような発音ではないことはきっとおわかりでしょうが、何回歌っても

「だめ、もう一回」

「それじゃアラブ人の女性の名前にしか聞こえない」

「全然ちがう」

とやり直し、やり直し、やり直し・・・・(涙)

レコーディングエンジニアさんは

「Guiって結構怖いね(笑)」

と苦笑い。

でも、完璧に出来たあとは

「これで、もう君のどの歌をブラジル人が聞いても完璧なポルトガル語に聞こえるよ。よくやった。」

と言ってくれた。

メストリが歌う番になってボーカルブースに入ったので

「VeraoとAlem、発音気をつけてね(苦笑)、ヴェラン、アレンって言っちゃだめだよ、わかった?!」

とトークバックで仕返し(?)をしてみた。


それから、ブラジル人に囲まれてのレコーディングというものは初めてだったのですが、日本では絶対OKにならないテイクが、彼らにはOKだったりするのが意外な感じがしました。

例えば、声がちょっとかすれ気味になってしまった部分が、彼らには「Saudade」な感じがして良かったりとか、わざとそういう歌い方を要求されることもある。


あと、ものすごい歌詞の内容を重視するんだな、という印象を持ちました。

とにかく曲の内容を理解して、こういうイメージだというのを持ちながら歌い方を決めたりする。

私が日本語で歌って、メストリがポルトガル語で歌う曲があるのですが、レコーディングの前に、歌詞の内容を2人で同じように理解してイメージを作ってからレコーディングに入った。

ブラジルと東京で遠距離恋愛をしている、ブラジル人と日本人のカップル。

ブラジル人の彼氏のほうは、日本人の彼女の幻を、ブラジルの夜空の中に見ている。

そういうイメージだったので、いまだにこの曲には仮タイトルの「Toquio(東京)」のままになっている。



というわけで、まだ多くの作業が残っているとは言え、レコーディングが終わりました。

ブラジル人たちと一緒にレコーディングしてみて、私はものすごくシンガーとしての自分が一回り成長したような感じがしています。

だから、レコーディングが終わったあと

「お願いだから、もっと私が歌う曲を作ってね♪」

とメストリにお願いしてみた。

「君も知っているとおり、もうすでにたくさん作ってあるじゃない。」

「違うの、ちゃんと私のキーで作って欲しいの。」

と言うと

「もちろんいいよ」

と言ってくれた。

曲を作る人はとりあえず何も考えないで作って、あとで歌わせるシンガーのキーに合わせるから、コードが変わっちゃうでしょう。私はメストリが作った曲は、どれも原曲のままのコードがすごく好きなので、最初から私が歌うことを想定して作って欲しいと思ったのです。

このような生意気な注文も、ちょっと自信がついたから言えたのかもしれません。

ブラジル音楽が作られる現場にいられたことは、私にとって良い経験だったと思いました。