もちろん、まだ私は生まれていない。

75年前の夏。

私が生まれそだったこの田舎まちにも空襲があった。

地元でもあまり生きてるじいちゃんもばあちゃんも

知らないかもしれない。

負傷兵も一緒に乗せていた機関車をB29は集中射撃した。

今は亡き私の祖母も、弟を連れ乗ろうとしていた。

グズグズ言い出して道中もたついていたところ

空襲警報が鳴り、近くに避難して汽車に乗りそびれた。

しばらくしてB29が頭上を爆音で通過し、

その後祖母とその弟がいたはずだった駅は血の海と化していたそうだ。

汽車も集中掃射され、ほぼ乗客は皆殺し。

その汽車にもし、祖母が間に合っていたら、

祖母はもちろん、今の私も、

そして屈託なく笑いはしゃぎまわるこの子たちも

存在していないのだ。

戦争は75年前の昔話ではない。

今、リアルに生きる私たちに直結したこと。