今の時代は物質的にはとても恵まれているのに精神的にはとても病みやすい時代になった印象を受けます。本当に病が増えたのか、今まで不確かだったものにラベル付けが進んで増えた印象を受けるのかわかりませんが、とにかく悩み事を抱え込んで病んでしまったり、何かにおびえてパニックになってしまうことはとても身近になったと感じています。

 まだ本当に幼いうちは「忘れる力」が強いためにそこまで大きくなることはまだまれだと思いますが、小学校も進んでくるとそうも言ってられなくなります。そこで私が直接ではなく、会話を通してスープに隠し味をしのばせるように生徒たちに伝えていることは、視点を変えられる能力を身に着けようということです。

 

 大人でもそうですが、何か一つのことに固執しすぎて自分でどんどん自分を追い込んでしまい悩みを深めてしまう事があります。今目の前にあるふと気になったことが行く手をふさぐほどに大きくなってしまい、全く前へ進めないどころかそれが解決されなければその先すら何も見えなくなってしまう状態です。こうなってしまうと大変です。なかなか他の人の言葉は聞けなくなり、冷静な判断もできなくなってしまいます。しまいには大騒ぎして色々と周りを巻き込んで視界いっぱいに広がってしまった大きな悩み事…は実は目の前にたまたま風で飛んできたティッシュ一枚が張り付いただけだったというオチがついたり。なーんだと笑い話をしているそばから次の悩み事を「見つけ」てしまったり。

 

 さて。

 

 世界の終わりだと思えるほどの悩みに支配されてしまった自分、夜も寝付けずに自分をずっと苦しめている重い心をたった数分、いや一秒で救える「妙薬」は「自分自身の冷静な理性」に他なりません。もっと言えば、目の前の事象を色々な角度から見れる冷静さ、見識、経験の豊かさです。よく生徒たちになんで勉強するの?なんでピアノするの?何に役立つの?と聞かれますが、その答えの一つがこれです。自分を人生で直面する苦難の数々から救うためです。より広い知識。より深い洞察。全く異業種からの視点。 広ければ広いほど、より積み上げた知識と理解が大きければ大きいほど人生で直面する様々な問題は相対的に小さく対処可能な、何より必要以上に大きなものにならずに済むのです。