美術館が閉館してしまうという話を聞いて読み返してみました。あぁ何度も読んだはずなのに、何度も新しい発見をしたはずなのに、今また読み返すと新たな発見、新たな心の動きに驚かずにはいられません。名作、人類の宝とも言われるような作品は、人が様々な人生経験を積むに従って何度でも変化し、深化し、様々な気づきや感動を通してさらに心を豊かに、より成熟したものへと導いてくれます。私は音楽をやりますが、「文化」とよばれるこれらの作品はそれこそ「目には見えない」大事なことを過去から私たちに伝えてきてくれているような気がいたします。

 その時の人生の歩み具合により作品への「感情の理解力」が「変化」する。これはその作品が作られてから200年、300年と経っても人々に愛されるクラシック音楽の楽曲へも共通のものがあります。はじめは理屈もよくわからず、ふわっと「おもしろいなぁ」でいいんです。そこから面白くて色々マナーやルールを知ってくると、理屈として理解が進み、そこからさらに「すごい!」という理解、またはなんとなく日常で接することで「安心」を得ることもあるでしょう。そこからさらに音楽以外の人生経験も積むことにより、全く同じ曲であっても「理屈では片づけられない何か」を感じるようになっていきます。それこそが「肝心な事」、文化という数字で点数をつけられないもの、「芸術」の本質なのかもしれないと思っています。

 

 子供たちと接していることで私は様々なものを頂いています。毎日笑顔で生活できているのは生徒たちのおかげに他ならないです。ですので私からは、学校のテストでも役に立たず、受験にも出てこない、何一つ目に見えて数字の結果が出てこない、けれども「人にとってとても大切なこと」を生徒たちに伝えて、育んでいきたいとそう願っております。