母が乗った救急車を見送って
夕方、18時くらいに主治医から連絡がきた
今のところ、熱もほぼ平熱だと思います
肺炎等の所見もなし
ご家族が心配されている、本人が息苦しいと訴えているというのは
腹水が溜まっているのが原因だと思われます
肝臓の状態も、退院前の検査より悪くなっています
血液検査の結果も、どれもとても悪いです
いつどうなってもおかしくない、非常に悪い状態です
コロナ陽性ということで、コロナ病棟での入院ですので、基本的には面会は不可です
ですが、いざとなった場合はご連絡させていただきますので
お顔を見る程度しか出来ないかと思いますが
来てあげてください
主治医の説明は淡々としていた
もう、コロナが良くなっても退院しておうちで過ごすことは無理なんでしょうか?
あきらめの悪い私の質問
こればかりは、なんとも言えませんが
ご本人の体力が持って
コロナ療養解除まで頑張れたら、もしかしたら、もあるのかもしれませんが
その頃には、ご本人の状態も相当悪くなっていると思われますので
もうどうでもいい、と言われるかもしれないし
ご家族の方でも、家でみるのは無理だと思われるかもしれません
そうですね
本人の希望をいちばんに考えたいと、家族皆の思いなので ……
色々とありがとうございます
よろしくお願いします
電話を切って
兄や、娘達にLINEをした
翌日の夕方頃に、母のスマホを鳴らしてみたが応答はなかった
そして、その翌日の8月4日
私は朝から喉の違和感を感じ始めていた
熱をこまめに測るが、特に変化なし
午後になって、病院から電話がきた
血圧が60に下がってきたという
母が癌末期と言われてから、色々と検索した
血圧60は
最期の時が近づいているサインのひとつだということもそれで知った
ご本人、まだ意識ははっきりされてますので、面会に来られますか?
面会と言っても、お部屋の窓越しにお顔を見てもらう程度にはなりますが
行きます!
今から用意してすぐ行きます!
16時くらいにはそちらに着くと思います
到着しましたら、病院の代表番号にお電話ください
迎えのスタッフが向かいますので
言われた通りに、病院に着いたら電話した
少し待っていると、完全防備の看護師さんがやってきた
「先ほど少し吐いてしまわれたので、すみません処理してますのでもう少し待ってくださいね」
そう言って、看護師さんは病院の外に並んだプレハブ小屋の方へ走って戻って行った
その時初めて気付いた
そのプレハブ小屋が、コロナ病棟だった
10分くらいして、看護師さんが来た
こちらへ〜と、先導されるまま歩いていく
一番奥のプレハブ小屋
看護師さんが中に入っていき、窓をガラッと開けた
ベッドに横たわる母がいた
おかあちゃん
呼びかけたけど、反応はない
「疲れて眠ってるかもですね」
いつの間に来られたのか、私のすぐ後ろに主治医の先生が立っていた
「意識はあるけれど、ほとんどウトウト眠っているような状態ですね」
「お薬の関係もありますし、状態的にはこういう感じの状態が続くと思われます」
「血圧が50、60の状態でも10日、2週間と頑張られた患者さんもいらっしゃるので、今日明日にどうこうとなるかはわかりませんが·····
もし、他のご家族さんも面会されたいようでしたら、病院の代表番号に連絡いただいて、面会希望ですと伝えてもらえたらいつでも会えるように話をしておきます」
「毎日でも会いに来てあげてください、声は聞こえてますのでご本人も安心できると思います」
おかあちゃん
おかあちゃん、ひとりにしてごめんね
みんな待ってるから、元気になったら帰ろうね
頑張ろうね
私の呼び掛けを、母のそばに立つ看護師さんが繰り返して
母に伝えている
「頑張って元気になって、帰ろうね」
「みんな、おうちで待ってるよ、って」
看護師さんの言葉に
もうええ、しんどいはよ死にたい
眠ってると思っていた母がしかめっ面で言うのが聞こえた
ごめんね、おかあちゃん
涙がボロボロこぼれた
母の前では泣くまい、と決めていたのに
また来るからね
最後に母に言って
病院をあとにした
私が、生きている母に会ったのはそれが最後になった
私は病院から帰宅して、その夜から発熱と倦怠感で寝込んだからだ
その日、翌日と娘達や、下の兄が会いに行ったという話を聞いた
そして、8月6日の午前2時過ぎ、病院からの電話
脈が止まりました
ご家族の方来られますか?
すぐに、娘達、2人の兄に電話した
少しでも、顔見ない?
と、娘達に言われたが
私は高熱で動けなかった
下の兄と、娘達と下の娘の彼氏が向かってくれた
病院の連絡から約一時間後、死亡確認
コロナで亡くなると、専用の納体袋に入れられて、決まった安置所へ運ばれるとのことだった
そしてコロナ死の為、葬儀は火葬後しか出来ないこと
火葬も、その日のいちばん最後の順番があてられるらしいこと
火葬の際も、家族は付き添いできないこと
お骨拾いもできないこと
コロナだから
できません
コロナだから
できません
コロナだから
できません
コロナだから、コロナだから、コロナだから
なにもかも、制限だらけ
こんなに悲しいことはありませんでした
手を握ってあげることも出来ず
触れることも出来ず
言葉にならない、かなしみばかりがいつまでもいつまでも残ります
コロナさえなければ
もう1ヶ月過ぎても、その悔しさばかりです
コロナさえなかったら
最期の時間を一緒にいられたのに
ありがとうを伝えたかった
ずっと大好きだよと伝えたかった
こうやって、書けるようになるまで、母の死から1ヶ月過ぎました