私が本格的に旅を始めたのは1986年の夏で、当時高校1年生だった。国鉄が発売していた「山陰ワイド周遊券」を学割で購入し、夜行急行「だいせん」で大阪駅を出発した。

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翌朝は出雲大社と日御碕を見学。そして出雲市駅へ戻って、特急「おき」「まつかぜ」を乗り継ぎ、鳥取駅へ向かった。ずい分慌ただしい行程だが、山陰ワイド周遊券は周遊区間内の特急自由席が乗り放題なので、特急を使わない手はなかった。憧れの特急に初めて乗れて、興奮していたのを思い出す。

 

鳥取駅から非冷房のバスに揺られ、鳥取砂丘に着いたのは夕方近くだったのではないか。重たいボストンバッグを肩にかけ、汗だくで歩きまわった。とにかく有名観光地に立てただけで嬉しかったのだ。

 

鳥取砂丘から鳥取駅へ戻り、旧型客車に揺られて、山陰ワイドの周遊区間末端の福知山へ。ここで昨日乗ってきた「だいせん」を待ち受け、出雲市へ向かったのだが、元気だったのはこの時点までだった。

 

翌日以降は、惰性で列車に揺られていた。高校1年生の身分では旅費が乏しく、夜行列車の座席仮眠を一週間以上続けて、倹約のためにジュースも我慢し、食事は駅そばがメインで基本的に一日一食。こんな旅行では、体力が持つはずがない。真夏なのに、ろくに風呂も入らなかった。

 

よくもこんな旅行したのもだと今では呆れかえるが、とにかく列車に乗れることが嬉しかったのだ。山陰ワイドの周遊区間全線を乗り倒して、フラフラになって帰宅した時は、もう夏休みが終わりに近づいていた。帰宅後、真っ先に食べた炊き立てのご飯が、とても美味かったのを覚えている。

 

あの旅行から私の旅のスタイルは一時期、有名観光地を避ける方向に傾いていった。俗化した場所に団体観光客がいる光景がダサいと感じていたからだ。しかし、コロナ禍などで旅行業界が厳しい昨今、旅に出て応援したいと思うと同時に、定番観光地で素直に「おのぼりさん」になるのも悪くないと思うようになった。こんな気持ちになったのは年をとった影響かもしれない。そんな思いから今夏、久しぶりに鳥取砂丘に立った。

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この日の鳥取の最高気温は38℃だったらしいか、砂丘の中は海風があって、思ったより暑さは感じなかった。

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さっそく「馬の背」にトライする。途中までは何とか進めたが、やはり無理だった。

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滑りながら戻っていると、大声を上げて転げまわっている輩がいた。元気なのは良いが、ちょっとやりすぎの感がある。ケガをしてからでは遅い。改めて、緩やかな道に廻って頂上へ出た。自然が生み出した絶景に息を呑む。

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周りでは、映えるショットを作り出そうと若者たちがワイワイやっていた。

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こういった光景を見ると、改めて旅はいいと思ったし、まだ行ったことがない国立公園や国定公園を目指したくなった。

 

帰りは、歩き回った疲労感に日差しがモロに出て、さすがにぐったりとなった。でも良い時間を過ごせたと思う。

 

帰りは、バスを途中下車して「日乃丸温泉」で疲れを癒した。

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ハッキリ言って激熱温泉だったが、気さくな女将さんと常連客のやりとりが愉快な場所であった。そして、駅に戻ると湯上りビールで一息ついて、帰路についたのだった。