私は、銭湯通いを日課にしている。風呂は湯船に浸かりたい派なので、今住んでいる単身向けのユニットバスでは何とも物足りないし、1人分のために湯船に湯を張るのは、環境にもよろしくない気がする。

 

私の住んでいる街では、覚えているだけでも4軒の銭湯があったが、現在は2軒になっている。銭湯といえば、結構夜遅くまで営業していたものだったが、コロナ禍や燃料費の高騰、そしてお客の減少などで営業時間は短縮傾向にある。

 

前述の2軒のうち、平日は自宅から5分の近所にある銭湯へ行っている。そして、休日は少し遠目のもう1軒を利用しているが、今からの話は、その遠い目の銭湯でのことである。

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日が暮れたある日、私はいつも通りに湯船に浸かっていた。ここの湯は、入り始めこそ熱いと感じるかもしれないが、すぐに体に馴染む優しい湯だ。Googleマップの口コミを見ていると、どうやら地下水を使っているかららしい。

 

この日の浴室には、小学生高学年とおぼしき2人がいた。子供たちの銭湯のマナーは、必ずしも良いといえないパターンが多いが、この2人もまぁまぁの振る舞いだった。顔をしかめたいところだが、銭湯の未来を考えると、彼らのような客に来場してもらうのは必須である。多少のことは目をつぶりたい。

 

しばらくすると、彼らは脱衣場へ出ていった。静かになった浴室で、私は自分のルーティンで時間を過ごし、湯から上がった。

 

脱衣場には、2人がソファーでくつろぎながら漫画を読んでいた。

「まだおったんかいな」

またもや私は顔をしかめそうになるが、しばらくした後の、彼らがコーラを購入(瓶タイプ)したあとの行動に目が離せなくなった。

 

どういった行動だったのかというと、栓抜きの使い方がわからないらしく、瓶を片手に悪戦苦闘し始めたのだ。

「いい気味だ」

私は、心の中でニヤニヤしていたのだが、番台の女将さんが助け舟を出した。開け方を説明し、自分で開けるように伝えると、彼らは、何度目かの挑戦で見事に開けることに成功したのだ。その光景を見ていた私は、顔をしかめそうになっていたことも忘れ、良かったなぁと安堵したのである。

銭湯ではこういったドラマに遭遇する。子供たちも、親以外の大人と会話すると良い刺激になると思う。まだまだ、銭湯の可能性を感じた良い時間であった。