目を覚ますと、列車は駅構内を走行中で、京浜東北線色の209系が目に入ってきました。
 
「いったい、どこを走っているんだ?」
 
考えていると、列車はすぐホームに入って停車。駅名板を見ると「直江津」でした。
 
外は夜が明ける直前といった感じで、かなり明るくなっています。自分の頭の中で、この外の明るさでは、列車は、金沢あたりを走っているというイメージをもっていたので、遅れているのは間違いなさそうです。
 
やがて、おはよう放送…
 
「秋田県、山形県内で強風の影響で、速度を落として運転したため、只今2時間程遅れています」
 
さらに…
 
「この先、富山・金沢地区の特急・普通列車の運行を優先させるため、さらに列車の遅れが見込まれます。そのため、これから先の駅の到着時刻は確定していません」
 
物騒なことになりそうですが、これから旅をはじめるのではなく、帰る方向に向かっているので、特に気になりませんでした。その分、ブルートレインを堪能できますしね。
 
「2時間以上遅れて、大阪に着かへんかなぁ」
 
特急料金払い戻しになりますからね。
そうなれば、昨夜の呑み屋での飲食代がチャラになります。
(なんて、セコい発想なんでしょう…)
 
とりあえず、通路側のイスを倒して、しばらく景色をボーッと眺めます。
 
改めて車内を見渡すと、下段のベッドはほぼ満席ですが、上段は2~3割の乗車率といったところのようでした。
 
時折、カメラ片手の小学生くらいの子供たちが、通路を行き交います。
 
先週の「能登」「北陸」のさよなら運転で賑わった余韻が残っている昨今、貴重なブルートレインに乗っておこうという「乗り鉄君」が結構いるようです(私もそのひとり)
 
「大阪駅へお急ぎの方に申し上げます。金沢駅でサンダーバード号にお乗りかえください。お持ちの寝台券・乗車券でそのまま乗車できます」
 
特急列車が、ひっきりなしに運行されている北陸本線ならではの対応ですね。遅れているのは「日本海」だけな訳ですから、この方法で大阪駅に向かえば、30分程の遅れですみますので、乗客の中で乗り換える人はかなりいそうです。
 
「このまま、乗り続けていたら、特急料金戻ってくるのに…」
 
このことばかり考えている私には、乗り換える気など、さらさらありませんでしたけど。
 
「オハネフ24 2」
 
今回、乗った車両です。
昔は三段式寝台だったのを、二段式に改造しているので、その痕跡が残っています。三段のうちの中段のベッドを撤去している訳ですが、ベッドを上下させるアーム部分を撤去した跡を板で塞いでいるため、中段のベッドがあった位置(高さ)がわかります。
その位置に頭を合わせてみますと。とても起き上がれる位置ではありません。
 
「今では考えられない、狭さやな」
 
とは言いつつ、その狭さ加減を体験してみたい気もします。でも、それはもうかないそうもないのですけど。
 
「金沢から福井まで、車内販売を実施いたします」
 
「おっ、ええどええど!ブルートレインで駅弁が食べれたら最高やないの。それに酒も…」
 
私は色めき立ちました。
昨夜にコンビニで朝食用の食材は買っていますが、これは自宅で食べれば良いでしょう。やはり駅弁に食指が動いたのはいうまでもありませんでした。
(つづく)