定期的に通っているJR羽越本線だが、乗り鉄を楽しんだ後は、沿線を訪ね歩くことにしている。
 
 
鶴岡市にある「湯野浜温泉」も早くから目に付けていた場所で、5年ほど前に初めて行った。宿泊はしなかったが、公衆浴場に浸かり、大衆食堂で食事をして、そして海岸を散策した。一通り堪能したので、あれから足が遠のいているが、いつか宿泊で再訪したいと思っている場所である。
 
 
その「湯野浜温泉」だが、知るきっかけとなったのは、実は鉄道雑誌であった。その雑誌名は失念してしまったが、確か鶴岡から湯野浜温泉まで、庄内交通の電車が走っていたことを振り返る企画だったように思う。
 
 
その庄内交通の鉄道路線は1975年に廃止となり、もう過去のものになっている。この路線に興味を抱いた私は、改めて特集している鉄道雑誌を探し、手にしたのが「RM LIBRARY68・庄内交通湯野浜線」(以下、RM誌)である。
 
 
 
 
中身は非常に濃い内容で、鉄道が走っていた当時の写真を見ると、情景が頭に浮かんでくる。四季それぞれの美しい写真を見ると、タイムスリップしたい心境だ。
 
 
路線廃止からもう40年近くなるが、電車に乗っていたら見ることができた車窓を、歩くことによってこの目で確かめたくなった。電車に乗っていなくても、当時の雰囲気を体感したと思ったのだ。
 
 


 
 
 
鶴岡駅周辺には、電車が走っていた当時の痕跡が少し残っていた。
 
 
イメージ 1
 
 
川を渡るコンクリートの橋台を発見した時は、マニアの心がうずき、テンションが上がったが、しばらく過ぎると、あとは一面の田園地帯で何も残っていなかった。
 
 
イメージ 2
 
 
でも、気持ちは電車に乗っている気分で、のんびり歩く。
 
 
こんなきっかけでないと、まず来ないだろうと思う観光地でもない場所だが、こういう場所を歩くのは嫌いではない。前述のRM誌の写真と現在との対比を見ながら歩を進めていった。
 
 
途中、便意をもよおして、トイレ探しに悪戦苦闘したが、なんとか対応し、昼食は道端でおにぎりをほお張ったりして、のんびりとしたウォーキングを堪能した。
 
 
体力的に湯野浜温泉まで歩くのは可能だったが、帰宅する時間との兼ね合いで、歩き通すのは無理なため、探訪の終点を「大山公園」と定める。
 
 
大山は酒蔵ある酒の町で、昔は街道が通じていたため、当時は交通の要衝として賑わったと聞く。一度じっくり歩きたい町だ。
 
 
大山公園は桜がまだ残っていて、今季最後の花見を堪能したあとは、町が見渡せる場所に立った。この場所から風景を眺めると感慨深くなる。
 
 
イメージ 3
 
 
鉄道が走っていた当時は、この風景に線路が延びていたからだ。
 
 
RM誌にこの辺りから撮影したと思われる電車の写真があり、それはとても美しい風景で、鶴岡市出身の作家・藤沢周平先生も気に入っていたという。
 
 
今、目の前に広がる風景に、当時の情景を頭に浮かべながら、有意義な時間を過ごしたのであった。