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近鉄河内山本駅で私は、信貴線の電車を待っていた。

 

「次の信貴線の発車は、こっちのホームですよ」

 

背後で女性の声が聞こえたので振り向くと、向かい側信貴線専用ホームにいた人が注意されているところであった。

 

河内山本駅から分岐する信貴線は、専用の発着ホームがある一方、難波・上本町方面からの乗り換えをスムーズにするために本線の大阪線ホームを発着に使っている。そのため、ホームに次の信貴線は○番ホームという電光掲示板がある。

 

「ありがとうございます。一年ぶりに信貴山へ行こうと来たんですけど、間違えてしまいました…」

 

先程注意されていた人がこちらのホームへやって来て、件の女性にお礼を言っている。地域の人々の温かさに触れ、いい気分になっていると、信貴線電車が入線してきた。

 

電車は2両編成。信貴線のような支線では昨今、ワンマン運転が主流だが、信貴線には車掌が乗務していた。

 

ほどなくして電車は発車し、ゆっくりと進んでいく。正面に高安山を中心とした山々が迫ってきて、車窓は開放感があった。進むにつれて勾配を少しずつ登っていく感じになり、曲がり切った所が服部川駅だった。

 

ホームに降りると、遠くにあべのハルカスが見えた。八尾市内の駅なのに、随分遠くに来た感じがする。ホームには、さっきの電車の折り返しを待つ人々が多くいて、信貴線が観光以外でも地域の人々に役立っているのだと感じる。

 

駅前には民族資料館への道案内があった。それを見ながら、私はのんびりと歩き出したのだった。