2024年6月22日

講談二つ目時代@お江戸両国亭


講談協会の二つ目さんの合同勉強会として今年二月スタートした会です。小の月(2、4、6、9、11月)の22日の夜席の定期開催で、毎回一名が番頭として会を仕切ります(番頭はトリも務めます)。今回は演芸会が立て込んたために凌天、こなぎ(番頭)の二人の出演、代わりに女性の前座さんが二名参加しての女子会になりました。


一、大名花屋 山兎

神田山緑門下でまだキャリア一年未満。今年2月の津の守の前講では本を置いての「三方ヶ原」だった。それから約半年、勉強の成果著しく無本で「大名花屋」を一段読み切った。明るい語り口なのでこの調子で伸びて行ってほしい。
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一、無剣鍾馗(原作:ゴードン・スミス、作:宝井琴星) 小琴

長逗留の侍に宿代を請求すると、これが一文無し。江戸表で金を工面してくるので…ということで勘定書の裏に借用書を認めて、江戸までの路銀の抵当にと衝立に魔除けの鍾馗さまを書く。鍾馗さまは普通剣を持っているが、この鍾馗さまは睨んだだけで魔を退けるので剣は不要なので持っていない。これを病で臥せっている女将の枕元に立てると病はたちどころに平癒するであろうと言い残して出立してしまう。言われた通りにするとわずか三日で女将の病が治ってしまう。後日、借用金とツケの宿代をはるかに超える額の金子を持った侍が訪れ、一文無しの正体が幕府御用絵師の土佐将監光起とわかる…という「抜け雀」に「甚五郎のねずみ」を足したような話。

イギリスの博物学者で、晩年を日本で過ごし、各地を歩いて説話や伝説を蒐集し、日本で亡くなって神戸に眠るゴードン・スミスが集めた説話の一つを小琴さんの師匠琴星先生が講釈にまとめた新作講談。小琴さんで一昨年暮れの女流花便り寄席で聴いたが、そのときは鍾馗さんの睨みで女将の病が平癒するところまでだったが、今回ようやく最後まで聴けた。貞司さんが昇進して立前座となり、二つ目昇進が見えてきた小琴さん、語り口が落ち着いてきて、また早くから覚えた話ということもあり、前回より楽しく聴けた。上々吉。


一、木村長門守の堪忍袋 凌天

「今日はあちこちで演芸の会が集中して、この会の出演が二人になってしまいました。そこで今回は女性の前座さん二人に入ってもらって前講より長めに読んでもらいました。」とのことで「今は前座さんが13人もいて勉強・修業の場の確保が大変そうだが、私が前座で楽屋入りしたころは、前座が女の子ばかり3人しかいなくて、力仕事は二つ目に上がったばかりの今の琴凌先生に手伝ってもらったりしていた。その後半年くらいで貞奈さんが入ってきたけど、それでも大変だったのが前座時代の思い出。その代わり師匠や先輩に付いて歩いていると勉強の場には事欠かなかった。」と前座時代の思い出話から「そんな前座時代におぼえたお話」ということで「木村長門守の堪忍袋」へ。凌天さんの明るく丁寧な語り口で楽しく聴けた。上々吉。

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お仲入り


一、四谷怪談 お岩の死〜伊藤喜兵衛の死 こなぎ

この会の前日に講談協会HPでこなぎさんの来春4月の真打昇進が発表された。その直後の会とあって場内から「おめでとう!」の声がかかった。


以前の高座で「衣替え過ぎたら怪談解禁」と言っていた通り照明を落として「四谷怪談」へ。昨夏8月の花便りのトリで蘭先生が読んだのと同じ「お岩の死〜伊藤喜兵衛の死」だが、蘭先生のは実説ベースの講談本の「四谷怪談」であったが、今回のこなぎさんは鶴屋南北の「東海道四谷怪談」をベースにした版で、お岩さまは伊藤喜兵衛からの血の道の妙薬(実は面体が崩れる毒薬)を飲んで面体が崩れ、全てを知った伊右衛門に斬り殺される。死体を始末したあとに伊藤の家でお梅と同衾するが、お梅はお岩さまの姿に変じ、伊右衛門は斬り捨てるが斬られた首はお梅、驚いて喜兵衛を呼ぶと喜兵衛もお岩さまの姿に、そしてお梅と同じく斬り捨てた首は喜兵衛。一夜のうちに一家を惨殺してしまった伊右衛門は屋敷の金を持って逐電する…という普段我々がよく知る「四谷怪談」でした