2024年3月20日
➀すがも巣ごもり寄席vol.455@西巣鴨スタジオフォー



祝日と重なって場内はほぼ満席。若い女性客も目立った。佑輔さんのお客かな?


一、やかんなめ 佑輔
「やかんなめ」は82年に東京落語会で、埋もれた噺の発掘企画で十代目小三治師が演じ、これが広まった(この時に発掘された噺は他に「死ぬなら今(小朝師)」「幽女買い(七代目談志師)」があり、それぞれ寄席レパートリーとして復活を遂げた)。今回の佑輔さんは文菊師に習ったとのことで、なんとネタおろし。女性の描写は定評があるので、癪持ちのご新造主従の描写はさすがだが、やはり侍の貫目は未だしの感がある。こういう牧歌的な噺(小三治師曰く「これはドン・キホーテですね。」)はまずは雰囲気作りが重要なので、そのあたりを熟成できれば売り物になると思う。

一、くしゃみ講釈 寸志
佑輔さん、小ふねさんの熱演に挟まれて、寸志さんも何か思うところがあったのだろう。「くしゃみ講釈」は何度も聴いているが、今回は今まででは一番たっぷり目に運んでいたように思う。ギアの入りが明らかに違う。上々吉。

一、鮑のし 小ふね
雛菊、だいえい、黒酒、菊正、杏寿と話題の二つ目が多い2017年入門組の小里ん師門下。30歳になったばかりだが、40代のような落ち着きも見えて年齢不詳の感がある。所謂「フラ」の塊のような高座で、何気ない一言がたまらなく可笑しい。何かのきっかけで大化けしそう。



➁立川寸志トリ噺五十席 其の五@アートスペース兜座



一席目のマクラで五月からスタートする本気の昇進カウントダウンシリーズ「立川寸志、通算1000人様のお認めで真打になります。」の概要が発表された。五月の第1回は「特別編」として25名限定で談四楼師に講評を貰う。その後今年は7月深川、9月内幸町、12月立川の3回開催、来年も200人クラスのホールで開催し、2025年内の通算1000人達成を目指す。さしあたりこの会以外の会場でも投票を行うか検討中とのこと。あっしは第1回は土曜日の昼なので参戦不可。代わりに4月の道楽亭の独演会(カウントダウンシリーズの前夜祭)を予約、後の3回とトリ噺五十席も予約し、最大7/1000票投票の予定。


一、花見の仇討(寸志さんでは初聴き)
というわけで、仕切り直しのように定番のマクラから本編へ。六部役の源ちゃんを拉致る叔父さんのキャラが少々しつこいのがちょっとダレる。十代目馬生師のようにサラッと行きたい。茶番一座の連中はそれぞれキャラが立っていて生き生きしていて楽しい。寸志さんはXで「コント感が好き」と仰っている。なるほど、シチュエーションコントとしての側面もあるのか。この視点は目からウロコ。

お仲入り

一、死神
やはりXで「自信もってできる噺になった」と仰っている。今回も含め前後3回聴いているが、今回のがサゲも含め一番納得がいく高座だった。これは取りもなおさず寸志さんの「編集」が完成型に近づいているのだろう。近い将来の真打昇進時にはトリ噺の筆頭になるだろう。上々吉。
終演後、「死神」の呪文(あじゃらかもくれんクモハユニ、てけれっつのぱ)にちなんでお客さんから鉄道雑誌をプレゼントされて上機嫌の寸志さんでした。