2024年2月25日ダブルヘッダー
➁三遊亭律歌独演会@池袋演芸場


毎回工夫をこらした構成の「寄席バラエティショー」の律歌独演会。前々回は立花家橘之助師をゲストに「住吉踊り」、前回は同時昇進の蝶花楼桃花師をゲストに「にゃん子・金魚なりきり漫才」、そして今回は話題の新進音曲師立花家あまねさん(橘之助門下)の登場。さあ、何が飛び出すか…

一、元犬 まんと(開口一番)
以前北とぴあ寄席で昼夜全く毛色の違う会の前座を務めたまんとさん、間もなく二つ目昇進ということで、一段腕が上がってきました。「元犬」は、口入屋の旦那にシロちゃんが人間になったことをカミングアウトする変化球型。

一、時そば 律歌
昨日と打って変わって氷雨の日曜日、正直ここに来るまで入りが心配だったが、大入りでホッとしました。ゲストのあまねさんは弱冠22歳(!)私は44歳…今日はダブルスコアでお送りします。というちょっと自虐なボヤきから、こういう寒い日には温かい食べものが恋しくなりますね…というマクラからの「時そば」。時々地に戻ったりしながらの流れがよく、後半の不味いそばを食うところの振り幅が大きくよくウケました。

一、音曲(民謡) あまね
御所の御庭〜貝殻節〜関の五本松〜品川甚句
現在22歳のあまねさんは2020年入門、昨年11月に年期明けで高座に上がるようになってまだ三ヶ月半。三味線は母親から手ほどきを受けていたが、唄と踊りは入門してから師匠から仕込まれたのだという。それにしても三味線はいい音締めだし、唄は声がきれいで、民謡を唄ってもお座敷風の垢抜けた粋な節回しで、民謡歌手系の野暮ったさは感じない。「夢千代日記」で吉永小百合と樹木希林が騒ぎ唄風に賑やかに唄っていた「貝殻節」を、スローテンポでしっとりと唄って、「関の五本松」は一転太鼓を入れて賑やかに唄うなどセンスの良さも感じた。曲の間の喋りも達者で、キャリア三年とは思えない。常に笑顔を絶やさず愛嬌たっぷりで、とにかくとても楽しそうに高座を務めていて非常に好感。褒め過ぎのようだがもう「天才」と呼んでしまってもいいと思います。うかうかしてると林家あずみは食われちゃいますよ。


一、住吉踊り(かっぽれ〜奴さん) 律歌・あまね
橘之助門下のあまねさんがゲストということで、二人で住吉踊り。あまねさんの衣装替えの間、かっぽれの前半は律歌師が一人で、後半からはあまねさんとの二人踊り。続いて「奴さん」を前半は律歌師が奴さん、後半はあまねさんが頭に手拭いを乗せて姐さんを。住吉踊りを10年稽古して、師匠歌る多師の「松づくし」の後見も務める律歌師と五分に渡り合うあまねさんが素晴らしい。多分今夏の住吉でデビューするでしょう。

お仲入り

一、死神婆 律歌
場内の灯りを落として舞台も薄暗くしての高座。こみち師が改作した「死神婆」。先年の「鎌倉殿の13人」で大竹しのぶがサプライズで演じた歩き巫女を彷彿とさせる不気味な女死神は、高座が薄暗くなって律歌師の顔に無作為な凄みが出て、特に後半は恐怖すら覚えた。例の呪文は「あじゃらかもくれん、落語協会百周年(昼間記念式典があった)、テケレッツのパ」で、サゲは一度は蝋燭の火を移し替えたが、死神婆が「フッ」ばったり倒れて高座が暗転、倒れたままハネ太鼓で閉幕。これならもう一度幕開けて前座とあまねさんを入れて「かっぽれ」の総踊りで大喜利にしても良かったと思うが如何に。