2024年1月3日
連雀亭初席@神田連雀亭


連雀亭は元日から3日間ワンコインと昼席が合体した初席になります。連雀亭メンバーの中でも番頭格・卒業が近いキャリアの演者が出演します。仲入り、主任は今年卒業予定(真打昇進決定、内定)の梅湯・つる子(元日)、花ごめ・優々(2日)、らく兵・真紅(3日)が務めます。


一、まんじゅう怖い 茶光
一、一休婿入り 凌天
一、犬の目 弁橋(晴太代演)
一、おすわどん 寸志
一、反対俥・踊り(かっぽれ) 楽八
一、粗忽の釘 らく兵
お仲入り
一、お見合い中 喜太郎
一、サイン 馬雀
一、宿屋の富 らっ好
一、死ぬほど律儀 花飛(吉笑代演)
一、寿限無・噺家ものまね 仁馬
(この時のみ撮影許可)

一、水戸黄門 真紅
仲入り前とトリ前はヒザ兼任で余興を披露。長身の楽八さんは頭をぶつけそうでスリル満点の「かっぽれ」、仁馬さんは芸協の先輩噺家・講釈師のものまね「クセの強い噺家宣材写真」シリーズ。「松之丞時代と今の伯山先生」「もうじき変わる春雨や風子」などで爆笑。



2024年1月6日
道楽亭初席「俺たちの時代」2024@新宿道楽亭

道楽亭の初席は6日からの3日間昼夜6公演。中で一番顔ぶれがあっし好みの初日夜席へ。初席とはいえ各演者とも工夫を凝らした熱演でした。夜席の後はいつものように打ち上げがあり、各師や菊太楼師の名物おかみさんと楽しく交流、貴重なお話も伺いました。


一、道灌 雛菊
開口一番兼任ということで「道灌」でしたが、マクラで菊之丞一門のお正月のあれこれをたっぷり。元日、鈴本二部終演後に菊之丞宅での新年会だったが、直前に能登半島地震で菊之丞宅マンションのエレベーターが非常停止してしまい、菊之丞師を含め会の準備のために来ていた菊正さんや出席の芸人は38階の菊之丞宅まで階段で登ることに。中でも「ご挨拶だけ」と言っていた田辺いちか姉さんは菊之丞宅滞在数分のために38階分の階段を往復、肩で息して帰って行った…いちかさんは4日の講談協会初席を体調不良で休演したが、まさかこの時の疲れからでは…

一、かつぎや 菊正
菊正さんは名門東大落研出身ということで、昭和の名人の噺を指向しています。特に八代目柳枝、三代目小圓朝、四代目圓遊、三代目金馬などの軽い芸を好んで自らの噺に反映させています。今回も三代目金馬一門が正月になるとよくかけていた「かつぎや」。あっしは小さい頃に四代目金馬師で何度も聴きましたが、最近は初席でもほとんど出ないので、とても懐かしかったと共に前半定吉が年始客の名前を縁起でもない詰め方をするのを無理のない名前にしていたところに菊正さんのセンスの良さを感じました。おかげでよくウケて客席が暖まりました。

一、妾馬 べ瓶
あっと驚く上方版妾馬。江戸版「妾馬」は、江戸城登城の途中の御駕籠の中の殿様がおつるを見染めて、八五郎は江戸屋敷に呼ばれますが、上方版では大阪近郊の城下町(べ瓶さんによれば高槻か尼崎、べ瓶さんは八五郎のキャラクターから尼崎を想定している。あっしは聴いている時は姫路を想定していた)を舞台に、八五郎は御城に呼ばれる。べ瓶さんは鶴瓶師から習ったとのことで、単なる翻訳ではなく上方の風の感じられる噺になっていました。噺の展開は八五郎があまりめそめそ泣かない志ん生系の「妾馬」で(多分鶴瓶師は志ん生の妾馬を翻案したのだろう)、殿様が「士分に取り立てる」というのを断って「その代わりにおふくろに孫を抱かせてやってくれ」と言うところにガサツだが親想い、妹想いな八五郎のキャラクターがにじみ出てグッときた。

お仲入り

一、スタンダップコメディ ナオユキ
ナオユキさんは芸協の会員になっているが、鶴光一門に属しているとのこと(落協、芸協とも色物会員は真打噺家の一門に入ることになっている。最近の会員では芸協入りした坂本頼光は鯉朝一門、落協入りした寒空はだかは喬太郎一門に入っている)。つまりは笑福亭の一門。十八番の「ある日、居酒屋で」だったが、なるほどおっさんの酔態に六代目松鶴の「らくだ」「後引き酒(「市助酒」のショートバージョンで「相撲場風景」と並んで六代目がよく寄席でかけていた)」の風を感じました。

一、幾代餅 菊太楼
べ瓶さんが「妾馬」だったので、対抗して上方噺の江戸バージョンでくるかなと思ったら、ザ・古今亭の「幾代餅」。今まで古今亭のいろんな人の「幾代餅」を聴きましたが、菊太楼師のが一番古今亭の風を感じました。着付けも黒の着物に襦袢の襟が柿色と江戸前、思えば菊太楼師は1968年生まれ(あっしと四つ違い)、やはり志ん朝師が「青春の噺家」なんでしょう。21日の道楽亭独演会では「三軒長屋」通しに挑戦とのことで、とても楽しみです。