2023年3月20日
しのばず寄席@お江戸上野広小路亭


今回は図らずも遊雀師代バネとなった前回に引き続き「しのばず・ザ・ベスト」の好番組。この番組を予約1500円(当日2000円)で堪能できちゃう。しかも前座、色物以外は平均20分、仲入りは30分主任は40分(40分超の長講もあり)と持ち時間たっぷり(前座でも15分くらい貰える)でコスパ最高。場内は平日昼にもかかわらずギチ満席。後で訊いたら雀々師目当てらしい。

一、英会話 壱福
8日の池袋に出てきた米福師弟子。前座が新作を演るのは珍しい。大師匠米丸師同様の「新作純粋培養」か。

一、小林 寸志
「今回はおあとがスゴい顔ぶれなので、わたしは軽い新作を」ということで1月に大和で聴いた「小林」。

一、垂乳根 萬橘
一、花見の仇討 龍志
あまりに牧歌的な「花見の仇討」、好きな噺なのに中盤寝落ちしてしまった。

一、ヴァイオリン漫談 マグナム小林
一、鶴満寺 雀々
「東京で桜が咲いたのでお花見の噺を…」というので、ここで「貧乏花見」かな?と思ったらさらに上方味の濃い「鶴満寺」へ。本来はハメモノだが、広小路亭はお囃子がいないのでハメモノの部分はアカペラ。東京でコアな上方落語を広めるために雀々師や鶴光師など東京拠点の上方噺家さんはさまざまに創意工夫を凝らしている。師匠枝雀師をして「芸も性格もわたしに一番近い」と言わしめたパワーは健在、近年いよいよ枝雀色が濃厚になり、なんでもない会話が爆笑を呼ぶ。久しぶりに枝雀の魂を感じた。

お仲入り

一、秋色桜 ひまわり
師匠二代目山陽没後に芸協所属の講釈師として五代目痴楽の門下となった異色の講釈師。当時小学生だった現小痴楽の遊び相手だったので、小痴楽師から「お姉ちゃん」と慕われて小痴楽主任芝居に必ず入る。神田一門らしい情のこもった爽やかな「秋色桜」。上々吉。

一、干物箱 兼好
一、なぞかけ漫談 ねづっち
一、質屋庫 鯉昇
あっしの菩提寺の先代の住職が贔屓で、前座の柳若時代から出入りしていたので、40年来聴いている鯉昇師。今も十八番の「茶の湯」「時そば(歳そば)」などを菩提寺の座敷でやっていた若手の勉強会(メンバーは鯉昇(愛橋)、蝠丸(小蝠)、時蔵、愛山(一陽、アルコール依存で倒れる前)当時全員二つ目)でよく聴いた。当時は陰気な語り口で正直あまり面白くなかったが、歳を重ねて飄逸味とフラが出てきて今や大看板。今回の「質屋庫」も爆笑…というよりは巧まざるユーモアで温かな笑いが湧き上がり、ほっこりとお開き。