2022年9月25日
三遊亭遊かり独演会vol.12@お江戸日本橋亭


3ヶ月に一度の遊かりさんの本場所独演会。時あたかも秋場所千秋楽の日の開催となりました。今年3月の第10回記念までは両国の江戸東京博物館のホールでの開催でしたが、江戸東京博物館が大改装工事のため3年間の長期休館となり、6月のvol.11からはお江戸日本橋亭に会場が移りました。それと同時に内容もリニューアル、今までゲストは師匠遊雀師一本だったのが、色物や他団体の花形真打をゲストに迎えてのより寄席色の強い会になりました。今回のゲストは「浪曲界の神田伯山」の呼び声高い玉川太福さん。



一、牛ほめ れん児(開口一番)
歌助門下の前座、今年3月に高校を卒業、すぐ4月に楽屋入り、キャリア半年という弱冠19歳。まだ着物が身に着いていないのはキャリア半年では無理もない。「牛ほめ」の途中でCDプレイヤーの誤作動で出囃子が流れるハプニングにもめげずに落ち着いてサゲまで演じきったのはご立派。

一、粗忽長屋 遊かり
前回からゲストが師匠以外の芸人になったため、また会場のキャパが少なくなったので経費節約のため前座を一人削ったため、開口一番の前後の音響操作を自分でやらなければならずさっきの誤作動のようなハプニングが起きる…との反省の弁。開口一番のれん児は今どきの前座には珍しく寄席の楽屋仕事が好きで楽屋にいるのが楽しくて仕方がないという「稀有な存在」なんだとか。
この会の一席目はこういう最近の身の回りの話からなんとなく本編に移行するのが定番。自分の前座時代の失敗談から「粗忽長屋」へ。多分遊雀師直伝の余計な入れごとなしの柳家型の「粗忽長屋」。熊さんを説き伏せて連れ出すあたりがややサラッとしすぎて不条理味が薄くなったが、前後の役人とのやり取りはよかった。

一、豆腐屋ジョニー(作:三遊亭白鳥) 遊かり
舞台を遊かりさんの地元のスーパー「みらべる」にした白鳥作品。この会で新作をかけるのは珍しいが、それだけ白鳥作品が若手、ことに女性噺家に膾炙していることのあらわれだろう。秋冬のおすすめメニューをめぐる豆腐とチーズの仁義なき戦いに高級豆腐「豆腐屋ジョニー」とカマンベールチーズの首領の妹のクリームチーズの許されざる恋がからむ爆笑編。遊かりさんは早くから手がけているので噺の中でいろいろ遊べるくらいに手の内に入って賑々しく仲入り。

お仲入り

一、百歳の曲師 玉川祐子伝「スマホ購入編」 玉川太福(曲師:玉川みね子)
白鳥作品は実は浪曲界でも手がける人が若手女性浪曲師を中心に増えて、太福師も「豆腐屋ジョニー」は持ちネタにしているとのこと。
落語定席での上演形態で釈台に小型のテーブル掛けをかけて曲師は脇で椅子に座って弾く。来月木馬亭で百歳記念の会を開く百歳の現役曲師玉川祐子師が太福さんと携帯をスマホに機種変に行ったときのエピソードをタンカを多めにして語る爆笑編。孫くらい歳が違う太福さんを「ダイちゃん」と呼んで可愛がる百歳の祐子師とのやり取りが楽しい。

一、あくび指南 遊かり
大体この会は前半の高座が押して、ゲストの時間は削れないのでトリの三席目は軽い噺になる。今回もマクラも短く「あくび指南」へ。寄席サイズでなく師匠が「四季のあくび」をやって見せたあとに「今日は夏のあくびを」と言っていつものあくびの伝授になるロングバージョン。暑さ寒さも彼岸まで、夏の噺も聴き納め。

今日は開場後に日本橋亭に到着したので、かろうじてあっしのベストポジションに席を確保したが、隣席がガールズにも来ているとにかく演者の一言毎にけたたましくバカ笑いする金髪ロン毛のオッサン(あっしは心の中で「林家パー助」と呼んでいる)で、「あっ」と思ったときには時すでに遅く場内満席で移動できず大いに閉口。

落協は所属噺家に陽性者が増えた関係で再び高座以外のトークなどではマスク着用、終演後の見送り禁止となった(23日の佑輔さんの会でも遵守していた)が、芸協はまだ指令が出ていないようで、終演後は遊かりさんが外でお見送り。