首席指揮者ピエタリ・インキネン得意のオールワーグナー・プロ

彼のワーグナーは5年前、昨年と体調を崩して聴き損なっていただけに楽しみだった

 

歌劇「タンホイザー」序曲
歌劇「ローエングリン」より第1幕、第3幕への前奏曲
言葉のない「指環」(マゼール編)

 

 

ステージ上は両翼に拡がり、かつ対向配置なので一種異様な光景だ

近時対向配置を採用する指揮者は多いが、これは極端と言っていいだろう

 

大好きな「タンホイザー」序曲の出だしは絹のごとく柔らかく滑らかに

終演後インキネンに真っ先に指名されたクラリネットも確かにその後も素晴らしかったが、この日最後に至るまで特筆すべき演奏を聴かせたホルンは実に安定していた

 

「指輪」では対向配置の特徴が明確に表れた

大きく右に拡がったホルンのバンダもちょっと裏に引っ込むだけなので問題なく、その音もまとまるので善しとしたいところだが、その前から気になったのが、いわばステレオ効果は強まるものの、あまりにも音が拡散してしまっているのではないかという点と、左右のバランスが偏りすぎていないかという点(まあ、やはり頑張っていたコントラバスやチェロと対称になっているのだからいいではないかという見方もあろうが・・・)

 

全体の内容はホルンを筆頭に金管が出色の出来だった

そして終始一貫していい仕事をしたのは打楽器陣

もちろんそれをしっかり支えた木管や、寄せては返す波のような弦楽器も

コンマス木野さんとチェロの辻本さんは相変わらず美しく豊かなソロを聴かせてくれた

 

なるほどこれがインキネンのワーグナーかと一応納得した一夜だった