上岡敏之(指揮)
アンヌ・ケフェレック(ピアノ)
モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番ハ短調
(ソリストアンコール ヘンデル(ケンプ編曲)/メヌエット)
ブルックナー/交響曲第6番イ長調
以前も書いたようにモーツァルトはあまり好きではないのだが・・・
先日同様いい演奏にめぐり合えば別である
ケフェレックのソフトなタッチで紡がれる柔らかで暖かな音楽!
華美なドレスなどではなく、まるで田舎の音楽教師のような(失礼)薄い葡萄色の(まさにこの表現がふさわしいと思う)セーターに黒いスカートといういでたちで登場し、抒情的で美しいモーツァルトを聴かせてくれた
楽団職員の放った“cute”という言葉がふさわしいのかもしれない
マエストロも抑えめのタクトでこれを支えた
アンコールはヘンデル(ケンプ編曲)/メヌエット
この夜のケフェレックにふさわしい、シンプルでいてかわいらしい装飾音が施された、透明感のある美しい曲
清々しい気持ちにさせてくれた
中学生の頃からLP を聴いていたので、サイン会で「45年以上」と言ったら「そんなに?」
「50年近くかな」には「45年で十分だわ」と返ってきた
メインディッシュは20日間で3曲目のブルックナー(東響で4番、9番)
他人には地味とか渋いとか言われるが、実は30年前にサンフランシスコ赴任直後にブロムシュテットが振ったのを聴いて大好きになった曲である
20日前の4番でウィグルスワースが用いたコーストヴェット校訂版ほどではないにしても、あまり演奏されないヨーゼフ・ヴェナンティウス・フォン・ヴェス編纂版による演奏であった
このところやたらと版を変えて特色を出そうというする目論見が目立つが、これは1935年のハース版よりも前の1927年にヴィーンで出版された楽譜で、原典楽譜を校訂するような類のものではないそうで、ノヴァーク版と比べると速度標語や表情の指示がふんだんに記され、強弱記号やクレッシェンドの位置などにも数多くの差異がある、要は面白く聴かせるためにあれこれ手を加えた楽譜といったものらしい
まあ、強弱、緩急の変化が激しい「上岡流」にふさわしいというべきか、逆に「独自色」は出しにくいというべきか・・・
終演後出てきた上岡さんが版を採用した理由を話していたようだが、こちらコンマス崔さんと談笑中でわからず(後日ひとに訊いて補筆予定)
さて、聴こえないくらいの弱音から始まった演奏は、いかにも上岡さんらしい指揮ぶりから引き出された美しい第2楽章を経て、ヴェス版が最も違いを際立たせるという第3楽章へ
トリオに反復があり長くなっていたが、それほど大きくは印象が変わらなかった
終楽章はティンパニの特徴的なリズムを伴って締めくくられたが、この間のノットの9番のように「劇的」というスタイルではなく、「美演」というにふさわしいブルックナーだった
アンコールはモーツァルト/交響曲第29番イ長調第4楽章
やはり大好きなだけに、アンコールでやられると若干違和感が
しかも爽快感をもたらしてくれた3月のアンコールのベートーヴェンの4番ほどの演奏ではない
エキストラで乗っていたホルンのHさん、ブルックナーで疲れたのか冴えず
というか、そもそもいくらサービス精神旺盛でも、ブルックナーの後にアンコールやるの?
3月30日のアンコール
この日も素晴らしい演奏を聴かせたフルートの白尾さんを捕まえて、「スタッフデスクで『新日は人使い荒いね、先週ソロ吹いた人乗せちゃうのね』って言ったら、『だって本人が乗りたいっていうんですもの』って返ってきましたが」と投げかけたら、「そう、やっぱりオーケストラにはソロとは違った醍醐味があるからね」
恐れ入りました



