※前の記事、「ガールズオンザラン2nd 仮想9話その1」からご覧になって下さい


ミラクルガールズ。

プロデューサージョビ吉が送り出したアイドルユニットである。

結成当時は違うメンバーであったが、いろいろあって現在のメンバーとなる。

ホタル&ルミ

二人は以前別のアイドルユニットで活動していた。

ルミがユニットから脱退後、ユニットが解散しまた二人での出発となった。

その二人のデビューライブが幕を開けた。

ステージでは早苗、イツキ、望の三人がじっと二人を見ていた。

周りのファンたちのコールやMIXに合わせることもなく、ただ二人を見ていた。

ミラクルガールズのクオリティは素晴らしく、本人が自信があると言ったとおり見事なものだった。

ライブが終わり、三人は会場を後に。

しばらく無言で歩いていた三人だったが、やがて早苗が口を開いた。

「・・・すごかったね、ミラクルガールズ」

自分の想像していた以上の完成度に、早苗は完全に圧倒されていた。

「そうやね」

イツキも同様のようだ。

「私、声も出せませんでした。凄すぎて」

望も同じであった

「こんな事いうのもおかしいんだけど・・・私、ガルラン解散してよかったんだと思う」

「え・・・?」イツキが反応する。望も早苗の方を向く

「だって・・・自分たちでアイドルをプロデュースするがコンセプトの私達じゃ、ミラクルガールズには

絶対に敵わないと思ったから。私たちの誰一人、あの二人を超える子はいなかった。当時のルミでさえ」

「・・・・・」

イツキは無言であったが、早苗と全く同じ意見だった。

ガルランの致命的な欠点は指導者がいない事だった。

自分たちが一生懸命やったその時点の評価は人気、という形でしか現れない。

何がよくて何が悪いのか、誰も的確な指摘ができなかった。

あのタガミでさえも・・・。

だから彼女たちはCDを売るという最低条件をクリアできなかった。

結局のところ成長が出来なかったから、ファンを惹きつけられなかったのだ。

そういう意味では望が脱退まで追い込まれたのはガルラン全員の責任だった。

早苗はミラクルガールズのライブを見て、自分の無力さと方向性に拘った頑固さのせいで

ガルランが失敗したのだと悟った。

そのことがいまさらながらに悔しさとなり、奥歯をギリリと噛み締めていた。

同時に自分に足りないもの、補わなくてはいけないものにやっと気づき、意固地になっていた自分を悔やみメンバーに申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。

だが、いまさらそれを言ってもどうする事もできない。

メンバーはそれぞれの道を歩みだしている。

来月からアメリカに留学に行くことになっている望も、ここにはいない仁美も、カオルも、

そしてイツキも。

「悔しいけど、私たちのガルランでは届かない場所にルミは立ってるね」

イツキがポツリという。

ちょっと前ならムキになって否定するだろう早苗が何も言わなかった。

「ミラクルガールズは絶対頂点に行けると思います」

望は言い切った。

「そうだね。頂点まで行ってほしいね」

だが

「でも頂点に行くのは私」

イツキは強い口調で言った。

「ミラクルガールズはすごかったけど、超えられないほど高い壁じゃないし、そうは思いたくない」

睨みつけるように早苗を見て、力強くそういった。

早苗はその強い言葉にちょっと驚いた様子だったが、やがて静かに微笑み

「当たり前じゃない。そうでないと困るわ」

そういってイツキを見た。


イツキはガルラン解散後、タガミに呼ばれた。

「ソロで活動しない?」

第一声はそれであった。

ガルランの中でもイツキは飛びぬけて人気があり、そして実力もあった。

もっと鍛えればその分光り輝く原石である事をタガミは見抜いていた。

だがガルランの結束力の強さは知っており、イツキ一人を抜くにはガルランを解体するしかなかった。

タガミはそのために2枚目のシングルを出す時点から計画と準備をしていたのだ。

そしてイツキには大物プロデューサーをつけ、徹底的に鍛えてから再出発させることを考えていた。

その時には自分はイツキに憎まれ、関わることは出来ないだろうということも、タガミは承知の上で。

一人、タガミの本心を聞き、そしてイツキは悩みに悩んでタガミの誘いを受けた。

イツキを見初めたプロデューサーがタガミにオファーしてきた、ということにして早苗たちを納得させた。

タガミの真意を知る者はイツキだけだった。


3人はご飯を食べようということになり、お店と探しながら歩いていた。

そこへリンゴン、とLINEの通知が来た。

しかも、イツキと望に同時に。

二人は顔を見合わせそれぞれの携帯を開く。

「仁美からだ」

「カオルからです」

「ルミのライブどうだった?って」

「私の方もです」

「あの子達はまったく」

早苗は呆れながらも笑いながらまた店を探し出した。

イツキと望は「じゃあ『すごかった』ってっしょに返そう」といってせーので送信した。

「あ。ここだ。行こう」

早苗が店を見つけ、三人はドアを開けて入っていった。


同じ頃、とあるビルの5階の休憩コーナー。

「やっぱり同時に返してきたね」

仁美がいたずらっぽい目でカオルに言った

「予想通りでしたね」

カオルも同じようにニヒヒ、といった目で返した。

「あー、行きたかったなールミのライブ」

仁美がいうと

「そーですねー」とカオルも受ける。

「でも私は楽屋には顔出しずらいです」

苦笑しているカオルを見て、ちょっと考えたあと

「まぁそうだよね。ルミはともかく立場的に難しいよね」

と、持っていた水のペットボトルを開け、一口飲んだ。

「まだホタルに会わせる顔がないです。せめて私も同じ場所に立ってからじゃないと」

「そうだね」

カオルも汗をタオルで拭きつつ、もっていた水を一口飲んだ。

「私たちも負けていられないね」

仁美の言葉にカオルは「はい」と強く返事した。

「さ、休憩おわり。行こう」

「はい」

二人は立ち上がり、その場を後にした。


カオルはガルランラストライブ前に宣言していた通り、新生ガルランのオーディションを受け、合格した。

オーディションの参加者は実に30名を超え、その中から一次二次と審査を経てついに最終の5名の中に残り、実力で掴み取ったのだ。

そして、その合格者5名の中に仁美もいた。

仁美は最後まで解散後の身の振り方を保留にしていたのだが、応募締切直前に応募を決めた。

それは彼女自身の夢を捨てたくない、という思いもあったが、自分が続けることで早苗や望に「帰る場所」を用意しておこうと考えていたからだった。

またいつでもこっちの世界に戻ってこれるように、私はここにいて手を差し伸べよう。

仁美はそう考えていた。

それには仁美はガルランであることが必要であった。

仁美自身にもガルランが必要であった。

仁美の中には、ガルランの全国ツアーが始まった時から自分が何も貢献していないことを気にかけていた。

出発直後に車をぶつけたり、望を説得するといってライブを休演して、結局脱退の後押しをしただけだったり、気持ちと結果が噛み合わなくて、それがずっと心残りでいた。

だから早苗が感じているものとは違った意味で仁美はガルランへの執着と後悔があった。

だから敢えてガルランを選び、実力で勝ち残った。

タガミに落とされるだろうと覚悟はしていたが、タガミはオーディションの全てを公開とし、そして審査基準の殆どをオーディエンスの支持に依る方式にした。

そのように公正に行った結果での合格だった。


仁美もカオルも知らないことだが、実はこのような審査方法にしたのはイツキが絡んでいる。

イツキはタガミの誘いを受ける条件として、新生ガルランのオーディションは全て公開とし、審査員は一般の人たちにしてくれ、と。

その気になればタガミに言って二人を無条件に合格にすることも出来たはずなのに。

「それでいいの?随分と薄情なのね」というタガミに対し

「あの子達は実力で勝ち上がれますから、不公平があったと後で言われないようにしたいんです」

そう言うイツキに対して

「ふぅん。ま、いいわ。私は別に誰がメンバーになったって関係ないから」

「それはどういうことですか?」

「新生ガルランは私が担当するわけじゃないから」

「え?」

「他の人が面倒見ることになってるの。もちろん自分達でプロデュースといった肩書きはないわ。あなた同様、一から鍛えて世に送り出す。そういうプロジェクトなのよ」

「プロジェクト・・・」

「あなたもその一人なのよ。ソロプロジェクトのね」

そこまで大きな計画で動いているとは知らなかったイツキは自分がこれから飲み込まれる渦の大きさを考え、身震いした。

「まぁ、私はモンスター娘の面倒を見るからって降りたし、これがあなた達に関わる最後の仕事なのよ」

やっと全容を言い終えたタガミはスッキリした表情であった。

「あなた達には辛い思いをさせて済まないとは思っているけど、この業界では結果が全てなの」

「タガミさん・・・」

「私を恨んでもいいけど、そういう面は必ずあるんだと肝に銘じてほしいわ。わかってくれると嬉しいけど」


そういった理由でオーディションはオープンとなったのだった。

そして新生ガルランはデビューを目前に控え、猛練習の毎日だった。