熊川哲也の「ドン・キホーテ」
それはバレエという枠を越えて、オペラか舞台であるかのように能弁なバレエ世界の構築であった。バレエには台詞がない。かわりにマイムで表現していくのだが、なんと豊かな表現力であろうか、いつの間にか私は前のめりになって夢中で「ドン・キホーテ」に魅入られていた。
特に熊川哲也のバジル。
熊川哲也のFANであることを抜いてもこれはキトリが惚れるだろうというほど魅力的だ。バジルという役に命を吹き込んでいる。ともすれば彼の技術だけが評価されがちであるが、なんのなんの立派に役者でもあった。
そして今回の「ドン・キホーテ」の一風変わり様といえば。
黒を貴重とした独特なデザインの衣装はオペラのようで、舞台美術もスペインの街並みを非常に良く再現していた。特にドンキホーテが風車に向かっていくシーンなどオリジナリティがあり楽しませてくれる。
随所随所に散りばめられた各キャラクターの愉快な動きや表現がよりこの舞台に命を吹き込み、それが観客にも伝わってくるようで、客席からの笑いや拍手も見事なものであった。

2年ぶりくらいの【K-BALLET COMPANY】の舞台。
以前見たときは熊川、その時はヴィヴィアナ、以外とのレベルの差にびっくりしたものであったが、年月は無駄ではなかったらしい。
全体としてこれだけのレベルまで上げたのだから、熊川は指導者としても優秀であるようだ。

それにしても、やはりバレエは素晴らしい。
この一瞬の総合芸術は、映画を生でみるようなものなのかも知れない――と思えるほどの楽しい時間であった。

by sai