柳広司『パンとペンの事件簿』。
連作推理小説のつもりで読み始めた。
もちろんそれもそうなのだけれど、明治時代、大逆事件後に弾圧された社会主義者たちの静かな戦いを描いた物語であること、登場人物が実在することに気づいて、背筋が伸びる。
思想の弾圧、ダメ絶対。
わたしには特段の主義主張はないけれど、好きと嫌い、納得できるできない、受け入れられる受け入れられないの基準は、比較的はっきりしているほうだと思う(それなりに大人なので滅多に口には出さないが)。そこがわたしのアイデンティティなのに、自由に考えることが許されなかったら、自己肯定感をどうやって保てばいいのだろう。
「売文社」を立ち上げて、多くの社会主義者の灯台になり続けた堺利彦の凄さがわかる…。
柳広司さんなので、小説としても秀逸。
文章は読みやすいし、登場人物もそれぞれが魅力的で違和感はないし、ともすれば暗い雰囲気に飲み込まれそうなテーマを軽快に描いているし、ラストも良い。
とても面白かった。
やっぱり好きな作家さんだ。
新刊を調べたら、児童書!で『カラマーゾフの兄弟』のオマージュのような本が出ている…!なにそれ、面白そう。読まなくては。