年上女性のOさんと登山に行ってきた話。
新幹線で来たOさんを車でお出迎えからのスタート。登山口までの車の中は、もちろんギクシャクしていた。
この日が来るまでの彼女とのLINEのやり取りは本当にめんどくさかった。彼女は自分の事しか頭にない。Oさんの行きたい場所を毎回私が拒否してからは、もうどうでも良くなってきて私の方が返す言葉が冷たくなっていた。それは彼女も感じている様子だった。
旅行気分の彼女は登山以外に、回りたい場所が何箇所もあった。どこか一つは回りたい様子で、「登山は修行」と何度も何度も言う割にはどこか楽観的だった。
私に無理だと言われていても彼女の中では「行けるのに」という不満がやり取りだけでも見えていた。
そして当日久々に会った彼女の態度は、今日の予定は自分が我慢して折れた日程よ、、、そんな感じが全面に出ていた。誰の車で向かうと思ってるんだろうか???
そんな私たちのスタートは、最初から予定通りにはいかなかった。まずは行き道の高速道路で渋滞。車が微動だにしない。ナビは高速道路から降りて一般道を指示してきた。
迷った挙げ句、彼女に相談して一般道を選択。これで予定より1時間オーバーしての登山口到着になった。私は下山の時間が心配になったけど、これを口にすると彼女の不機嫌さがあらわになってめんどくさそうだったので黙った。
ようやく登山口につき、ルンルン気分になっていく彼女。いざ登山が始まるとさらに意気揚々としていた。でも一方の私は、登山の途中で頭痛が始まり胃が痛くなってくるという最悪な状況だった。水分補給の間に薬を飲んで、どうにかごまかしていた。
3合目過ぎたあたりからは道幅がより狭くなり、岩肌でてきた。ひとつひとつの段差の積みさねが体力を徐々に奪っていってたと思う。蒸し暑くて風がなかったし、過酷だった。最初は元気だった彼女も顔色が悪くなっていることが分かった。血糖値が下がってるかのように顔が青白かった。保冷剤で冷していたキャラメルを2粒渡した。そうすると彼女はみるみる元気になった。
そして9合目。
この時点で冷や汗がでてきていた私は、離脱することにした。
下山する体力も、帰るために車を運転する体力も残して置かなければならなかった。下山後に温泉に行きたい彼女の希望もあったし、そこまで運転する体力とプラス彼女を駅まで送り届ける体力まで考えると無理だった。明日は明日で動きづらい程の体力消耗は避けたかった。
私だけ先に下山して、彼女には頂上を目指してもらった。
彼女と離れてしばらくするとつきものが落ちたかのように身が軽くなって、体調が良くなっていった。山を降りるのも足場が取られるから、かなり体力を奪われるのに不思議だった。
彼女から離れた事で身が軽くなった自覚があった。体調不良を私は彼女とのストレスだと感じていて、彼女からは「山の神様から帰らされたんだと思う」と言われた。この意味は「あなたは来たら駄目だって言われたのよ」だ。
自分が悪いとは一生思わないポジティブシンキング。この人は1人でも生きていける気がする。
登山口のゴールが見えたとき、あの場で下山してほんとに良かったと安堵した。頂上に行かなくて正解だった。
頂上まで登りきれなかった悔しさより、彼女と離れられたことへの解放しか私にはなかった。
それから1時間半後、彼女が戻ってきた。
彼女は山に落ちていたゴミを持っていて「ゴミを捨てたいっちゃん」と言ってきた。ゴミ箱はすぐそこの目立つ位置にあった。自分がきつい中でゴミを見つけ出せるのもすごいし、それを拾って帰るのもなかなか出来ることではないと思う。
ただ彼女はゴミを見つける度「あっゴミがある」「持って帰らないと」と必ず私に分かるように伝えてきた。そして彼女はゴミを拾う事を「陰徳だから〜」と言う。
登山を開始する前に、近くの神社に参拝したとき1羽のヤマガラが降りてきた。「鳥がいる」と彼女に伝える。お賽銭するとき、隅にちょこんと居座るカマキリがいた。「カマキリがいる」と彼女に伝える。
気づいていなかった彼女は「良かったね〜、今度は見れたじゃ〜ん。」と私に言う。
彼女がいうところの神社で見る動物は神様の化身らしい。
以前彼女と神社へ行ったとき、彼女はヘビを見ている。私は見ていなかった。今でもそれを得意げに話してくれる。彼女はいつもそう。自分には見せてくれたんだ、みたいな言い方をする。目に見えない何かが自分には特別に。自分だから自分だけがという表現がある。
登山中彼女は、今まで自分が登ったことのある山の方がきつかったとしきりに言っていた。
現在進行系で登っている今の山がキツくなればなるほど「あの山より楽っちゃん」と。彼女が自分自身に言い聞かせてるみたいだった。そして「山は修行」で「登らされてる」と何度も言っていた。以前の登山は「13時過ぎに登ったっちゃん」って武勇伝のように言ってた。
「Oさん、猛者ですね」と私が言うと「だってこっち西やろ〜。言ってもまだ陽が長くて全然明るいやん。」と返してきた。お盆過ぎてから、だいぶ日の入りは早くなっているのに。雲を見ると色んな形で例えてくる彼女は
、太陽の光には関心が無いのかしら?
あの感受性は彼女の一方的な解釈でしかない気がしてくる。とりあえず登山中でも彼女はよく喋ったの。
無事に2人共下山ができてたのは、16時半を回った頃だった。私は15時だった。
10時47分に山に入って下山は16時半過ぎ。
正直山の中はところどころ暗かった。14時半に9合目から下山していた私でも暗いと感じる場所がいくつかあった。木々で光が入ってこない場所があったから。彼女が降りてきた時はもっと暗いと思ったはずだ。
下山後に行きたい場所をピックアップしていた彼女だったが、そのことは無かったことの様に「もうクタクタやん」「足が棒やん」「やっぱり登山は修行やね」と言っていた。「だから言ったでしょう」とは言わなかった。もう面倒だったから。
温泉に向かう車中では「この山はキツかった」と彼女の本音がでた。
温泉に入ってご飯を食べ後に関しては、彼女から「もう、登山の修行はいいっちゃん」と弱音までも出てきた。
なんてテキトウで期間の短い修行だろうか?
彼女から言わせると修行をしなきゃいけないのは何度も生まれ変わってるからと言う事だった。だから集大成なんだと。まるで自分が他の人より物事をよく分かってるかのようだった。
登山後の自分の体力消耗具合も想像がつかないのに?
移動距離からの逆算もしないで、1日の計画を立てとようとするのに?
私からすると修行も何も、毎日登山の為に基礎体力を作ってるわけでもない彼女が「都合のいい解釈だな」としか思わなかった。「1日ってあっという間やね」という彼女。考えればわかりそうなことだろ。1週間前の彼女自身に聞かせてやりたい。
さすがに私も「登山で1日の大半は持っていかれますもんね」と答えてみた。いやみだ。そこに移動時間が乗っかるんだから、あっという間になって当然。だからといって直接的に彼女のことを攻めるわけでもない。
帰りの車内で彼女は、若干のいびきをかきながら爆睡していた。
彼女の朝は早かったはずだから、そりゃあそうなる。ほんとにどこをどうやって、登山後に別な名所を回りたいと思ったんだろうか?
移動するのに1時間も2時間もかかる場所をよく選択出来たなと思う。何回人間やってきての修行なのかしら。集大成ならもうちょっとその辺は器用なんじゃないかしら?
彼女の気持ちの若さは20代前半だと思う。
でも体は違う。彼女の歳まで自分と過ごしてきたなら、少しはその身体を理解してもらいたい。
なんたって彼女が今回本当に決行したかった予定の中には、登山をした後に県内の名所を回りその足でまた新幹線に乗り、日をまたいで別な神社へ行くことだった。有名な神社に。
私はそれを聞いたとき、彼女の中では登山がメインじゃないなと思った。「Oさんの中で優先順位が違うなら、今回の登山はやめましょう」って言ったのに。「違うとよ〜」って言ってたな。
最終的に行きたい神社の前に、流れを作りたかっただけにしか見えなかった。彼女の過密スケジュールでいくと、登山を終えて16時10分には駅のホームに帰れるかしら?って言う頭の中だった。その前に温泉にも入りたい時間を考えると4時間半程で登山を終えなきゃいけない計算だった。あり得なかった。
彼女から「16時10分に帰れそう〜?」ってLINEが来た時にはブチ切れれば良かった。続けて「温泉にも入りたいっちゃんね〜」なんて言葉を見なくて済んだのに。
そこで私に「本来の目的が分からない」と言われプンスカしていたのが彼女だ。結局は登山に集中する事にしたみたいだったけど、その時はもうこちらの行く気がなくなっていた。登山に行きたいと言い出したのは彼女なんだから目移りしてるんじゃねーよ。ってな感じだった。
今回の登山の中で、人の優しさがあったり「教えてもらってよかったね」の出来事が続くと、「陰徳やんね〜」「私は折れてばっかりいるから、こう言うとき助けてもらえるっちゃんね〜」と言っていた彼女。きっと私とのやり取りもこの中に入っている。今までの人付き合いの中で悪いのは自分自身じゃないと言わんばかりだった。折れるのはいつも自分自身だと彼女は言う。陰徳を積んでる自分だから、人からのフォローがこういう時にあるのよねってことらしい。
それはお互い様だろ。
何も掴めてない気がするのが彼女。
出会った時よりも更に掴めていない人になっている。目に見えない何かを否定はする気はない。それでもOさんみたいに「自分だけ」みたいになってしまう人がいるから、そういうのを敬遠する人達がいるじゃないのかしら。
最近急に感覚的なことに力を入れてるけど拗らせていて面倒な人にしか映っていない。今はね。
帰りは「新幹線で爆睡して降りそこねるかもしれん」と言っていたので、彼女が降りたい駅が終電になる新幹線の便を聞いて、それに間に合うように帰った。
乗車時間ギリギリで駅まで送ることになったから、登山靴を車に忘れて帰る彼女。
次の日彼女に靴を送った…。
喧嘩別れはしていない。
とは言ってもギリギリのところだったと思う。きちんと言えたほうが良かったのかもしれないけど。どこかの誰かの行動で勝手に知ってほしいなとすら思う。
私も彼女と距離をおいて気づくことがあるかもな。
ここまでの縁はあった。そして今回彼女は頂上までたどり着けたし。彼女のひとつの目標は達成されてる。そしてこれはインスタグラムの一つの投稿ネタになるんだろう。これでもうリセットなのよ。
アテンドはここまで。
「靴を送ってくれたんやね〜」だの「疲れてないって細胞が若いっちゃね〜」のLINEのやり取りは続いてるけど。彼女のLINEには語尾に必ず 〜 この伸びがつく。
そして彼女の次の修行は「富士山に登る」らしい。昨日の言葉はどこに行ったんだ?
彼女からは1人は心細いから誰かを誘いたい、そんな雰囲気が伺えた。
私は「Oさん、登山の修行はまだ続いてるんですね。無理せず登ってくださいね。」と距離を置いた。
フェイドアウトです。
