迫る大型台風

朝から
台風情報が乱れ飛ぶ

よい情報は
ひとつもない

テレビでは
大型台風の理由が
説明されている

そんなこと
知ったところで
なんにもならない



従兄弟は
片道1時間以上かかるのに
飛行場まで
車で送ってくれるという

電車の運行状況をみたら
お言葉に甘えたほうが
よさそうだ



従兄弟がお薦めの
空港近くの天ぷら屋さんは
台風のため
お休みと張り紙されていた



空港のロビーは
ひとが溢れている

私もそこに混じって
搭乗を早める手続きをする

従兄弟と
固い握手をして別れる

また
会おう!

アディオス、アミーゴ




搭乗口が急変し
ちょっとナーバスになる

大丈夫なの???


機内は
ひとがすくない


あのたくさんのひとは
どこに行ったのか?


みんな
キャンセルしたり
旅程を見直したのだろうか


CAさんが
非常時の救命具の使い方を
説明しているのが聞こえる

ことばが
よく聞き取れない

ただ
なんか
いつもより
入念に話してないか??



機体がゆっくりと
動き始める

機体の向きが変わったからか
急に
窓を大粒の雨が叩く

がたがたと音をたてる機体



いよいよだ

機体の離陸が近づいてくるのが分かる


いっきに加速し
唸る機体


ガタガタガタ…


ぎゅーーーーーーーん



Gが全身にかかり
両足にぐっと力を

ぐらつく機体

離陸したのか?!

う?!

なんか
右にすげー傾いてないか?


右の窓からの
陸の距離が近い!!!

堕ちる?!

うわっ
なんか
急旋回してないか!?

三半規管ぐらぐら
気持ちわる…

うしろの遠くから
赤ちゃんの鳴き声が聞こえてくる

大丈夫か?
トラブルか


いろんな情報が雪崩をうってくる


舌が渇いてる
のどが乾いている


パニックしそうなのを
冷静にならなくちゃと
自分に言い聞かせる

あわてるんじゃない
これは単に台風なんだ…


頭のなかで
お土産の辛子明太子とともに
ゆっくりと落下していく
そんな自分のイメージがよぎる

走馬灯が
辛子明太子なのは間抜けだ

ああ
カミサンに
辛子明太子を食べさせてあげたかった


従兄弟よ
万一のときは
カミサンに
お薦めの稚加栄の明太子を届けてくれ


めんたいこ、
温かいご飯で食べたかった

カミサン、
こんな自分と結婚してくれて
ありがとう…


いとこよ、
別れ際に
握手しておいてよかった

最期に
君と逢えて嬉しかった
親元を離れた土地で
すごく逞しくなった君と




なぜだろう

あたまのなかで
レディオヘッドの「ピラミッド・ソング」が
流れている



なにも怖くない…
なにも疑わなくていい…







いや、恐いよ
死ぬのはこわい
死にたくない


ここは
ジョン・レノンの
兵隊にはなりたくない、だろう??


俺、死にたくなんかない



なのに
なぜか
あたまでは
ベックのインストゥルメンタル
「サイクル」がずっと鳴りはじめている










ふと
我にかえる

機体、安定してる

窓のそとは
雲が広がっている

ああ、
もう大丈夫だ


ふぅ…



烏龍茶を飲もう…