気が付くと、リビングのベッドで寝ていた。
時間を確認すると3時過ぎ。
いったいどうやってここに来たのだろうか。まるで記憶がない。
よたよたしながら寝室に戻ると妻が目を覚ました。
「どうしたの?」目をつむったままいう妻に、いつのまにリビングで寝たのかなと聞いてみたが、わからないというそばから寝息を立てはじめる。
次に目を覚ますと5時半だった。7時に起きようと思っていたので再び目を閉じるものの6時にセットしてあった妻の目覚ましでまた起こされる。7時15分に起きあがって、洗面所にいくとトップレスの妻が化粧をしていた。
いやだ、とせりふのような抑揚のない声をだし胸を隠すそぶりをするも、隠しながら化粧はできないので、結局乳房はまる見せの状態になる。
「おっぱいがデフレするから服をきて」
笑うばかりで対応しない妻に、あきれながら俺は口をゆすぐ。
夕べ妻が帰ってきたのは23時前だった。
自分で食べようと思って買ってきたセブンイレブンのハンバーグとサラダを作ってあげると喜んで食べていた。
俺はビールを飲みながら、会社の愚痴、障碍者施設での事件の話などをひとしきりして、2本目のビールが空いたので寝ることにした。
隣に寝た妻は手を握ってきた。
今朝までのことなど何もなかったようにしている妻は、どこか現実感がなかった。記憶の塊をきれいに切り取られているような、というと正確ではない。同じ人間だと思えないのだ。
朝の駅。二人で電車に乗る。
「夏休みどうしよっか」言った俺に、9月ならとれるかもしれない、と答える妻。
先のことなんて何一つわからない。
確かなことは、今朝はちゃんと起きておむすびを作り、一緒に通勤しようといった言葉を守ったことだ。信頼関係というのは言葉ではない。
夕方、結局食べれなかったおむすびをあけると猫の絵の描いたメモ用紙に「すきです」と書いてあった。署名入りで、またぞろ現実感を失う。