moominの“かけがえのないもの”が、部屋を張り詰めたオレンジ色に染める




この日は、23時からBARで友達と飲む予定で


それまでの小時間を”ブラックホールの”元カノの部屋で過ごすことにした


仕事が終わり、シャワーを少し長く浴びてしまい、慌てて服を選ぶ


合わせようと思っていたシャツがみつからない


同居人に洗濯中か尋ねると


「私はあなたの母親じゃない」とそれだけ冷たい返事が返ってきて


同居人は仏頂面で寡黙にテレビを睨み付けている


服の鉱山の採掘をするように、適当な服を引っ張り出した後は


カラフルなジャンクマウンテンができあがっていた


このままでは、しわや折り目だらけになってしまうだろうが


散在に積まれた山の上に、一枚の大きな布をかぶせた


これでジャンクマウンテンはラスタの国旗だ




元カノの家に遅れて到着すると、待ち合わせていた友達が予定より早く到着し


彼女の許可で部屋に招き入れた


友達のうちの1人は俺が無理くり参加させたような形だったので


彼女は俺の代わりに彼に謝った


ぎこちない会話はワインが埋めてくれて


少しして、部屋を出た


頼んだら、BARのあと朝まで付き合ってくれるようだ




BARでは年の倍くらいのおじさんと肩を組んでうたって


ママの娘とくだらない会話をし


男同士、グループの方向性などを語った


”カラス”のボトルを空けるころには閉店で




3時半、元カノからメールを着信した


『私の前から消えてほしい』という内容だ


どうやら、部屋で友達がいるときに何か傷つけることを言ったらしい


俺にはそれがよくわからない


それは、俺がかわいそうで仕方なく、くだらない人間と関わってしまったという程だ


流れる必要もないのに、この手の感情をぶつけられると胃酸が走るのは何故だろう


そのあと、郵便ポストから荷物を回収し


ジョナサンで最後の電話をした


酔っていて覚えていないが、20分くらい話していた


20分も彼女の言いなりになり、弁解していた自分がいる


これは性分なのか


最後にさよならをいい、感情的に電話をバッサリ切られたのを覚えている


そのあと気持ち悪くなり、トイレに閉じこもった





始発の時、状態を案じてくれた友達の一人がマックに付き合ってくれた


しまった携帯をなくした・・・


断ってもそばにいてくれた友達に感謝、やはりジョナサンに置いてきた


友達は『去るもの追わず来るもの拒まず』の精神をオブラートに説いてくれて


喪失感という執拗な執着に囚われていた俺を救ってくれた





その足で仕事までtina(彼女)と会うことにした


この間一緒に買ったアローズグリーンレーベルのセーターを秋マフラーと合わせ、うまく着こなしている


すっぴんにまつげエクステ、この後化粧の講習を受けに行くそうだ


俺を気遣って寄り添ってくれる


漫画喫茶でDVDを見た


くっついていてもtinaといて孤独と不安を感じる


それでも、これほど安心して付き合える女は初めてだ


芯がしっかりしていて、俺には過ぎた女なのかと無意識に敬遠しているのかもしれない


良い女であるほど、俺がそれに伴っていなければ付き合い続けられる保証がなくなる





家に帰ると、同居人はいなかった


机の上に置手紙


『俺とは幸せになれない求めているものが違う、そして友達でいよう』と


3年半一緒に住んできて


愛しあって


重い秘密も共有して


たくさんキスをして


何よりも大切にしようと自分に誓ったその女を裏切ったのはこの俺だ


『去るもの追わず』の理屈もあたはまらなかった


頭の中に笑顔ばかりがながれる


あんなに無垢におどけて、満面の意味だ


悲しさ?なんなのかわからないこの感情を対処できなくなって


同居人のかわいらしい服に唇をあてた





心の穴を埋めるためPCを起動させ、日記を書いて整理する


その時偶然かっかたのがmoominの『かけがえのないもの』


俺は本当に大切にしなければいけなかったものを


またしても俺の過ちによって失った


崩れたバランスをとるためtinaに傾けば


2人のバランスも体制を崩すだろう





同居人のことは自分の命と引き換えにでも守りたいという感情がある


それなのにtinaにそれはなぃ


俺は何をやっているんだろう


思考、行動、意識、罪、欲、愛、全て大きな布で覆い隠したい