歴史と外交のしがらみに悩まされる例は日韓だけではない。1979年2月、メキシコを国賓訪問したカーター米大統領も、ポルティーヨ同国大統領夫妻との公式昼食会で有名な大失敗をやらかした。
乾杯の挨拶でカーター氏は、かつてメキシコを訪ねた際にひどい下痢に見舞われた思い出に触れ、「モンテスマのリベンジ(仕返し)にやられました」と述べたのだ。
モンテスマは、スペインに征服されて悲憤の死を遂げた16世紀アステカ帝国の皇帝だ。メキシコで欧米人旅行者が下痢をすると、俗に「皇帝の仕返し」と呼ばれるのは、この歴史に基づいた伝承だという。
だが、アステカの血を引くメキシコ人が言うならまだしも、外国人には言われたくないとの気風もあったらしい。ましてや相手はテキサス、カリフォルニアなどの領土を戦争で奪い取った超大国の親玉だ。
カーター氏の発言はアステカ文化をあなどり、途上国を見下す「上から目線」と曲解されてしまい、「メキシコをばかにするな」「ヤンキー(米国人の蔑称)発言」などと地元メディアにたたかれた。
ポルティーヨ大統領も「国家への敬意を払ってほしい」と不興を表明した。移民規制改革やエネルギー協議なども行き詰まり、国賓訪問はさんざんな失敗に終わったという。