
5月に入ってからは、1日が今期予想PER16.1倍(前期実績19.6倍)、2日が16.1倍(19.7倍)、7日が15.7倍(19.1倍)。3月以降、19倍台というかなり高い水準だったものが15倍台まで下がってきている。米国のダウ工業株30種が予想PER12.4倍(前期実績14.4倍、いずれも7日現在)、S&P500種指数が13.2倍(15.9倍)だから、国際比較ではやや割高だが、ま、いわば日本株の定位置といっていい水準だ。
PERという指標は株価÷1株利益で計算するが、これを株価÷PERで弾けば1株利益が算出できる。5月7日の日経平均9119円14銭をPERの15.7で割ると、578円25銭が1株当たり利益として導き出される。前期実績475円45銭との比較では31.6%増。つまり、今期は21%増益が見込まれているというわけだ。
このPER計算の基礎になる前・今期の予想利益は会社側予想がベース。日経新聞社は225採用銘柄が決算を発表するたびに、実績・予想数字を差し替えて再計算しており、この先、決算発表動向によってはPERも変化する。当然ながら、会社側が発表する数字が慎重だと、今期の予想EPSは低水準なままだし、PERは低下しない(株価が下がればPERは低下するが…)。
今週はトヨタ、ソニー、パナソニックなど注目企業の決算発表が相次ぐだけに、日経平均の1株当たり利益が上昇してPERが低下するかどうか、それがこれからの焦点になるだろう。株価指標として並べて注目されることが多いPBRは7日現在で0.99倍。1倍を割り込んでおり、もう下げ余地があまりない水準まで届いている。
逆に、株価の修復にはPER面での割安感が注目されるかどうか。大事なのはそこのような気がする。「期初に発表する数字は慎重になりやすい」というのが大方の経営者心理。それを覆すような状況が現れることを期待したいが…。ちなみに、昨年のケースでは、決算発表がピークを越して予想PERが15倍台で落ち着いた5月下旬には中間反騰のような動きが出ていた。
今年も連休明けは欧州問題一色の市場となってしまった。ただ、フランス、ギリシャの選挙結果はかなりの部分、想定の範囲内。実際、週明けの欧州市場は新政府の組閣ができるかどうか危ぶまれているギリシャ(アテネ総合指数が▲6.6%)を別にすれば、ドイツもフランスも、そしてスペインさえも株式市場がプラスで終わっていた。
残念ながら、日本株だけが「年初来、最大の下げ」という反応。フランスが17年ぶりの社会主義政権、といってもミッテラン政権十数年の功罪を踏まえてのものであり、日本の民主党政権と比較するのは筋違い。ドイツとの関係調整などは時間がかかるだろうが、これで枠組み自体が崩壊するようなものではないこと、それは頭に入れておきたい。
3日の日経新聞が伝えていたように、12年3月期決算が全体で2割減益に落ち込むなか、数で1割の企業が過去最高利益を計上するという現実は見逃すべきでない。裁定取引の影響を受けやすく、株価の回復にも限界がある主力銘柄は避けたいが、小型・出遅れの好業績株をうまく狙っていけばいいだろう。
大証2部の遠藤照明(6932)が凄まじい増額修正を発表した。前12年3月期の連結営業利益見通しが41億4000万円(前期実績比8割増)。百貨店、ショッピングセンターなどの商業施設向け照明では業界トップを誇り、海外でも名を知られた存在。特に、最近では省エネ照明として脚光を浴びるLED照明にシフト。それが成功して受注が急増している。
アナリスト予想を平均化したQUICKコンセンサスによると、12年3月期営業利益は39億円(今回の増額修正でこれを上回った)。今13年3月期は53億5000万円(ともに最高利益更新)-このアナリスト予想数字も驚異的な伸びだが、前期の伸び率から考えると、今期はこのアナリスト予想すら上回る水準があっておかしくない。
焦点は今期の業績見通し。決算発表は11日に予定されており、そこで今期予想が明らかになる。会社側が慎重姿勢に立つことも考えられるが、発表前の「今期への期待」で買っているうちが相場的には最も華やかになりがちだ。