想定外の出来事の連続で痛めつけられた2011年相場。 寒々とした光景は、東証アローズで否応なく体感できる。
黙々と回り続ける金魚鉢がその象徴だろう。
でも「明けない夜はない」。
「朝の来ない夜はない」。
そして「下げ続ける相場も上げ続ける相場もない」。
ここが体感できていないかどうかは別にして、海の向こうから聞こえる幻惑の声に一喜一憂。
売買高が少ないのは投資家さんが減少した訳ではなかろう。
理由はただ一つ。
「動かない、儲からない」。
ということは、「動き始めれば、参加者は増加する」。
そのタイミングはおそらく日経平均の75日移動平均線が上向くと予測される1月第3週あたりだろうか。
今週は03年以来の東証1部売買代金5000億円割れ。
日経平均の日中値幅は30円。
何もかも少なく薄い。
結局起きたことは「仮儒が消えて実需のみ」。
言葉を替えれば、現実の裸にした東証の売買エネルギーはこれしかないということ。
動きが鈍いから参加者が減少し、その結果また動きは鈍くなる。
マーケットは仮需があるから繁栄するもの。
その仮需を醸し出す意味でいろいろなストーリーやシナリオが登場する。
仮需がないからシナリオも曖昧模糊。
曖昧だから参加できない。
言ってみれば悪循環。
トレンドが出てくれば雨後のタケノコのようにエネルギーが湧出してくるのだろう。
今は、むしろ蜘蛛の子を散らした状態と考えたいところ。
かえすがえすも日経元旦の「前例なき時代に立つ」の見出しは結果的に印象的だった。
地震・津波・放射能・円高・EU財政危機、タイ洪水・・・。
「絆」という言葉は美しい。
しかし、それほど助け合わなくてはならない状況ということも間違いない。
状況は決して好転してはいない。
しかし見えないフリであろうとなかろうと、忘却の成果であろうとなかろうと、
一歩前進半歩後退でなければ進まない。
ある中央銀行OB氏のコメント。
「明治維新では封建国家から近代国家に生まれ変わった。
敗戦では全体主義から民主主義へと生まれ変わった。
危機をばねにしてきたことが歴史。
今回はたかりの政治から脱却して中央集権から地方分権へと生まれ変わる可能性」。
その一里塚にしか過ぎないが、一応節目の大納会。
今週の取材の中から来期への萌芽を2件。
ひとつはコムチュア(3844)。
12月26日にテクノレップス・ジャパンの全事業の譲受を決議した。
要はM&A戦略の一環。
ITサポートサービスなどの事業の拡大に走る方向を表明した。
ただ、プレス発表からこの先はなかなか読み取ることが難しい。
実際に話を聞いてみると・・・。
譲渡されるテクノレップスは金融系のシステムが多い。
また対ドコモ比率も大きい。
相乗効果で業績に対する寄与度も大きいと見られる。
コムチュアが追求してきたクラウド分野の売上高。
同社の向会長によれば今期が前期比2.3倍の見通し。
来期は今期比2倍の見通し。
世の流れがクラウドに向かっていることはさやかには見えない。
しかし現場では明らかにそのトレンドで物事が進んでいる。
特にクラウドモバイルの分野で富士通の取組はかなり積極的と聞く。
さらに新分野としては復興に絡んでの「スマートシティ」計画。
こちらは特にIBMが積極姿勢を取っていることは伺われる。
そして金融関連での来期以降のシステム投資の拡大見通し。
足元は「動かない」の嘆きの声。
しかし、現場は間違いなく走っている。
遅れているのはマーケットだけかも知れない。
もうひとつはオプトエレクトロニクス(6664)。
同社は自動認識装置の開発・製造・販売が主力。
要はバーコードのスキャナーである。
埼玉の西川口と蕨の間の本社に行って驚いたのは、その威容。
西洋の古城の雰囲気を漂わせたオフィスは近隣からも注目されているという。
聞けば、耐震・免震構造が施され、東日本大震災でもビクともしなかったの話。
ゆったりとした空間はその辺のリゾート施設よりも立派。
百聞は一見にしかずという印象だった。
興味深かったのは、同社の志村会長のコメント。
「アナログでは10年かけても一人前に育たないことがある。
しかしデジタルの世界は3年で一人前。
要は経験が役立たないのがデジタルの世界。
あっという間に世界標準に追いつきリードすることが出来る。
だから新興国の企業でもデジタルの世界では成功することは可能ということ。
潮流の変化をうまくとらえることは必要になるという意味では全員にチャンスがある。
デジタルな世界をどう使いこなすか、どう変化に対応するかの世界。
これは面白いし、ベンチャーも大企業も関係ない。
スタートラインは同じということになる。
というよりも大企業の動きの鈍さが目立つ」。
デジタルの世界ではベンチャーこそ有利ということであろう。
因みに同会長はカシオの出身。
「カシオが電子時計に進出できたのは、大の月と小の月をきちんと区別できたこと。
従来の時計メーカーにはその発想がなく、アナログ機能をデジタルに転換しただけ。
当時カシオだけがこの機能を持ったので時計店の流通業界が採用してくれた」。
と言いながら「勝てば官軍でしょう。
ソニーのウォークマンだったいろいろな逸話があるけど、たぶん後講釈。
成功したからこそ逸話が出来る。
世に出ない製品の逸話はほとんど聞かれないでしょう」。
結論は「変化にチャレンジ」ということに他ならない。
もう一つは「マーケッティングではモノは生まれない」。
マーケッティングで選ばれるものと実際の購買活動には差異があるという。
「いろんな色の携帯電話があるけど、買われるのは大抵白か黒かグレーでしょう。
あったら面白いというのと、これが買いたいというのは違うんです」と同会長。
妙に納得。
現在注力しているのは「エコロジカルESLシステム」(電子棚札)。
使用領域はスーパー等小売業。
POSと現場の価格不一致、本部と各店舗の価格不一致、現場での値札替えの効率化。
これが可能になるという。
しかも電池寿命は7年、1万台分を数分で書き換え可能。
国内、そしてアジアでの活躍が期待できようか。
歌舞伎の松本幸四郎の「私の履歴書」。
明日で最終回。
マーケットインパクトはほとんどなかったが、深い印象が一つ。
それは終始「お客様」という表現が貫かれたこと。
上場企業のトップの履歴書などでは、ほとんど「客」あるいは「お客」だった記憶。
歌舞伎が廃れないのはこんなところに理由があるような気がする。
証券界や金融界のトップはどういう表現をするのだろうか。
些細なことかも知れないが、この気持ちは大切。
スケジュールを見てみると・・・。
30日(金):大納会、ブラジル・韓国市場休場
2日(月):東京市場休場、米国・英国・カナダ休場、
3日(火):東京市場休場、米ISM製造業景況指数、中国製造業PMI
4日(水):大発会、米製造業受注、新車販売、ユーロ圏消費者物価、
5日(木):12月マネタリーベース、米ADP雇用統計、
6日(金):決算発表(セブンアイ、イオン)、米雇用統計、ユーロ圏小売売上高
週末:インド・オートエキスポ、大河ドラマ「平清盛」放送開始。
マーケットでは建機リース大手のカナモト(9678)や建設現場の施工管理技術者派遣大手の夢真HD(2362)など復興インフラ整備関連の銘柄が動兆。一方でTPP関連と目されるヨコレイ(2874)や農薬大手の北興化学(4992)などにも食指。
「名月や月は東に日は西に」(蕪村)
「マーケット、日は東から月は西」(読み人知らず)。
良いお年を・・・。