アメリカという国そのものに対する格付け判断であり、
債券であるアメリカ国債という、
アメリカ政府が最上級に返済義務を負った物に対する返済不可能性が高まったということではありません。
従ってこの変化によって強制売却させられるような年金基金とかは存在しないのです。
ここは重要です。今までも無格付けの米国債を買って来ているのです。
ですから、これで金利が上がり(つまり国債が売られ)
それに連動して住宅ローンや自動車ローンなど様々なローンの金利が上がってアメリカが大変だというコメントがアメリカの報道でもとても多いのですが、
直接的に金利が上がるかどうかは今回の格下げとは関係がない所で起きることになります。
アメリカ国内だけでみればアメリカ国債は
アメリカと言う国そのものが格下げされてしまった・・・
つまり全体で下がったようなもんですから引き続き「最上級」の投資先となります。
ですから相対的に危機を含むのは所謂 Quasi-Sovereign と我々が定義しているファニーメイ、フレディーマックなどの債券であることは間違いありません。
これを持っている事に不安をもって、
アメリカ国債に乗り換えることは十分にあるでしょうからそういったエージェンシー債券はピンチです。
(関係ないですが中国政府はこれを大量に保有、実は日本政府はあまり保有していません。)
また問題になっているMuni(地方債)も間違いなく売られる筈です。
アメリカそのものの格付けが下がるのですから、
地方政府はかなり不安、と考える投資家が増えるのは当然です。
今回の財政債務削減の動きでもこれは直撃を受けるのでこのセクターは要注意です。
実はここからアメリカ国債とアメリカ経済の動きを睨むキーポイントになるのは為替なのです。
国同士の強弱関係が初めてアメリカ国債の世界に持ち込まれる、と申し上げたらいいでしょうか。
参考になるのはこの欧州危機におけるドイツ国債の動きです。
一連の動きのなかでギリシア危機など全体の欧州危機の中で通貨としてのユーロが売られる時はドイツ国債が売られる局面も当然出てきます。
しかし先週からの「イタリア危機」ではむしろFTQでドイツ国債が買われる訳ですね。
他の債券よりも安全性が高いドイツ国債にユーロ内では(つまりユーロを保有している人々の間
では)資金移動が起きる訳です。
これが今申し上げたポイント。
しかしユーロ全体の価値が下がると言う事は本当はそれだけ返済負担が増える事になりますね。
(ユーロを刷って返せばいいと思われるかもしれませんが、
基軸通貨でも何でもないのでそれをすると凄まじいインフレに襲われてアルゼンチンの二の舞になる訳です。)
ドイツのように輸出依存度が50%近くもあるとユーロ安で貿易黒字が増える、
という考え方も可能かもしれません。
しかしアメリカはどうでしょう。
約14兆ドルある債務のうちの約1兆ドルずつを日本と中国が保有しており、
外国全体では5兆ドル相当、
つまり30%相当を保有しており、
この比率はQE2の御蔭で少し下がりましたがこの5年で見ると上昇の一途です。
既に買ってしまった国債はドルが紙切れになろうとももうどうしようもありません。
100万ドルは100万ドルでしか帰ってこないのでもう、
中国も日本も諦めるしかありませんね。
アメリカが勝手に印刷して返済してくれれば終わりです。
1ドル20円でも諦めるしかないのです。
これが基軸通貨の強みです。
しかし、今回の格下げで大幅なドル安が予測されるとなると・・・
今後折角買ったアメリカ国債の価値が自国通貨に比べてどんどん目減りする訳ですからこれまでのように諸外国が買ってくれるかどうかわかりませんよね。
つまり最近の入札で40%近くを落札している外国人勢がドル安を恐れてアメリカ国債を購入しなくなる・・・・・
というメカニズムを通じてひょっとするとアメリカ国債の金利が上昇するという可能性は否定できません。
あくまでもそれは為替と言うメカニズム、つまり外国から借金をしているという事が原因なのであって、
アメリカ国内での動きはあくまでもFTQに終始します。
このあたりはアメリカのエコノミストも間違って書いているのでハッキリ書いておきますが、
今の時点で一番怖いのは実はドル安なのです。
そして更にもう一歩進めるとアメリカと言う国はドイツのように輸出依存率は高くありませんし
「超輸入大国」です。
オバマ大統領が輸出にこだわっているのは恐らくこういったドル安になった時のバッファーを求めている、
ということは容易に想像できますね。
つまり今回の一連の動きでドル安になると一番困るのはアメリカ自身。
原油から何から何まで徹底的に物価高になり、
通常は金利を引き上げてインフレに対抗できる訳ですが、
この失業率、住宅価格低迷のアメリカ、QE2までやって緩和し続けているアメリカにその余力があるかどうか、かなり疑問が残ります。
私はある意味「ピンチ」を招いたと思っています。
そういう観点から見てみますと今回の日本政府の円売り・ドル買い介入は実は
アメリカの実情にも実によくかなっているということがわかりますでしょう?
つまりアメリカは急激なドル安に極めて弱い体質になっており一連の動きの中で見ると日本の介入は「大歓迎」という事実が窺い知れますね。
実はこういう所に原因があるのです。
事前にかなり日米間で調整していたフシもあり、
今回はかなり本腰で世界中がドル安を阻止しに動くかもしれませんから、
為替を商売にしている方はよく注意して決め打ちをしてポジションを一方向に傾けない事です。