与党では、菅直人首相、野田佳彦財務相のほか、自民党時代から増税論者で菅政権に鞍替えした与謝野馨経済財政相など、現執行部はほとんどが増税論者だ。野党でも、谷垣禎一自民党総裁などだ。彼らには、財務相経験者など財務省に近かったという共通の経験がある。それと与謝野氏が代表的であるが、「日銀の金融政策はよくやっている」と言い、デフレにも容認的である。
菅首相は財務相になる以前にはデフレ克服に積極的であったが、財務相になってからは熱心とはいえなくなった。与謝野氏は「インフレは悪魔」とまで言い、あたかも今のデフレでもいいかのような発言をしていた。
与野党でも若手の中には増税論者は少ない。最近行われた民主党内での社会保障改革論議で、和田隆志衆院議員、津村啓介衆院議員が増税派だ。和田氏は財務省出身、津村氏は日銀出身である。
こうしてみると、財務省と日銀の強い影響を受けた人物という共通項が浮かぶ上がってくる。
財務省と日銀は、財政政策と金融政策という2つのマクロ経済政策を担う組織だ。財務省の増税志向は本能とも思えるが、かつては「増税なき財政再建」など成長重視の政策の時もあったので、現在の幹部や一部OBの影響力だろう。
成長による税増収より名目成長アップで金利高による利払い費増を心配している。私からみると短期的な話で中期的には問題ないのだが、目先のことしか財務省には見えない。
また増税によって官僚の利権も生まれる。消費税の軽減税率が典型例だが、増税によって税率が高くすると、個別業界などへの軽減措置によって官僚の権限は高まる。財務省の本音はそれだろう。
また、日銀も増税を求める。財政危機というが、その原因のほとんどはここ20年間のデフレで名目成長率が低く、名目GDPが横ばいになっている。そのため税収は今なお1990年度がピークである。その一方で歳出は確実に拡大している。
しかし、日銀はデフレの要因が金融政策の失敗であることを絶対認めない。このため増税で財政再建するという話は渡りに船だ。
もっとも、財務省と日銀が増税路線であっても、それらの出身政治家が同じ意見とは限らない。心底信じているか、出身組織と同じ意見のほうが出身組織からの情報が得られるなどのメリットがあるからだろう。
増税を主張することで逃げていないという強い政治姿勢が見せられるという理由もある。しかし、経済成長やムダなどの歳出カット、埋蔵金の発掘など、増税の前に行うべきことがある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)