第三者割当増資をすると本当に株価は下がるのか? | ブー子のブログ

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 増資は、一株あたり利益が希薄化する懸念が高いということで、株式市場から嫌われがちだが、中でも第三者割当増資についてはディスカウント価格で株式を引き受ける投資家だけが得をして、一般株主が損をするイメージが強い。

■第三者割当増資をすると株価はアンダーパフォームするのか?

 ただ、実際にはいくつかの先行研究で明らかになっているが、第三者割当増資発表直後の株価は上昇する傾向にある。それではなぜ嫌われるのか。もしかすると、長期株価がマイナスになっているからではないかということで、第三者割当増資を実施後の中長期での株価パフォーマンスを分析してみた。

 今回、1990年から2008年3月までに東証1部上場の中から第三者割当増資を実施した企業と実施していない企業のそれぞれに対して、業種と規模で最も似ている企業をピックアップし、その企業と株価パフォーマンスを対比し検証してみた。

 その結果、実施した企業全体では実施後3年間にわたり5%程度アンダーパフォームするものの、いくつかアンダーパフォームしないカテゴリーも存在することがわかった。

 それは、①親会社や関係会社、それに経営陣などの内部者が引き受ける場合、②株式を引き受ける投資家との間でシナジー(相乗効果)が創出されそうな案件の場合である。これら2つの場合、株価はアンダーパフォームしない(しかしオーバーパフォームするわけでもない)。

■内部者による引き受けは株価に対するお墨付き効果がある

 内部者が引き受け手となる場合、2つの効果が考えられる。

 1つは、内部者は外部者に比べると企業について情報優位であるため、内部者は正しい株価についてより知識があると考えられ、内部者が株式を引き受けることは、その株価が適正なレベルとの保証と考えられることである。企業が自社の株価が割安だと思ったときに、自社株買いを実施するのと同じような考え方だ。

 もうひとつは、経営力の向上である。親会社は関係会社が引き受け手となる場合、それら親会社や関係会社は自社の株主への説明責任が存在するため、追加出資の妥当性を説明し、証明する必要がある。そのため、引き受け手は第三者割当増資実施企業の経営改善に向けて必死に取り組むであろう。

■ただし内部者の引き受けは内部者が一番トクをする

 他方、MBOでの批判でも見られるように、割安な株価を内部者が引き受けるという構図には微妙な問題も存在する。特に株価が下落した後に内部者が引き受ける場合、本来であれば株価下落の責任を問われるべきなのに、株価下落によって内部者が最も得をし、一般株主が損をこうむるという構図になる。

 実際、第三者割当増資実施する直前1年間の株価は、全体としてはアンダーパフォームもオーバーパフォームもしていないが、内部者が引受けをしたグループでは、年間でマイナス15%程度のアンダーパフォーマンスが発生していた。

 しかし、第三者割当増資実施後3年間は、アンダーパフォームもオーバーパフォームもしていない。これは、真の株価を知る内部者がタイミングよく引き受け、外部に対しては「これが適正な株価だよ」というメッセージ発信機能を担い、その後株価が安定推移するということが考えられる。

 この場合、一般株主は株価に対するお墨付きを得るというメリットを享受する。内部者が引き受けていなければ、そのまま株価は下がり続けたかもしれないが、それでも、事前に下がった15%分については、やや釈然としないかもしれない。

 ただ、いずれにせよ、過去の案件を元にした実証分析の結果からは、内部者による引き受けは、株価に対するお墨付き効果(保証効果)がありそうだということがわかった。

■シナジーが期待される案件は株価にプラスとなる

 シナジーに関しては、増資後に引受投資家が拒否権(発行済株数の3分の1以上)を有する場合と、引受投資家が1社のみの場合で検証してみた。これらケースは、他のケースに比べて引受投資家と第三者割当増資実施企業の間でよりシナジーを生みやすいと考えられる。

 検証の結果、これらのカテゴリーでは株価はアンダーパフォームしていないが、引受投資家の増資後持分割合が中途半端、あるいは、引受投資家が2社以上存在し、誰が企業の経営をモニターするかが曖昧な場合は市場から評価されない、という場合はアンダーパフォームしていることがわかった。

 内部者でも、親会社や関係会社が引き受けた案件の多くは増資後に拒否権を有するグループに当てはまるため、先に述べた内部者引受効果とシナジー効果は同じものを別の側面から捉えているともいえるが、市場は案件の明確な意義や目的を意識的に評価していることが分かる。

■業績も当初はアンダーパフォームするが、数年後には解消される

 最後に増資後の業績面でのパフォーマンスを見ておこう。

 増資を実施した年およびその翌年は、第三者割当増資実施企業の総資産営業利益率は未実施の類似企業を下回りアンダーパフォームすることがわかった。しかし、それ以降(増資後3年後までを検証)については、アンダーパフォームは見られなくなる。

これは、第三者割当増資が業績の悪化にある程度の歯止めをかけている可能性を示唆している。第三者割当増資がなければ、もっと業績が悪化しているかもしれないところを資本注入により食い止めているという可能性だ。業績悪化を食い止め、かつ、株価がアンダーパフォームしなければ、既存株主にとって第三者割当増資はメリットがあるといえる。

 以上、第三者割当増資については、近年わが国での扱いは悪玉論一辺倒であったが、今回の分析では必ずしもそうではないというカテゴリーが存在することが分かった。

 この結果は、第三者割当増資が依然として有効な資金調達手段である中堅、中小企業にとっては朗報かもしれない。しかし、残念ながら、オーバーパフォームするカテゴリーを見出したわけではなく、第三者割当増資に関しては、やはり市場、株主から厳しい評価を受けざるを得ないことも浮き彫りにしている。

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