東北関東大地震
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殆ど全てのアメリカの新聞、テレビなどが今こういう言葉から始まります。
All of my hearts and thoughts are with the Japanese today.
本日私の全ての思いは被害の最中にある日本人の皆様と共にあると申し上げた
いと思います。
本稿も経済メルマガでありますが、被害に遭われた東北地方にもたくさんの読
者がおり、この事実を書かずに始めるのはどうにも筆が進みませんので皆様に
お伝えしておきたい事を書いておきたいと思います。
まず、新潟との大きな違いはとにかく津波の被害が甚大で、多くの街や避難所
が完全に孤立してしまっていること。新潟はボランティアに行ってみてきてい
ますが自力での避難、移動がかなりの範囲で可能でそれぞれ避難所で生存確認
が可能でしたし、壊れかけた家々を訪問する事もバイクがあればそれほど難し
くはありませんでした。
しかし今回大変なのは多くの町が津波による土砂により孤立してしまい、そこ
へ行く事すらままならず、この孤立した町、各避難所へのアクセスの確保が重
要な生命線になること、これを可能な人々は見る限り自衛隊などかなり大がか
りなハードを保有する人々に限られるということでしょう。これが救助に手間
がかかる最大の関門で、人命救助のあとはまずは動脈に当たる道路、鉄道の復
旧が最優先ということになるでしょう。
既に私の仲間のいる紫波町、矢巾町などでは食料が不足しており、仮にスーパ
ーまでたどり着いても5時間待ち、といったような状況だと伝えてきています。
これから1週間が本当の勝負です。
原子力発電所については世界中が注目しているといってもいいでしょう。
果たして日本はこれだけの巨大地震で原発をハンドルできるのか、できなけれ
ばもちろん大惨事な訳ですが、きちんとハンドルできることが分かればそれこ
そソフト面での運用の世界的レベルでの教科書になるかもしれない、とアメリ
カでは報道されています。
但しそのソフト面を支える人々、日本人個人個人の努力、献身的活動があるこ
とを忘れる訳にはいきませんし、それこそが教育を含めて一番大事な要素だと
言う事になる筈ですのでこのあたりも今後海外に向けて大いに発信していくべ
きだと思います。
海外から
特にアメリカはこういう時は素早いのです。
海外からはいろいろ伝えられておりますが、そういう「日本人」、という切り
口で書かれている物も既に多数ありまして、東北の皆様を応援する意味でも少
し伝えておきたいと思います。
神戸の大震災の時に日本で編集長をやっていたニューヨークタイムズのクリス
トフ氏は
Sympathy for Japan, and Admiration
ByNICHOLAS KRISTOF
という記事を書き、
Our hearts are all with the Japanese today, after the terrible earthqu
ake there ? the worst ever recorded in Japan
と書き始めています。
この記事の主な内容は簡単に言えばあの神戸の震災の時に如何に日本人が我慢
強く、規律正しく行動したか、彼らはすごかった・・・というまさに「応援歌」
でして、クリストフはいの一番にニューヨークタイムズに書いています。今
回も日本人なら絶対に乗り越えられるはずだ、と。
そして最後はこういう結びです。とてもいい事が書いてあるのでご紹介します。
彼は本当の名文家で英語っぽいニュアンスが多いのでかなりの超訳になりま
すことをお許しを・・
I find something noble and courageous in Japan’s resilience and perseverance,
and it will be on display in the coming days. This will also
be a time when the tight knit of Japan’s social fabric, its toughness
and resilience, shine through. And my hunch is that the Japanese will,
by and large, work together ? something of a contrast to the polarization
and bickering and dog-eat-dog model of politics now on display from
Wisconsin to Washington. So maybe we can learn just a little bit from
Japan. In short, our hearts go out to Japan, and we extend our deepest
sympathy for the tragic quake. But also, our deepest admiration.
私は日本(日本人)の忍耐力や何度も困難から立ち上がる力の中にこういった
崇高かつ勇敢な気持ちが常にあることを知っているし、今回もこの力が間違い
なく発揮される筈だ。これが日本の強固な社会を織りなす紐帯とでも言うべき
もので今回もその強固さ、竹のような倒れないしなやかな回復力を示すであろう。
そして私は何となく思うのだが、この一般的な日本人の一緒にやろう・・とい
うその心こそが、現在ウィスコンシンからワシントンまで繰り広げられている
言い争いや偏見によってなされる弱肉強食モデルのような(アメリカの)やり
方と大きな一線を画すものではないかと。
そしてそれがほんの少し我々アメリカ人が彼らから学ぶべきものではないのだ
ろうか。最後になるが、我々の心はいつも日本と共にあり、悲劇的な地震に対
する最大限のお見舞いを申し上げ得ると同時に、勇敢に悲劇に立ち向かう日本
人の皆様に我々が最大の尊敬を感じているということもお伝えしておきたい。
記事全文はこちらです
http://kristof.blogs.nytimes.com/2011/03/11/sympathy-for-japan-and-admiration/?src=tptw
ここではResilienceというのがキーワードです。ただ忍耐力、回復力と訳して
しまってはいけません。上手く訳せたでしょうか。
また、アメリカ移民局は今回の地震被害で経済的に困窮する可能性もあるので、
日本人の留学生に限って学生ビザで就労しても良い、という特例を発表しま
した。こういう所はなかなかアメリカ人っぽいですね。
そして国連のパン・ギムン事務総長の発言。
Japan is one of the most generous and strongest (UN) benefactors, coming
to the assistance of those in need the world over. In that spirit,
the United Nations stands by the people of Japan and we will do anything
and everything we can at this very difficult time
日本はこれまで世界の国々が助けが必要になった時、真っ先に手を差し伸べて
きた国だ。今度は国連(そしてその参加国すべて)が日本の人々のそばに寄り
添い、手を差し伸べこの困難に全てのできるだけの事をやる番である。
ここでもいつものStand by という表現が使われていますね。
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米国債、残高ゼロ・・・ピムコ、ビル・グロス
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9・11の後NYSEがオープンした時に当時のベアスターンズの会長・Jame
s Cayne(倒産した時にマリファナを吸ってブリッジをやっていたと後で暴露
されたおっさん)は
「よし、これでまた金儲けができるぜ」
と発言して顰蹙を浴びたのを思い出しましたが、これは一応経済メルマガなの
で頑張って行きます。
まずこのニュースは先週一番話題になったのではないでしょうか。
既にブログでお見せしましたように現在アメリカ国債の購入者はすでに金融機
関によるポートフォリオ構築が終了している事もあり、何と70%を連銀が買
っていると言う状況にあります。残りは日本などの外国政府。
現在このFRBによる買い取りは6月で終了の予定で(QE2の終了)そのあ
と一体誰が買うのか・・という話がこれまでも取り沙汰されていた訳です。
その中でこういった国債・及び政府系債券の最大手の投信を運用している責任
者であるPIMCOのビル・グロスがそのファンドの一つである「トータル・
リターン・ファンド」(総資産残高2369億ドル)における国債・政府系債
券の残高を実は2月中にゼロにした、と発言して市場関係者に衝撃を与えまし
た。
元々このファンドはかなり流動性が高い・・・と言う理由で国債など現金に準
ずる債券を20%程度保有していたのですが、それでも危ないと言う理由で何
と現金に換えた、とビル・グロスは発言しているのです。理由はここに書いた
のと同じ内容ですが彼の言葉によれば「FRBによるねずみ講に付き合う気は
ない」とのこと。
流動性確保のために買っていた国債を現金(一部TB)に換えてしまうという
のですからこれは余程の判断で(なぜなら利息がその期間ゼロになり、完全に
ノーリターンファンドになってしまう)ファンドマネージャーなら相当ためら
いがある決断なのですが、今回はビル・グロスの強権発動となった点に注目す
る必要があります。
因みにこのファンド、これまではそれらの現金性資産の残高はゼロでした。解
約に備えるにしても通常は国債で十分で今回はそれ以上の資産劣化を恐れたと
いうことになるでしょう。
もしビル・グロスの予想通り長期金利が上昇するとアメリカ経済は根本的に揺
さぶられます。
ただ、国債の価格が下がるという事やそれによって住宅ローン金利など関連の
金利が上がることのほかに何といても国債市場のさらに5倍も規模のあるMB
S市場(モーゲージバックセキュリティーズ)において、金利の上昇が住宅ロ
ーン返済のスピートを遅延させ、それにより債券の残存期間が想定より長くな
ってしまうという根本的、構造的問題を抱えています。冒頭のベアスターンズ
はこれによる価格下落、その結果としての担保価値の下落に耐えきれずに資金
切れで倒産した事を忘れてはなりません。リーマンも実は同様の問題を抱えて
いました。
つまりここでアメリカ国債の金利が上昇する事は第二のベアやリーマンを引き
起こすリスクが極めて高いということです。それによるカウンターパーティー
リスクの増大は再び金融機関同士の信用収縮を呼ぶ事になります。今のアメリ
カがこれに耐えられるのか。
バーナンキの頭の中にあるのは今FRBが購入を停止しても短期金利はゼロの
まま維持できる・・・そうなれば購入停止によって長期金利が上昇すればその
金利の利ザヤを目当てに金融機関が自然発生的に国債を購入するだろう・・・
それが5%なのか6%なのかは不明ですが、必ず需要を呼び起こせる・・・日
本を見よ、金融機関が国債を買い捲っているではないか・・・ということにな
ろうかと思います。
実際これはかなりなギャンブルで日本の金融機関とアメリカの金融機関のレバ
レッジの差、自己資本の差などを考えた場合にアメリカでこれが当てはまるの
か、一概には言えないでしょう。
この時点での金利上昇を軽く見てはいけないと申し上げるのはそういう理由で
す。アメリカ国債、緊急警報、と言う所でしょうか。引き続きウォッチです。
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世界経済を点検する・・・
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先週と同じようにWSJを拾いながら大きな流れを掴みましょう。
一部私が補足致します。
主にWSJより抜粋しますが原文は割愛します。
アメリカ経済全般を見渡すと原油価格の上昇はもちろん供給不足の問題も表面
化しつつあり、欧州危機は再燃、地方政府支出削減による需要減少、住宅価格
の下落、そしてインフレ懸念などダウンサイドリスク満載ということになろう。
先週申し上げたとおり欧州の首脳が週末から財政危機回避に向けて集まってい
る。既にポルトガルのベイルアウト(事実上の倒産)が話し合われており、欧
州各国の国債は利回りが上昇中。取り敢えずギリシャに関しては金利据え置き
を決定、引き続き低利融資パッケージの提供が続く。一方アイルランドに関し
ては現在も調整中で既に低利融資は限界に達しているという報告もあり。
ロイターの報道によれば
ユーロ圏17カ国の首脳は、各国が提供する保証を拡大することに同意し、現
在2500億ユーロ程度とされるEFSFの貸出可能額をEFSF全額である
4400億ユーロに増強した。また、ギリシャ向け融資は金利を100ベーシ
スポイント(bp)引き下げて国際通貨基金(IMF)と同水準とし、融資期
間を3年から7年半に延長することも決定した・・・・
ということになります。
そして中近東関係については引き続き混乱が続き、今度はイエメンでも反政府
派の射殺事件が起き、サウジアラビアにおける「怒りの日」も徐々に勢いを増
している情勢。
原油価格については先週金曜日に先物が101ドルを超え、これで月間上昇率
は約20%となり、これはアメリカの貿易赤字増大に直結してしまった(46
3億ドル)。そしてミシガンサーベイを見ると消費動向にかなり影響を与えつ
つあることが分かる。
住宅価格については先週二つのレポートが出ている。第4四半期に約1100
万戸が所謂ネガティブエクイティーになっておりこれは住宅ローンのおよそ2
3.1%を占める。(昨年同時期は1080万戸、引き続き非常に大きく、し
かも資産価値の25%以上がネガティブになっている住宅が引き続き一番大き
な割合を占めている点が要注意)
更に住宅価格統計1月分はポストバブルの最安値を更新したと報告(2.5%
下落)。
金額ベースで見るとより悲惨な数字があり、7510億ドルの第4四半期に計
上されているネガティブエクイティーのうち4500億ドル相当部分は住宅価
値の50%以上がネガティブになっており、2000億ドルは25-50%ネ
ガティブのゾーンに相当し、事実上これが殆どであり、しかもこれらはすぐに
もでも差し押さえられるリスクがあると言える。
ネガティブエクイティーのグラフはブログにアップする予定です。
一方ポジティブなニュースは小売売上。2月の数字は安定し(1.0%上昇)、
また1月も0.3%から0.7%へ上方修正となった。更に小規模ビジネス
指数も2月は若干改善となっている点くらいか。
先ほど触れたミシガンサーベイ(消費者動向指数)は前月の77.5から2月
は68.5に下落。2010年10月以来最低の数字となってしまい、予測の
76.5を大きく下回り、一時期盛り返した消費にも暗雲が立ち込め始めてい
る事がわかる。
この数字は一般的には失業率を反映するとされますが、ここまで来ると原油価
格の上昇も影響を与えているように見えます。
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なぜ円高になるのか
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あまり書きたくない話題なのですが・・・
こういう震災のあと、神戸震災の時がそうだったのですが、経済活動が大きく
停滞する訳であまり通貨高にならないように思われます。
これがタイ、韓国など経常収支の黒字が小さい国では間違いなく通貨安になり
ます。
所が・・・日本のように経常収支がばかみたいに黒字になっている国は海外か
ら復興のために膨大な資金が戻ってくると考えられており、俗にレパトリエー
ションといって海外から円に戻す資金が大量に増えるために円高になると言わ
れます。先進国、特に日本のような超黒字国に特有の現象と言っていいと思い
ます。
妙な話ではありますが、投機マネーが世界中にあふれている現状からすると急
激な円高には要注意でしょう。(この記事はブログにも書いてあります)
個人的にはこういう投機マネーには徹底的に対抗するべきだと思っています。
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あとがき
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東北関東大震災に罹災された皆様、改めまして心よりお見舞い申し上げます。
現在は状況を静観せざるを得ませんが、何らかの形で復興にご協力すべく活動
させて頂くつもりです。
とにかく、皆様、御力を落とされずに、何より無事をお祈り申し上げます。
私は岩手県で仕事をさせて頂いている事もあり、今回は他人ごとではありませ
んでした。正直文章を書いていても心ここにあらず・・・といった状況で呆然
としているのが正直な所です。
我々として何ができるのか、よく考えていきたいと思っています。
日本人の総力を挙げてこの危機を乗りきりましょう。
読者のみなさまもくれぐれもご注意くださいませ。