G20が目指す「通貨安戦争」の回避に向けた協調体制の構築は、一筋縄ではいきそうもない。先進国は、人民元を割安に誘導する中国などの為替介入が、通貨安競争をあおっていると批判。対する新興国は、日米欧の超金融緩和であふれ出したマネーが自国に流れ込み、通貨高や国内のバブルとインフレを招いていると反論。対立の構図は深まるばかりだ。
「カレンシー・ウォー(通貨戦争)だ」
ドル安を事実上放置する米国をこう痛烈に批判してきたブラジルのマンテガ財務相が、G20を欠席する見通しとなった。
理由は諸説紛々だが、米国からのマネー流入に対抗し、外国資本への規制強化による防衛策を練るためとの見方もあり、「抗議のボイコット」(国際金融筋)と受け止められている。
実際、新興国のいらだちは頂点に達している。超金融緩和政策でじゃぶじゃぶにあふれたドルなどの資金を元手にした投機筋の買いで新興国通貨が高騰。さらに各国の株式や不動産への投機で経済が過熱し、バブルやインフレのリスクが高まっている。
米国は11月にも追加緩和に踏み切る可能性が高く、中国の周小川人民銀行総裁は「米国の量的緩和が投機筋による資本流入の激化を招いている」と、批判のボルテージを上げる。
インフレ防止のため、19日に2年10カ月ぶりに利上げに踏み切ったのも、G20で「米国元凶説」を主張し、為替介入を正当化する狙いがあるとみられる。
これに対し、先進国は為替相場の柔軟化を目指すG20合意を盾に人為的な介入による操作を批判。ガイトナー米財務長官は18日の講演で、「米国も世界のどの国も、繁栄や競争力を強化する方法として自国通貨の切り下げはできない」と強調した。
日本の野田佳彦財務相も「通貨安競争をやり合えば世界経済にとってマイナスになる」と警告する。
先進国は、自国優先の保護主義が蔓(まん)延(えん)すれば、世界経済が萎(い)縮(しゅく)。通貨安競争が世界大恐慌を一段と悪化させた1930年代の悪夢の再現になると懸念する。
ただG20ではブラジルの財務相欠席で米中の「直接対決」の色合いが濃くなるのは確実。米国は中間選挙を控える一方、中国も次期体制づくりという政治問題を抱え、「国内的に弱腰の妥協はできない」(関係筋)という事情も交渉の難航要因となる。
議長国の韓国が「通貨戦争の収拾案を講じる」(同国の中央日報)ため動いているようだが、韓国もウォン安介入を繰り返し行っており、説得力は乏しい。
新興国と同様に円高に悩まされ、橋渡し役が期待される日本も、先月に6年半ぶりに介入を実施。菅直人首相が「中国や韓国もルールに基づき行動すべきだ」と苦言を呈すと、中国側から「日本にその資格はない」と反論される始末だ。
G20による国際協調の枠組みが揺らげば、円相場が1ドル=70円台に突入するなど市場が混乱。世界経済失速のリスクが高まるのは避けられない。(田端素央、ワシントン、渡辺浩生)