第16回 日銀が動かない本当のワケ | ブー子のブログ

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損したらどうしよう、と思ったら、やめればいい。
それはやりたくないことだから。

損してもいい、と思ったら、やればいい。
それはやりたいことだから。

 前回のコラムの最後で、「円高・株安、不景気を何とかせねば!」という雰囲気の中、「日銀が追加の金融緩和・・・を検討・・・の構え」とか「為替介入・・・も辞さない」とか、やるんだかやらないんだかよくわからない状況ですね、という話をしました。

 特に日銀はとりあえず金利据え置き、量的緩和など多少の金融緩和政策は行っていますが、積極的に動いているようには見えません。このところ日銀の動きが鈍いと非難されているにもかかわらず、なぜ日銀は動かないのか、それには日銀なりの理由があります。ただボーッとしているわけではありません。

■リーマンショック前の日銀


 リーマンショック前の日本は多少景気がよくなると思っていたフシがありました。そこでインフレにならないために金利上げとこうよ、という話も出ていました。よく出口戦略という言葉を耳にしたことがあるかと思います。ただこのときから今金利を上げると景気が失速するから「量的緩和しろ」という人たちは結構いました。その声に負けて日銀は金利を上げることはできずに過ぎていきました。そうこうしているうちにリーマンショックで結局不景気のまま。

 そこで「やっぱり金利は上げられないよね・・・というより、上げるどころじゃなくなっちゃったよね、どうしよう・・・」ってことになってしまいました。以前「量的緩和しろ」と言っていた人たちは、今不景気なのは日銀が何もしなかったらだと文句を言っている状態です。まあ、何もしないというのは語弊がありますね。周りから何かやれと言われて今は渋々金融緩和政策を行っているといったところでしょうか。

■今何もしないのはやっても無駄だから


 ただ、日銀が何もしないのには理由があります。それは「やっても無駄。金融の問題ではない」と思っているからです。今日本の景気が悪いのは金融危機だからではなく、経済危機です。前回述べたように産業構造そのものの問題なので、お金を増やしても(=金融政策)景気はよくならないと日銀は思っています。

 なぜ日銀がそう思っていると言えるのか?それは白川総裁がそう言っているからです。8月10日の白川総裁の会見での発言「企業経営者とは、本来アニマルスピリットやイノベーションの精神を持っている。そうした経営者の企業努力が最大限に報われるような経済環境を作ることが政策当局にとっては最も大事」がそれを物語っています。

 翻訳すると「日本ってさ、ガチ商売やろうってヤツ少なくねえ?これじゃ景気もよくならねーっつうの!」ってことです。この発言、最後にコソっと(?)出たものなのですが、こういうところに本音が出るものですね。でも言い回しからしてもハッキリは言いたくないのがわかります。そんなことをハッキリ言ったら、日本にまだ数多く生き残っている規制産業や競争力のない企業とそれを守ろうとする既得権益者たちからすさまじい非難を浴びることでしょう。でも本音が出てしまった、そういうことだと思います。

 本音はちょっと出てしまったものの、何もしないと周りから文句も言われることから、今はチョコチョコとお金を小出しにしたり、「成長分野への重点融資」とかわけのわからない制度を作ってやり過ごそうとしているようです。ただ、この「成長分野への重点融資」は金融政策を担う日銀のやる仕事ではありません。どの産業にお金をつけるかという仕事は日本政策投資銀行ってところの仕事でしたよね。

■負債が増えるのはイヤ

 チョコチョコとお金を小出しにするくらいで、量的緩和を積極的にやりたくないのは、前述のように不景気なのは構造的問題だからどうせ効かないと思っていることに加えて、中央銀行はBSが劣化するようなことは普通したくないからです。BSの劣化というのは日銀のお金(負債になります)が増えてバランスシートが膨張することです。簡単に言えば負債が増えるのは勘弁、ということです。

■日銀様のプライド


 そして日銀が動かないもう1つの理由は「インフレ」です。最も日銀が嫌がること、それはインフレになることです。過去を振り返ると、円高になったため金利を下げ円安にしたものの、その後に金利が下がったことで過剰に資金が出回りバブルを引き起こしました。ただ、今は当時と異なり経済成長はしていません。また、金利を下げに下げてもお金が株や不動産には回る気配がないため、バブルには(資産インフレには)ならないのでは?とも思えます。

 しかし、逆に「日本は成長しないのか?」と海外から思われると国債が売られるかもしれません。そうなると、前々回のコラムで述べたように国債が売られる=金利が上がる、つまりインフレになります。そして通貨も売られ円安になります。

 このように円に信用がなくなると「お金よりモノ!」となりモノにお金が流れます。昔とは違って消極的選択ではありますが、やはり株と不動産にお金が回り資産インフレを引き起こす可能性が高くなります。

 さて、このインフレは日銀だけでなく国民にとっても昔から悪でした。インフレは物価が上がるわけですから、生活が苦しくなった実感があるためです。また、インフレは一度なったら歯止めがかからない傾向にあります。つまり退治が難しいのです。これだけでインフレが嫌がられるのはわかるでしょうが、日銀がインフレを嫌がる本質はそこではありません。インフレになると毎度毎度日銀が悪者にされます。しかもうまくインフレ退治ができなかった総裁は歴史に残るボンクラの烙印を押されてしまいます。おそらくこれからもそうでしょう。

 日銀としては、それだけは絶対に避けたい。なんたって、日銀様は貴族様なのですから。下々の者にバカにされるのが最も屈辱的なのです(否定されるかもしれませんが、大筋外してはいない・・・はずです)。

 とはいっても、実際は日銀のせいにするのはおかしな話で、政治家(=国民)がどうするかを決めて責任を取るべきなのでしょう。