4B、東京サバ女と弟
「茨城もわるくないっぺ。」祖母のヨシコはそう言うようになっていた。その頃になるとヨシコは鮫島さんというボーイフレンドを見つけていた。
「なに、お祖母ちゃん、彼氏?」二人で仲良く歩いているのを見かけたサバさんが尋ねた。
「当たり前だっぺ。」ヨシコは堂々と腕を組んでみせた。サバさんは苦笑するばかりだったが、すでに父も母も亡くしていたので祖母が元気なのが唯一の慰めでもあった。
「ターコも早くトビオさんと結婚しなさい。」祖母はそう言ってくれた。サバさんも真剣に結婚まで考えた。
「トビオと結婚?」
高校から好きだった彼と結婚して、ずっと地元で過ごすのも悪くないような気がした。サバさんはクラスでも地味なタイプで、モテるような女でもない。周りの同級生はとっくに結婚して子どもがいる人も多かった。
でもサバさんは大学に行ったので、そこで東京に出るような友達とも出会った。それで少しづつ昔の「東京に出たい。」という夢が、彼女の現実の中で比率を深めていった。
「結婚するにはまだ早い。」サバさんがそう思うようになったのは、もしかしたら両親の離婚の影響があるのかもしれない。結婚生活、家族生活というものに対してそれほどいい印象がなかったのだ。幼少の頃はそれほど不幸というほどでもなかった。ただ、弟が生まれてからは両親の愛はそちらに行ってしまった気がした。でも弟は弟で中学生の時に両親が離婚してしまい、その影響は大きかったはず。しかも彼が十代のうちに両親が他界している。どちらにしてもサバさんは、すぐに結婚しようとは思えなかった。
そして念願の東京行きを決心するのだが、それには祖母の言葉が重かった。
「そんなに東京でカフェがしたいなら、したらええ。でも、いつか戻ってきておくれ。」そう祖母に言われて、サバさんは東京で修業する決意をする。それだけでなく茨城に戻る日が来るのを「新しい設計プラン」の中に仕込んだ。もちろんそれはずっと先のこと。まずは東京でカフェをやって、さらにカッコいい東京男と結婚してからの話しだ。
あれ、トビオはどこにいった?しかしずっと先になって彼女が結婚するのは、トビオではなく大阪男のアジオだった。しかも彼女が茨城に戻ってくるときには、祖母はすでに亡くなっている。
SABA
