【ネタバレ&スチルバレ】『PSP版・薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク』プレイ記・その3【注意】 | 巴のブログ

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昨日ぶりです、こよりです。

今回もPSP版『薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク』金子×要編のプレイ記を書きたいと思います。
前回のプレイ記↓

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※今からゲームに関するネタ・スチルバレがあります。まだプレイ中、プレイ予定のある方は十分気をつけてください。


倉庫で金子とのやりとりの後。

夕飯を食べ終わった要は、蒸し暑さからかふらりと夕涼みに外へ出た。
気持ちよく吹く風を浴びていた要。
しばらくして、そろそろ中に入ろうと思っていた視界の端を、誰かが横切った。
その人影には、見覚えがあった。
―――間違いない、金子さんだ。
金子は急ぎ足で、街の方へと歩いていたのだ。
これが彼の、夜の散歩というやつなのだろうか。
要は、気付かれないようにして金子の後を追った。
が、金子は不意に足を止め、道路で圓タク(タクシー)を捕まえた。
「あ…」
このままでは見失ってしまう。
すぐに要も車を拾えばいいが、そもそもあまり持ち合わせが無い。
それに、どこまで行くかも分からないのに。
そう思う要だったが
「乗るかい?」
金子は要を真っ直ぐ見ていた。
気付かれていた!と思う矢先
「乗るならあと3つ数えるうちだ。eins、zwei…」
要はその場を駆け、車に乗り込んだ。
「―――drei。よく来たね、メートヒェン」
「……」
息を整えながら、要は金子を睨むが、彼はニッと笑うだけだった。
この車に乗るのが危険だということくらい、分かっていた。
だけど多分、乗らなければ何も分からないだろうとも分かっていた。


車が着いた先は、妖しげな会員制の倶楽部。
繁華街の奥まったところにある、瀟酒な煉瓦建てのビルディングの、その地下だった。
階段の先に、仮面をつけた怪しげな男が要を金子を出迎えた。
「これはこれは。ようこそいらっしゃいました」
金子は「いつもの部屋を頼む」と言ってから要に目をやり、「こっちは俺の連れだ」とも言った。
いつもは「僕」と言っているのに、今は「俺」?
要が少し驚いていると、金子は顎に手を当てて話続ける。
「そうだな、ついでに着替えもさせてくれ。確かエルテの絵に出てきたような衣装がなかったか?紅色の」
仮面の男は静かに「ございます」と言って、「どうぞ、こちらへ」と訳が分からない要を連れ出した。


「おや、メートヒェン、綺麗になったな」
「………………………」
要は今までに無い不機嫌な顔だった。

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ドレスを着せられ、髪を綺麗に結ばれ、化粧は言うに及ばず。
「うん、男手その色のドレスが似合うというのは、滅多にない。俺の見立てもそう悪くないな」
金子は要の心境を知ってか知らずか、上から下まで見て満足そうに頷く。
「……一体何のつもりなんですか、僕にこんな格好をさせて」
仏頂面のまま要が言うも
「別に他意はない。似合うだろうと思ったから、着せてみたかっただけだが?」
金子は飄々とそう言う。
「じゃあ、何故、僕をここに?」
「ひとりで遊びに来るのもいいが、綺麗所が一緒だとなおいい」
「……」
つくづく、馬鹿にされているのだ。まったく、しゃくに障る。
くるり、と要は踵を返した。
「帰ります」
金子は一言。
「その格好で?」

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「……」
「その踵の高い靴で、ここから下宿まで?無理無理、大体、ここが何処かも分からんのだろう?」
「……」
「しばらく相手をしてくれたら、ちゃんとまた送り届けるさ。ほら、そんな顔しないで」
座って、と金子。
「……」
―――悔しいが、金子の言う通りだ。
このままの格好では帰れないし、元着ていたものは、あの仮面の男に取られたまま。
なにより、こうして金子に付いて来たのは情報を引き出す絶好の機会だと思ったからだ。
仕方なく、要はしばらくいる事にした。
「…金子さんは、いつもこういうお店に?」
「まあ、行き着けはここだけではないがな。座敷で遊ぶこともあるし」
「優雅ですね」
「そうでもないさ。金があるってだけで。しかも自分の金じゃない」
「……」
そう言った金子は、どこか悲しげに見えた。
要には縁が無い人間だけれども、もしかしたら。
この人も、それなりになにか苦しみがあるのだろうか。
そう要が思っていると、金子はグラスを掲げた。
「何を飲む?特にないなら、俺が飲んでいるこれと同じものを頼むが」
持ち合わせがない、と言う要に
「目の保養をさせてもらったから、おごりだ」
それに、と金子は続けた。
「一緒にいる人間が飲んでないのに、俺だけ飲むのも落ち着かない」
要はうなずいた。
どうせ、自分の分を持とうとしたところで、払えるような金額じゃないのだろうことは、想像に難くない。
ここは、開き直るしかないだろう。
金子は卓の上に置いてる鈴を鳴らす。と、さっきの仮面の男が葡萄酒らしきものを持って来た。
「甘めだから、飲みなれない人でもいけると思うが」
そう言われたので一口飲んで
「…あ、美味い」
軽い酒は、確かに美味かった。
「だろう?もっと飲んでくれ」
と金子。
「メートヒェン、酒は?」
「まあ、付き合い程度には。と言っても、好んで飲むほどではないんですが」
「ほう」
「金子さん、いつも一人で飲んでいるんですか?」
「まさか。普段は適当な遊び仲間と飲むことが多い。暇をもてあましている俺のような連中は、意外といてね」
この血筋でこの容姿だ。普段はきっと華やかな取り巻きに囲まれているだろう。と要は漠然と想像した。
要はまた金子に質問した。
「どうしてこういう所に出入りしてるんですか?」
変か?と聞く金子に、要は一言「変ですね」と答えた。
「学校では一応、腺病質の優等生で通しているんでしょう?顔を使い分けるのは、疲れませんか?」
他の学生達もこんな遊びをしているのだから、別に隠す必要は無いだろうに。
その問に、金子は沈黙で返した。
少し不躾だったか?と思っていたが、金子は「自分でもどうしてなのかと、考えてみた」と言った。
それに要は笑いながら
「今まで考えたことがなかった?」
と聞いた。
金子はそれに
「なかったな。そもそも、俺にそういう質問をする人間がいなかった。物言いたげにする奴は一人いるが、無口な奴だし」
そう言ってグラスのワインを飲み干すと、また鈴を振った。
酒のおかわりを注文して、仮面の男が去っていくと、金子はまた要の方を向いた。
「俺もメートヒェンに聞きたいんだが」
「はい?」
「君は、うちの試験を受けていたんだろう?見たところ頭も良いようなのに、どうして学生じゃない?」
要は「…色々とありまして」と言葉を濁した。
学資?と金子が聞いてくるので、そんなところです。とだけ返した。
あまりこの話はしたくなかったが、いつもと違う雰囲気の中だからだろうか。
メートヒェン呼ばわりも慣れてきたみたいで、あまり気にもならない。
その上
―――思っていたより、悪い人じゃないのかも。
そう思え始めていた。
その時、金子がぼそりと言った。
「ふうん。メートヒェンの彼は、学資までは手伝ってはくれないのか?」
彼?と聞く要に、金子は
「いるんだろう?彼が。それともあれは、学生の誰か?」
どういう意味だ。
そう言いかけて立ち上がろうとしたが、足にうまく力が入らず、たたらを踏んでしまった。
―――目が回る。体が芯から熱い。
視界に移る金子の顔が、歪んだ。
どうした?と金子が聞いてくる。
疲れていたから良いが回ったのだろうか?
しかし、全く飲んでいない。あれだけでこんなに酔うのだろうか?
目眩がひどくなってきた時、金子が支えてくれた。
「少し横になって」
要はされるがまま、長椅子に横になる。歪んだ視界の中の金子が、目を細めた。
ふいに、金子は要の髪飾りを外した。
散らばった髪が、柔らかな織り地の上に広がった。
「気分は?」
「……」
体が気だるく重く、寒気がする。身動きが取れない。
一言で言うと、最悪だった。
「着せたばかりの服を脱がすというのも、悪くないな」
「いったい、なにを…?」
かろうじて出た言葉に、金子は「本気で聞いてるのか?」と言った。
「分からないほど初心ではないだろうに」
頭がぼうっとして、金子を押し返す手にも力が入らない。気分が悪くてたまらず、金子の声が遠くで聞こえる。
「乗り換えてみる気はないか?」

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金子が耳たぶに噛み付くように言う。
「こう見えても、君のことは結構気に入ってる。君さえその気なら、学資ぐらい融資してやれる。―――ただし、俺の物になるのなら、だが」
「…っ!」
「どうだ?考えてみないか?」
要は鈍く重くなっている頭を必死に巡らせて、考えた。
―――この物言い。
彼は、『花喰ヒ鳥』ではないのか?
「ぼ…く、は、そんな―――」
「嫌だと言われても、物にするつもりだけどね。まずは、従順になることを覚えてもらおうか」
唇の間近で囁かれ、息を詰める。
「可愛いよ、メートヒェン。ただ、どこまでが素の反応なのか分からないのが惜しいね」

コンコン

その時、部屋をノックする音が聞こえた。
どうやら、頼んでおいたワインを持って来たみたいだった。
仮面の男が一人、部屋に入ってくる。
「ワインをお持ちしました」
要はとっさに顔を背けた。
そこに置いてくれ、と金子は要の首筋に顔を埋めたまま言った。
「―――っ!!」
仮面の男はそのまま、動揺する気配もなく、部屋を出て行った。
ぐらぐらする頭の中で「なんて店なんだ、ここは」と思っている最中も、体の中から熱がわき出ている。
覆い被さるか猫を押しのけようと手を上げたが、まるで力が入らない。
息が荒くなる。
「…ほら、言ってご覧。欲しいと」
要はその時、直感した。
―――違う…っ!
彼は『花喰ヒ鳥』じゃない。煙草の香りが違う。
―――この人は、『花喰ヒ鳥』じゃない!!
「離せっ!」
要は苦しい息の中、吐き出した。
『花喰ヒ鳥』じゃないと分かっただけでも、今は十分だ。
これ以上、いいようにされる気はなかった。
しかし、金子の手は性懲りもなく、ドレスの留め金に触れてくる。
身体は重く、思うとおりに動かない。
なら、この危機を脱するには、頭を使うしかない。
―――何かないだろうか。
この男を、身動きできなくするなにか。
いい手は。
「…貴方の、父上…。貴族院、の…金子輝伸子爵…ですね」
要の言葉に、金子は「それがなにか?」と答える。
「さすがに…これがばれると、まずいのでは?」
しかし金子は、なんだそんなことかと肩をすくめた。
「あいにく、多少の遊びなら見逃してもらえると思うがね」
息を整えながら、要は必死に計算していた。
「…そんな立場の方なら、政敵の、ひとりやふたり、いらっしゃるでしょう?」
「……」
「お父上に漏れて平気でも、そちらでは?新聞社でもいい。…きっと貴方、好き勝手出来なくなる」
弱みを見せてはならない。
出来るだけ平気な顔をしなければ。
「それでも、構わないんですか?」
金子の目を睨み付けると、金子は薄く笑った。
「君もただでは済まないと思うが?」
このまま好き勝手にされるくらいなら、いっそ共倒れする方がマシだ。
「覚悟の、上です」
「……」
「・・・……」
しばらくのにらみ合いの末、金子は肩をすくめた。
「分かったよ、メートヒェン」
僕の負けだ。
金子は要から離れると、意外なほど素っ気ない態度で立ち上がった。
テーブルにある鈴を鳴らすと、すぐに仮面の男が現れた。
「この人に、さっきの服を」


帰りの車の中、要は出来るだけ金子から離れるようにして、扉にもたれかかっていた。
―――どうやって着替えたのかも、覚えていない。
悪寒は未だ止まらず、要の神経と身体を苛んでいる。
「どうしたんだい?」
にやにやと笑いながら「息が荒いね」と言う金子に、言い返す元気もなくて、それでも、瞳に力を込めて睨み返した。
「おお、怖い怖い。―――そろそろ着くようだよ」
いつの間にか、車は要の下宿のすぐ側まで来ていた。
見慣れた光景にほっとする。
車が止まったと同時に扉を開けて飛び降りた要の手を、金子が掴んだ。

「お休み、メートヒェン」
良い夢を。

扉を閉める間際、金子の指先が、要の唇をすっとなぞった。


続く。


このゲームをした後、銀魂の近藤さんを見ると笑えてきます。バナナ入刀の時は「これはひどい」とぽつりと漏らした程です。

声優さんって、本当に凄いなあと思います。