【人間というものは、心のなかに絶えずいつわらなくてはならぬ考えが一つでもできると、堕落してしまう】
コンスタン
「アドルフ」
自分は弱いと自覚する人に。苦悩に満ちた恋に焦がれている人に。読んでほしい一冊。
お金持ちの娼婦をしていた、聡明で美人な年上女性に言い寄って彼女の愛を勝ち得た若い男の話です。激しく求愛し、ついに女の身も心も自分のものとした男は、幸せな時間を過ごします。しかし、それもつかの間。だんだん、彼女の献身的な愛を「束縛」と感じた男は冷淡な態度を取り始め、二人の心は次第に離れていきます。
結末は森鴎外の舞姫と同じ。
男と女の苦悩、愛憎、恋慕、友情、そして人間誰しもがかかえる弱さを、見事なまでに描き出します。恋の駆け引きに現れる主人公の未熟さに、ときに反発を覚え、ときに自分を見ているようでどきっとし…すこし長いのですが、知らず知らずのうちに引き込まれていつのまにか読み終わってしまうストーリーです。
これが、1816年に書かれた小説だというから驚き。解説では、「フランスの心理小説史上不滅の傑作」と評価される一冊です。