焼き鳥屋に飲みにいった。
先輩に連れられての初めて行く店だった。
中心市街地からは外れた場所にあるのだが、
酒好きの焼き鳥好きの私は心のスキップを踏んで行った。
しかし、ニコニコして着いたその店の佇まいにいきなり衝撃を受けた。
(き、きたねぇ)
かろうじて口に出さずにすんだが、その店はだいぶパンチの効いた店構えをしていた。
いきなりの先制パンチを食らったが、先輩に続いて店内へ。
外観とは違い、カウンターにはスラッとした美しいお姉さまが……
いるわけは当然なく、人生に疲れ切った感のあるおばあさんが一人いるだけだった。
私ら一行はカウンター向かいの小上がりに座った。
改めて店内を見回してみるとなんかごちゃごちゃしていて普通の家みたい。
そしてそれを決定的にするものを発見してしまった。
孫が書いたであろうおばあさんの似顔絵が無数のカレンダーと共に壁に貼ってあった。
実際には似顔絵とはとても呼べないピカソも泣いて謝るほどの抽象画であった。
絵の横に「おばあちゃん」と書いてあったのでギリギリわかった。
我慢出来ずに先輩に「あれ、なんか絵貼ってありますけど」と聞いたら、
先輩は一言「おう、気にすんな」とだけ言って人数分の生ビールを注文した。
さすが常連だ。慣れてらっしゃる。
まあ、飲んで食えれば環境はどうでもいい!
と、気を取り直してカウンター内の壁にあるメニュー板を見ると……。
見えないっス。
木に書いた墨文字が消えかかっていた。
そばに寄り、目を凝らして見た私にまたもや衝撃が襲った。
目撃したメニュー板はこう書かれていた。
白モツ 五本 二〇〇円
なん骨 五本 三〇〇円
レバー 五本 二五〇円
ハ ツ 五本 二五〇円 etc‥
おばあさん正気ですか?ここは昭和なの?
この店には物価上昇とか消費税とかの概念がないようだ。
一般的な焼き鳥に比べれば量が少ないが、なんてったってそこは5本で250円。
味もそこそこうまい。充分納得できるレベル。
儲けは出ているの?と心配になってくるが、
店の佇まいを見るとこれで長年やってこれたのだろう。
そんなこんなで各人ほろ酔いのいい気分で店を出た。
そこで先輩に気になっていたことを聞いてみた。
それは私らチームが注文したものが出来る度にカウンター内のおばあさんから、
カウンターに座っていたおじいさんと呼ぶにふさわしい年配の人を介しての
バケツリレー方式で私たちに渡るのだった。
その度に「あっ、すいません」とか「ありがとうございます」とか気を使った。
「あのカウンターの人、だいぶ使われてたけど常連さんですかね?」
すると先輩「いや、あの人は店の大将だよ」
ズコー!
聞くところによると、毎日カウンターに座って晩酌しているそうな。
気を使ってしまった事に文句はないが、もうちょっとちゃんと働こうよ!
そんなんで店は大丈夫なのかよ!
と思ってしまうが、再び店の佇まいを見るとこれで長年やってこれたのだろう。
そんな感じで衝撃度120%のこの焼き鳥屋。
ふと振り返ると赤いちょうちんの明かりがいつまでもいつまでも優しく揺れていた。
なんつて。

