社会のとある視点 -7ページ目




小保方晴子さんの上司でSTAP細胞論文の責任著者である、理化学研究所(理研)の笹井芳樹さんが4月16日15時から都内で会見を開いた。

STAP細胞論文で画像の取り違えなどがあったことについて、理研の調査委員会は4月1日に「小保方さんによる捏造・改ざん」を認定した。一方、小保方さんは9日の記者会見で「未熟さによるミス」と悪意がなかったことを強調する。理研の発生・再生科学総合研究センターの副センター長で、STAP細胞論文のキーマンである笹井氏がどのような発言をするのか注目が集まっている。

理研のコンプライアンス担当の理事の米倉実氏のあいさつの後、笹井氏が説明。

「このたびはSTAP細胞の論文について大変多くの混乱と、多くのご心配、疑惑を招く事態となりましたことを心からお詫び申し上げます。またSTAP研究にたずさわる多くの人の信頼を損ねたことを心よりお詫び申し上げます」

Nature誌の記事について不正が認定されたことは心痛の極みであります。本文の不備や不正認定におきまして、日本の科学全体に関する信頼を損ねかねない事態になっておりますことも、国際コミュニティの皆様に心よりお詫び申し上げます。

私のNature論文に対する役割などについて説明させていただきたく思います。これまで具体的にお答えできず大変申し訳ありませんでした。順次説明いたします。まず論文作成における私の役割を説明します。通常の論文では一つの研究室の中で作成されますが、今回は複雑な構成でした。まず第一段階ではハーバード大学と若山研で行われました。

私が参加したのは第4段階の論文の書き上げの段階です。小保方さんと若山さんにより2012年春に一度、Nature誌に投稿されていました。それが却下された後の書き直しの段階で参加しました。

具体的には小保方さんをユニットリーダーに選考する面接の際に、それまでに小保方さんと若山さんがまとめた論文について、内容の重大さに比して原稿が十分でなかった。そこで、Nature論文への投稿が多い私が面倒を見るように依頼を受けました。科学的な価値の大変高い物をお見受けして協力することになりました。

若山さんは山梨大学への移転で忙殺されていたため、若山さんの分も含めて協力しました。STAP細胞の論文の改定作業を2013年4月の上旬から小保方ユニットリーダーの元で行われましたが、その際にも協力しました。論文投稿への3年間の過程で、最後の2カ月強だけ参加しました。最終段階で協力したわけです。当初は著者として加わらず協力指導だけしていましたが、しかしバカンティ教授の要請で著者として加わることになりました。改訂論文の投稿直前に若山さんから、責任著者として加わって欲しいという依頼があったので、私もそのように名を連ねることになりました。

なぜ不正過誤を見抜けなかったのかということですが、こうしたことは決してあってはならないことです。私が複数の問題を見抜けなかったことは慚愧の念に耐えません。私は最終段階で参加したため、多くのデータはすでに図表になっていました。

そのため、残念ながら私は研究の生データやノートを見る機会はありませんでした。また小保方さんは直属の部下ではないため、学生などに言うように「実験ノートを見せなさい」と言うことはなかったです。私は自分の参加後に追加された実験(ライブ・セル・イメージ)についてはつぶさに見ています。

今回は複数のシニアが入る特殊な論文のケースでした。第三段階までの面倒を見た若山さんは別の人間だったし、バカンティ教授も外国にいるため、二重三重のチェック機構を果たせなかった原因だと反省しています。文章書き上げに協力した私は、文章全体を俯瞰する立場だったのに十分でなかったことを反省しています。

また、若手の人間をユニットリーダーに選んだことは問題ではなかったのか?という点です。小保方さんのリーダー採用の審査の中では、大胆な独創性にとんだ若手を取り上げることにしており、その点では珍しいことではありませんでした。小保方さんの場合には経験が十分でなかったので、まず最初は一番小さな単位である「研究ユニット」のリーダーになってもらいました。

複数の過誤や不備が明らかになった以上、再現検証できないため、論文を撤回することが最も重要であると思っております。

1月のプレスリリースの際に、飽くまで基礎的なマウスの研究段階での発表であり、実用性を目指したものでないことを強調しました。補足資料の説明では、京都大学iPS細胞研究所の皆様と山中教授にご迷惑をおかけしました。資料の撤回をしたところであります。

この補足資料ではiPS細胞とSTAP細胞では後者の方が効率が良いように書いてありましたが、実際にはそんなことはなく、京都大学iPS細胞研究所と理研は協力関係にあり、今後もそのように進めていきたいと思っております。

私の考えは4月1日に発表したときと変わりません。STAP現象を前提にしないと容易に説明できないデータがあるが、論文全体の信頼性が過誤や不備により大きく損ねられた以上、STAP現象の真偽の判断には理研内外の予断のない再現検証が必要。

STAP現象を前提にしないと容易に説明できないデータの例を挙げます。一つは「ライブ・セル・イメージ」です。10以上の視野を同時に観察できる顕微鏡ムービーであり、人為的なデータ操作は事実上不可能です。

また、STAP細胞にはES細胞とは異なる特徴があります。キメラマウス実験の結果を見ても、STAP現象は現在最も有力な仮説と考えています。


質疑応答開始。

Q 「実際に実験を見れば良かったのでは?」

A 「見てディスカッションできれば、より深い指導ができたと思います。ただ若山氏のチェックが済んでいたので、それを飛び越すことは難しかった。ただ、生データを見る、ノートを共有すべきだったのかを改めて考えている」

Q 「ノート内容が他人が見てもわからないようになっていたということについては」

A 「ノートの書き方は千差万別です」

Q 「実験ノートが4?5冊しかなかったことはどう思うか?」

A 「私の研究室では少なかったと思うが、PCで記録を取っていればアナログのノートの記録は減る。実際の冊数は関係ない」

Q 「ノートは見たのか?」

A 「検証の中で、ノートの一部を見せてもらった。その中には非常に詳細な部分もあったしメモ的な部分もありました」

Q 「笹井さんはSTAP細胞は存在していると思いますか?」

A 「STAP現象については、もしも存在しないと思っていたら共著者には加わらなかった。しかし、それは論文の材料がきちんと組み上がっていたときに確信を持つのであって、今はそのくみ上げ細工にヒビが入ってしまった。有望ではあるが、仮説に戻して検証しなおす必要があると思ってます。これを、信じる信じないということで論じるべきでないという科学者としての立場です」

Q 「存在を疑う指摘はどう思うのか?」

A 「一つ一つ真摯に考えて、反証仮説になるかを考えていきたい」

Q 「繰り返しになりますが、STAP細胞はあるという考えでしょうか?」

A 「科学は宗教ではないので、確度が高い場合であれば「確度が高い」という論文であればコミュニティの皆さんと同様にしっかりと考えていく必要があります。それが科学者としての信条です」

Q 「実際にSTAP細胞を作成したことは」

A 「私自身はないですが、実験室で生成される過程をライブイメージで見ていることはあります」

Q 「不正認定された後も他のデータを信用される理由は?」

A 「ライブ・セル・イメージは複数人が関わる上、自動で撮影されるため人為的な操作をすることは無理です。また撮った写真については一コマ一コマに、時間などのプロパティが入ってますので改ざんすればすぐ分かる。だからこそ確度の高いデータだと言えます。その他のキメラマウスについても若山さんが検証していますので、不正認定された以外のデータで信用されるものはあるという考えです」

Q 「笹井さんがSTAP細胞を有力な仮説だと信じる証拠は何か?」

A 「STAP細胞に関する反証仮説をどれを考えても、どこかでつじつまが合わなくなってしまう。これが仮にES細胞だったとしたら、すぐに分かるだけの解析技術がある。STAP細胞として僕らが呼んだ理由としては、これまで知られてないことは確かです」

Q 「小保方さん一人の不正とする理研と、小保方さんはミスと会見で主張。どう思いますか?」

A 「小保方さんの会見を見て非常に心を痛めました。一番の原因はこの論文に不備・過誤があったことであり、その責任を痛感しました。彼女の発言自体は普段、私が聞いた内容と差がなかったので率直に話したのでしょう。不服申し立てをした件ですが、故意かどうかは私には分かることではないので、委員会の再調査を待たなければいけないと思っております。理研と小保方さんの対立ではなく、小保方さんは理研で仕事を続けたいということで、調査委員会の調査に対する不服であろうと思っています」

Q 「不正なのかミスなのかという点はどう思うか?」

A 「事実の取り違えをしたという点では同じ。それをどう捉えるかについてコメントすべきではないと思っています」

Q 「小保方さんにこの件について話したいことは」

A 「こうしたことを避けられなかった自分の至らなさをわびたいと思います」

Q 「小保方さんが会見で言ったように200回以上、STAP細胞を成功したという話も聞いていたのでしょうか?」

A 「何をもって成功とするかが問題だと思いました。キメラを200回やったわけではないと思います」

Q 「では、何をもって成功といえるのか?」

A 「キメラの作成が一番難しいところです。小保方さんはキメラ以外にもいろいろやっているので、それ以外の段階でも成功とみなしたのだと思います」

Q 「ライブ・セル・イメージなどのSTAP細胞の成功と確実にみなせる現場には笹井さんは立ち会っていないのか?」

A 「当事者以外の共同研究者がつきっきりで見るのは難しい。私が見ていたのはライブ・セル・イメージをほぼリアルタイムで見ていただけです」

Q 「最終段階でのどれくらいの書き直しをされたんでしょうか?」

A 「2012年の春に若山さんと小保方さんが出したときの論文は、当時の副センター長が読まれて何が必要なのかのアドバイスをしました。それは私は見ていません。その後のユニットリーダー面接を受けたあとに、ご自身で直されたバージョンを見ました。図表単位ではきちんと完結していましたが、論旨のジャンプありましたので、それぞれの段落ごとにどんなロジックをやるべきなのかを小保方さんの横に座って、ディスカッションしながら直していきました」

Q 「STAP現象について共同著者の間でも異論はないけど、STAP細胞が万能性を示すところで疑義が生じているように見えます。STAP細胞が幹細胞になって多能性を持つところの信頼性が揺らいでるように思うのですが、そこを笹井さんが追加したということでしょうか?」

A 「いえ、そうではありません」

Q 「でもそうなると矛盾点が出てくるのでは?」

A 「まずレターとしての論文については不正は認められていません。STEM CELLの部分については問題の画像は関係していません」

Q 「STAP細胞があったかどうかが問題なのでは?」

A 「STAP細胞とは、筋肉なりリンパ球なりに特定の部位になるはずだったの細胞が他の細胞になり得るということ。STAP細胞ができるということと、STAP現象は同義です」

Q 「小保方さんにしかSTAP細胞が作れないという言い方は、これまでの論文捏造のケースと同じように思うんですが、なぜ誰でも再現できるような論文になっていないのでしょうか」

A 「一番最後の論点についてですが、私どももSTAP細胞については2012年バージョンではなく2014年バージョンの実験データが必要だと思っていました。ただ、今回の論文についてはアクセプトから発表されるまで極めて早かった。より詳細な物を再発表する準備をしていたら、今回のようなケースになってしまった」

Q 「若山さんが提出したマウスと小保方さんが実験したマウスが別物だったという話については?」

A 「若山研究所の内部の話なので、私自身はそれについてはコメントできません」

Q 「博士論文からの流用の点で一つ聞きます。画像の取り違えがあった、とだけ説明して、博士論文からの転用を隠したのではという指摘もありますが?」

A 「博士論文ですと、大学に提出したものは非公開の論文だと考えられます。それを学術誌に掲載することは特に問題ないと考えられます」

Q 「笹井さんはSTAP細胞論文の作成に関して、iPS細胞を発見した山中氏への対抗意識はあったのか?」

A 「そうしたことはありません。山中先生と僕は強い信頼関係を持っているし、山中先生は僕が京都大学を辞めた後に受け継いだ方で、非常に素晴らしい方が継いだと喜んでいました。こうしたことから、iPS細胞の有用度の高さは非常に強く感じていました。iPSは100歳の高齢者の方からも作れますが、STAPは今のところマウスだけで全然違う。iPSとSTAPは原理が違うので、STAPはiPSとは違う使い方できるということを強調したかった。ただ、補足資料では間違った比較数値が入っていたので、2月に謝罪しに行ったということであります」

Q 「論文を撤回すると間違いと認めるようになるという小保方さんの主張はどう思うか?」

A 「そういう考え方があるのは理解できます。撤回すると白紙に戻すのではなく、『ありえない』という風に思われるということになるという認識。バカンティ氏も同様の考えだと思います。そういう考え方があるのは理解できますが、ただしこの論文のインパクトを考えると、科学の新しい扉を開かれるので、私達としては撤回しても再出発することも重要だと考えています」

Q 「笹井さんの責任について伺います。今回の事態を引き起こした責任は?」

A 「今回の混乱の多くを招いたことは、副センター長として感じております。広報の発信の仕方にしても、私達がいただいてる納税者からのアカウンタビリティを発揮したいと思ってました。小保方晴子ユニットリーダーのメディアへの露出も最初の会見が終わって以降は、配慮したつもりでしたが、そうしたことを超えた形でマスコミ報道が過熱してしまった」

Q 「笹井さんが会見したのはあまり遅すぎるのでは?」

A 「私自身は早く出て、混乱を起こしたこと等に対してお詫びしたいつもりは強くありました。しかし、調査委員会が動いていて、深い形で進んでいったために4月1日までそのことが許されなかった」

Q 「小保方さんの科学者の資質については」

A 「非常に豊かな発想力があると感じています。それは採用時の人事委員会の皆の一致するところであります。ただ、トレーニングが足りなかったところ。未熟という言葉を使いたくないのですが、科学者として身につけるべきだったのに身についてなかった部分は、今回の発表後に明らかになりました。データ管理における取り違えを生み出したりするなど、ある種のずさんさがあったと思います。その両極端が一人の人間の中にあるのかなと。シニアの研究者として私が後悔するのは、Natureの論文を2回も出すということはなかなかできることではない。しかし彼女の弱い部分を、もっとしっかりと認識して、背伸びをするだけでなく足下をきちんと固めることができなかったことを、非常につらく思っております」

Q 「STAP細胞の検証に小保方さんは参加しないのか?小保方さんが再現実験をするべきとする理由は?」

A 「STAP細胞の白黒はきちんとした検証が必要だと思っています。検証する上で、説得力を持つためには小保方さん以外がやるべきだと思います。それとは別に小保方さん自身が再現実験をしたいという意向を会見でおっしゃっていたので、それは積極的に進めていいかと思います」

Q 「小保方さんが理研を辞めてしまって海外に技術が流出してしまう懸念はないのか?」

A 「もしも研究に対して疑念があった場合、再現できないときに不正があったと認定することが多い。今回のケースでは、非常に複雑だけど、小保方さんに対して再現させないと言ったことはないです」

Q 「未熟だったという話があったが、STAP細胞のあるかないかという部分のマナーについてどう思うか?」

A 「研究不正のあるなしについてマナーと言っていいかは分かりません。研究におけるマナーが重要だということは、理研が説明責任があることは認識していて、丹羽らによる検証チームが進めています」

Q 「なぜ今日は会見でつけない理研のバッジを身につけて会見に臨んだのでしょうか?」

A 「今日は混乱の責任を取ってお詫びをしたいという意味で会見をしたいと思いました。一人の個人としてではなく、理研の一員としての立場を明らかにしたいという意味です。普段の実験ではバッジはつけておりません」

Q 「笹井さんは小保方さんを面接する際の責任者の一人だったと聞いてるが、人事権が一番重い方は」

A 「その当時、私は副センター長ではなく研究リーダーの一人として人事委員会に入っていた。そこでは多数決ではなく全員一致で決める通例になっています」

Q 「笹井さんの胸先三寸で小保方さんの採用を決められるわけではないと?」

A 「そういうことです」

Q 「理研と山中先生の間に対抗意識は?」

A 「山中先生の仕事はリスペクトしてますが、iPS研究をやる上においてES細胞の研究も同時に進めるべきだという考えで、STAP細胞についてもそのように言ってました。対抗意識というのはありませんが、理研はより基礎研究を行っていて、山中先生は応用のための研究をしている。むしろ一緒にいろいろアプライしていく関係だと思います」

Q 「小保方さんに論文の撤回を呼びかけたり、バカンティ氏に対する考えは?」

A 「撤回を勧めたかという点ですが、私と丹羽さんは彼女にそのような考えを伝えました。撤回の可能性も含めてバカンティさんらと話す中で、彼らの意見も聞いて今の考えをお持ちなんだと思います。呼びかけについては、バカンティさんの親心なのかとは思いますが、小保方さんがどういう道を進むかはご自身で考えることだと思います。応援をしたい気持ちではあります」

Q 「小保方さんの横に座って論文の修正をしたということだが、二人きりでやったのか?」

A 「マルチ画面の大きなモニターの前に座って、文章と画像を同時に作るのでサイドバイサイドの位置関係になるということです。もちろんディスカッションをするときにがやがやしている場所でやることはないです。非常に緊張感高く1ページずつやっていったと」

Q 「不適切な関係はあったという報道もあったが」

A 「そのような関係はありません」

笹井氏の記者会見が3時間20分と、予定を大幅にオーバーして終了。

(引用:Huffington Post)